この記事はマイクロソフトのブログ記事で発表された内容である。
マイクロソフトは2017年7月、Microsoft AI and Researchのエグゼクティブ バイスプレジデント、ハリー・シャム(Harry Shum)氏をはじめ、同社AI関連の責任者を対象としたイベントを開催した。同イベントでは、AI研究およびインキュベーションのハブとなる「Microsoft Research AI」の新設と、AIを活用して地球環境問題の解決を図る「AI for Earth」プログラムの開始など、AIに関連する様々な内容が発表された。
Microsoft Research AI
同イベントでは、AIの最も困難な課題の解決にフォーカスした研究組織内のリサーチとインキュベーションのハブである「Microsoft Research AI」が初公表された。科学者とエンジニアのチームがマイクロソフトの研究所や製品グループの同僚と緊密に連携することが目的だ。
また、もうひとつの主要な目的は、機械学習、認知、自然言語処理など、長期的に個別の研究分野として発展してきたAIの研究分野を再結合することだ。この統合型アプローチにより、高度な理解を行い、複雑で多面的な作業で人々を支援できるツールの開発が可能になるという。
たとえば、マシンリーディングは医師が数千もの文書から重要な情報を発見できるよう支援し、人命救助に貢献できる可能性がある高付加価値の作業に時間を割り当てられるようにするなど、驚異的な潜在力を持った分野だ。まさにその実現には、自然言語処理や深層学習などの複数の AI の研究分野の組み合わせが必要となるという。
AI for Earth
AI for Earthは、水資源、農業、生物学的多様性、気候変動に関連した重要課題の解決をAIの力を活用することを目的としたプログラムだ。
同プログラムにおいてマイクロソフトは、クラウドと AI 関連のコンピューティングリソース、テクノロジトレーニング、先駆的プロジェクトへのアクセスを提供し、2018年度に200万ドルを投資する。そして、この取り組みを推進するため、Microsoft Research において計算生態学の主任研究員を長きにわたり務めてきたルーカス ジョッパ (Lucas Joppa) 氏を主任環境サイエンティストに任命した。
物理的な世界や自然界における変化の規模とスピードは新たなソリューションを求めているものの、最新の革新的テクノロジは高額であり、コンピュータに関する専門知識も要求されることから、多くの研究者や非政府組織にとって手の届かないものだと、マイクロソフトのプレジデント兼最高法務責任者、ブラッド スミス (Brad Smith) 氏はいう。AIがこれらの重要なグループによりアクセスしやすくするために、AI for Earthでは以下の 3 つの柱に基づいたプログラムが設計されているという。
- アクセス:
研究者や組織によるクラウドと AI コンピューティングリソースへのアクセスを支援する補助金の新たな出資制度を設ける。これには、Azure の計算時間へのアクセスと Azure 上のデータサイエンス向けバーチャルマシンサービスへのアクセスが含まれる。補助金の申請は7月12日より開始されている。 - 教育:
どのような AI ツールが利用可能か、それらのツールをどのように使えるか、特定のニーズにどのように対応できるかを人々や組織が理解するための新しい研修と教育の機会を提供する。より多くの人々にリーチするための一般の研修セッションから、特定分野における小規模な学術者会議や奨学生に対する研修の提供まで網羅する。 - イノベーション:
AI の能力と潜在性に基づいたイノベーションを行えるよう他者を支援したいという同社のコンセプトのもと、正確な環境保護活動を支援するための土地被覆マッピングや、センサー、ドローン、データ、ブロードバンドネットワークによるスマートアグリカルチャーの実現、リモート追跡と種の健康の監視を目的とした同社のスマート蚊取り装置の有効性のテストなどのプロジェクトが進行中だ。
【関連リンク】
・マイクロソフト(Microsoft)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。