台北で開催されているCOMPUTEX TAIPEI2019。昨年までは、2箇所で開催されていたのだが、ほとんどの展示が南港にあるコンベンションセンターに集約され、カンファレンスやスタートアップの展示は、ホテルやTaipei World Trade Centerで行われている。
全体の規模としては縮小傾向にあるといえ、PC業界のコモディティからの脱却に苦戦する様子が見られた。
各メーカーから工夫を凝らしたPCが展示され、私のようなガジェッターや、ゲーマーには興味深い商品が登場する一方で、カテゴリーキラーとなり世界を席巻するような印象のモノを見かけることはできなかった。

しかし、コモディティ化が進むPC業界でも、IoTが世界中で話題になって以来、様々なデバイスへのコンピュータ部品の供給が始まっていて、どういうデバイスが今後広まっていくのかを伺うような状況が続いているとも言えるのだ。
性能をアピールするメーカー
台湾はもともとPCの部品を製造していたエリアで、PCの発展とともにCOMPUTEXも発展してきた。
その中でもNVIDIAのようなモンスターGPUメーカーが登場し、ASUSやAcerといった完成品PCメーカーも多数登場してきたわけだが、依然としてPC周りの部品を製造している企業も多い。
単純にCPUの性能を表すクロック数で語られていた時代は終わり、この後公開する吉田氏のレポートにもあるように現在のPCの性能を表す指標は複雑になっている。
PCに求められるスペックがコモディティとなる中、昨年のレポートでは法人向けのIPCの展示が増えてきていることについて報じた。

今年は、この流れがさらに加速し、MSIやGIGABYTEはじめとするコンシューマ向けPC部品メーカーも法人向けIPCの展示ブースを大きくとるようになった。

しかし、IPCの性能は表面的に見てもなかなか理解できるものではないため、多くの展示では画像認識など一般的に処理が思いとされているAI処理を展示し、その性能をアピールしていた。

リテールの無人化に向かう世界

「COMPUTEXで展示が増えるということは、世界的にそのデバイスの発注が増えている証拠だ。」
世界中から発注が入る台湾。COMPUTEXでの展示が増えることで世相がわかるというのだが、2018年1年を通してIoTNEWSでも多く注目度が高かった、「無人店舗」や「電子決済」、「人物認識によるサービス性の向上」といったテーマ。今回のCOMPUTEXではこれらのリテール関連の最新デバイスがかなり多く展示されていたことが、一つの特徴だと言える。
実際、これらのデバイスは、すでに様々なところで実験的に導入されているわけだが、今後世界中で導入が進む可能性を示唆している。

具体的には、「店舗に入ると、キオスク端末が配置されていて、そこで注文と決済を済ませる。」多くのフランチャイズチェーンでこのスタイルが導入されていくのかもしれない。
なりを潜めた、スマートホームとウエアラブルウォッチ
一方で、2年前から大きなエリアを占めていた、スマートホーム系のブースは、今年かなり規模が縮小していて展示も少ないと感じた。
後付けデバイスだけで、これまでの生活を一新することはかなり難しいということを以前から述べているが、この分野はガジェットだけでどうにかするということではなく、「家そのものをどうしていくのか」という発想をゼロベースで持つ必要がありそうだ。

ウエアラブルウォッチの類似品もかなり展示が減っていて、メーカーや用途を意識しない、単なる「小型スマートフォン」では、市場が取れなかったのではないだろうか。
CESやIFAなどの家電ショーではいまだにウェアラブルウォッチの展示も多いのだが、FitbitやApple Watchなど一部の売れているデバイスを除いて、この傾向もこの秋以降ひと段落するのかもしれない。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。