8月8日、デジタルハリウッド大学大学院駿河台キャンパスで、「WoT がつくる未来」アイデアソンが開催された。
デジタルコンテンツ制作の学校を展開するデジタルハリウッドもIoTに注目しており、もともとWebデザイナーをメインに育てていることから、 IoTの領域の中でも「Web」に着目。
秋から、Firefoxを開発・提供しているMozilla Japanの寄付講座として、WoT (Web of Things)という考え方をテーマにした講座を開講すると発表した。(対象者はデジタルハリウッド大学院在籍者)
WoT とは、HTMLやCSS、JavaScriptといったWebの標準技術を活用して、モノとインターネットをつなげようという考え方だという。 今回は、 Mozilla Japan と有志のコミュニティのもとで開発中のWebベースで開発可能な小型ボードコンピュータ “CHIRIMEN” を題材に、Webの領域と実世界の領域を結びつけるという課題に取り組んだ。
CHIRIMENは、JavaScript、HTML、CSSなど、全てWebのテクノロジーだけで動かすことができるという。

その講座開始に先立ち、開催された今回のアイデアソンのお題は、「Webをモニタ以外で表現」しようというもの。
合計6チームがアイデアを出し合い、最優秀賞を獲得したのは、「あなたのペットがコンシェルジュに」というアイデア。犬と対話したいと思っていたメンバーからのアイデアで、ロボットではなく「本物」のペットをWoTのインターフェースとして利用しようというものだ。
対象は首輪がつけられるペットを飼っているペットオーナー。スマートハウスのようなイメージで、ペットに話しかけると家電と連携できる。
例えば、夫婦喧嘩のせいで家庭内の空気が悪くなったことをペット(の首輪)が察知すると、夫婦の思い出の映画を流してくれることで仲直りのきっかけを作ったり、不審者が入ってきて犬が吠えると自動で110番され、セキュリティにもなったりするというもの。
実際にはペットの首輪が反応するのだが、ペットオーナーからすればペットがスマートハウスをコントロールしているかのように見える。今までロボットやアプリなどをペットにするというものはあったが、本物のペットをインターフェースにしてしまうというアイデアは斬新で、審査員からの評価も高かった。
受賞後に、実際このアイデアを商品化するには何が必要で、いくらかかるか?という審査員からのフィードバックも具体的だった。

細かい実装の部分を考えていくともっと作りこむ必要はあるが、この首輪が商品化されたら、喜ぶペットオーナーは多いのではないだろうか。上記の機能に、さらにバウリンガルのような機能も搭載されたら、楽しいペットライフになりそうだ。
その他、面白かったアイデアを2つピックアップする。
1つ目は、毎日持ち歩きたくなる傘「スマート・アンブレラ」。音と光と振動でナビゲーションになる傘で、例えば、右に曲がる時は1回振動し、左に曲がるときは2回振動することでナビをしてくれる。また、ゲリラ豪雨などの危険情報をアラートで通知してくれるという。
充電方法としては、毎日持ち歩くので「振動」で充電するというアイデアと、日傘として使えば「ソーラーパネル」にもなるという2案が発表された。さらには、ビーチなどで傘を開けばスクリーンになり映画も投影できる。
晴れの日も雨の日もいつでも持ち歩ける傘のため、毎日持ち歩くと、突然雨が降ってコンビニ等で使い捨ての傘を買わなくて済むので、エコにもなるという環境に配慮したところまで考えられていた。
審査員からは、このアイデアをさらにブラッシュアップした形で「傘を開いたらその情報がネット上にアップされ、“今、西の方で傘を開いた人がたくさんいる”から雨がふるかもしれないというのがわかるのもいいかもしれない」というコメントもあった。
傘というのは、蛇の目傘の時代よりは軽量化、コンパクト化されたが、画期的な傘というものはまだ広まっていないのではないだろうか。アイデアソンの中では「傘は邪魔」というコメントも多く出ていたが、今回のアイデアが実装された傘が発売されれば、なくてはならないものになるかもしれない。
2つ目は、いわゆるウェアラブルウェアだが、電気を通すことで色を変えるという技術を使って、ネットの情報を自分の服で表現しながら、「まわりの人にもその情報を配る」というもの。
電車の混雑時に、人のシャツの後ろ側に矢印が表示され混雑しているところから移動できるなど、自分のためではなく「人のため」をベースとしたWoTだ。
さらに、感情の見える化をし自分の感情を襟で表現したり、株価の銘柄を登録しておくと腕の色でわかり、赤くなってくると証券会社に電話をかける、などというアイデアが出た。
元は電車の窓に混雑状況が表示されるのがいいのではないかというアイデアが出ていたが、人をモニター(正式には人の服だが)にしてしまうというのは、参加者の反応もよく面白いという声が多く出ていた。
今回のアイデアソンでは、まずはチームで出したアイデアを、次に「別のチーム」がさらにブラッシュアップしていくというスタイルで行われた。これは「誰かが作ったものを、新しい誰かがさらによりよいものにしていく」という、Webの概念をイメージしたものだというが、最初の案より良くなっていたアイデアが多かったように感じた。
ハッカソンのように、実際にCHIRIMENを使って何かを作るというイベントではなかったので、どう実装するか?までの細かい部分までは落とし込んでいないアイデアが多かったが、逆に生活していて困っていることをベースに考えられたアイデアが多く発表されたので、ぜひ商品化してほしいものばかりだった。
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