LTEをベースとした自動車とその周辺の様々なモノ(車、人、インフラ、ネットワーク)を繋ぐ無線通信技術「Cellular-V2X(C-V2X)」の規格化が進んでいる。
ノキアソリューションズ&ネットワークス株式会社では、5月23日、記者説明会で、C-V2X の市場動向、コネクティッドカーに対するノキアの取り組みなどを発表した。
また、会の冒頭では、ノキアベル研究所の研究員で、昨年発足し、通信業界と自動車業界の世界初の業界団体である「5G Automotive Association」のVice Chairを務めるティエリー・クライン(Thierry Klein)氏もビデオで参加し、5GAAの最新動向についても説明を行った。
5GAAの最新動向について

※5G Automotive Association:次世代通信を活用したコネクテッドサービスでの協力
自動運転車両の通信には、信頼できる通信インフラと安定したモバイル通信接続が必要。そのためには、次世代モバイル通信規格が不可欠である。
5GAAへの加盟企業は現在、創設メンバーである、アウディ、BMWグループ、ダイムラー、エリクソン、ファーウェイ、インテル、ノキア、クアルコムの8社を含む47社に達している。5GAAは、異業種の企業で構成される団体であり、自動運転や各種サービスへのアクセス、スマートシティやインテリジェント交通への統合などの各種アプリケーションにおけるコネクテッド・モビリティと安全に対する社会ニーズに対応することを目指し、通信ソリューションの開発・試験・推進や標準策定に向けた取り組みのほか、商用化とグローバル市場での普及を促進している。
コネクテッド・カーや自動運転に向けた標準化をより強力にサポートするため、ETSI、3GPP、SAEなどの標準化団体に対する標準化の優先順位付けも行っている。
※ETSI:欧州電気通信標準化機構
※3GPP:第三世代携帯電話(3G)に関する標準仕様の策定を目指すプロジェクト
※SAE:モビリティ専門家を会員とする米国の非営利団体
5Gは、現行の4Gインフラと比較した場合、より多くのデータをリアルタイムで伝送することができる。ただし、クライン氏は、「今ある4Gのネットワークで、コネクテッドカーの多くのユースケースはサポートでき、5Gを待つ必要はない」と述べた。
ITS(Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)で用いられている代表的な無線通信であるDSRCという方式あるが、セルラー技術のほうに優位があるのは以下の理由によるそうだ。
※DSRC:車両との無線通信に特化して設計された無線方式
・モバイル通信と同じ技術であるため、エコシステムが大きく、スケールメリットがある
・C-V2Xであれば、モバイル通信事業者が既にインフラを所有している
C-V2Xの市場動向とコネクティッドカーに対するノキアの取り組み

V2Xにより新たに創出される産業は数十億ユーロだという。一口にV2Xといっても車車間のV2V、信号機などの路側機間のV2I、車と交通弱者である歩行者との間のV2P、車とネットワーク間のV2Nなど使える用途は非常に多岐にわたる。

そこで、柳橋氏は、日本においても米国や他の国と同様、地域固有の事情を考慮したユースケースの定義を進めていく必要があると語った。
C-V2Xについて、よくある誤解は、C-V2Xを自動車単体に搭載された既存のローカルなセンサー技術の置き換えだというものだとし、柳橋氏は、「ローカルセンサーは自動運転の基本的な実現要素とし、そこに更なる拡張性と高度化を目指した自立型の車を支援するコネクティビティの為の技術がC-V2Xである」と強調した。
ノキアでは、単体のクルマの機能としてではなく、ネットワークを介した運転支援インフラのづくりを目指しているということだ。
エッジクラウドなどの新技術を利用することで、LTE技術分野でもC-V2Xに関する技術が、既に実現可能であり、現にリリースされている(3GPPリリース14の中でLTEを用いたC-V2Xのコア仕様の標準化を完了させている)。

LTE V2Xモデムのパイロット版が入手可能になるのは2017年第4四半期。その後、通信業界側でLTE V2Xモデムを搭載した車載システムの検証が始まり、完了は2018年末を想定している。そして、ようやく自動車業界での実証実験となるということだ。既に標準化済みのLTE V2Xでも、商用化は2020年以降の見込みなのだから、いち早く市場に投入するには、5Gを悠長に待ってはいられない事情があるというのだ。
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