2024年2月11日~14日に米国テキサス州ダラスにて、ダッソー・システムズの3DCADであるSOLIDWORKSと機能を拡張するプラットフォーム「3DEXPERIENCE Works」のユーザーイベント「3DEXPERIENCE World 2024」が開催された。
本稿では、ダッソー・システムズのスタートアップ支援について紹介する。
ダッソー・システムズのスタートアップ支援

ダッソー・システムズがスタートアップを支援する理由の1つが、未来の顧客を探しているからだという。「Pay it forward」の考え方があるとし、このタイミングから将来のイノベーションの最先端にいる企業であるスタートアップを支援することで、より良いイノベーションが市場に拡大することを支援しているという考えだとした。
ダッソー・システムズのスタートアップの支援として大きく2つのやり方があるという。
1つは「3DEXPERIENCE Lab」だ。3DEXPERIENCE Labは、2015年に開設されたオープンイノベーションラボである。
3DEXPERIENCE Labアクセラレーションプログラムに参加したスタートアップは、3DEXPERIENCEプラットフォームを利用して、様々な検証を行うことが可能になるほか、システムの専門的な知見やビジネスのコツなども学ぶことができる。また、パートナーとしてFablabが参画しているため、デジタル上のシミュレーションだけでなく実際にプロトタイプを作成し検討することができるのも3DEXPERIENCE Labのメリットだ。
3DEXPERIENCE Labは、年間12〜15社のみを支援しているという。それは、多くの企業を浅く支援するのではなく、使命を果たそうという企業に寄り添い支援することが目的だからだという。3DEXPERIENCE Labの支援を受けるためには、四半期ごとにピッチがありそこで選定を受ける必要があるそうだ。
また、3DEXPERIENCE Labがある場所での支援になるため、物理的なロケーションが制約条件となるという。
もう1つの支援が、「SOLIDWORKS for Startupsプログラム」だ。
こちらはイノベーションのアイデアはあるが資金が不足しているスタートアップに対して、SOLIDWORKSや3DEXPERIENCEのライセンス料を割引するというものだ。初年度のライセンス料は無料、2年目は70%オフ、3年目は30%オフと段階的な割引になっている。その他、各地域のSOLIDWORKSのパートナーからのトレーニングを受けることも可能であるという。
ダッソー・システムズの支援を受けたスタートアップ
電動三輪車を開発する「Tigoona」

インドには1000万人の露天商がいるが、特に女性の露天商の起業家に向けて開発している。そのため、女性でも乗りやすく、安全かつ快適である三輪車を開発する必要があった。また安価に製品を届けるという課題もあり、こうした課題を解決するために3DEXPERIENCEプラットフォームや3DEXPERIENCE Labを活用したという。
特にSOLIDWORKSのシミュレーションを活用したそうだ。素材や力学的なシミュレーションを行い、製品開発を行ったとしている。
電動三輪車を走らせるインドの路上は、場所によって舗装されていない道もあるという。このような場所でも走行のしやすさは変わらないのか、また安全性は担保されるのかというようなことを様々なシナリオを考えてシミュレーションを行ったそうだ。シミュレーションをすべてデジタルツイン上で行うことで、開発期間を1年ほど短縮することができている。
電動ベビーカーを開発する「GlüxKind」

カナダのスタートアップである「GlüxKind」は電動ベビーカーを開発している。子育ての中でベビーカーはなくてはならない道具であり、このベビーカーをもう少し便利な形にできないかと考えて開発をスタートしたという。
この電動ベビーカーにはいくつかのモードがある。その1つが利用者を追従するモードだ。利用者はベビーカーの後ろを歩くだけで、押したりする必要なくベビーカーが進むようになっている。緩やかなカーブのような先が見える道の場合でも追従が可能である。
また、プッシュブレーキアシストが付いており坂道でも利用者は別のことをしながらベビーカーを操作することができる。他にもロッキングモードも付いており、子どもをあやす時に利用することができる。
「GlüxKind」は、電動ベビーカーの開発に、SOLIDWORKS for Startupsプログラムを活用したという。創業者はゼネラルセッションの中で、「SOLIDWORKSがPoCから生産までのすべての過程において重要な鍵になった」と述べている。
一般的なベビーカーは3つの部品が回転するように設計されているが、同電動ベビーカーは、4つの部品が回転するように設計する必要があった。それらの部品は、センサーからの信号を送るケーブルが通るように中空で設計する必要があったそうだ。こうした設計の制約がありながら、既存の自動ロボットと比較しておよそ6倍である150ポンド(約68kg)の重さに耐えられるように設計できたそうだ。耐荷重を6倍にしながら重量を抑えた設計が可能になったのは、ソフトウェアを使ったシミュレーションと現実でのテストを併用したためであるという。
また、3DEXPERIENCEプラットフォームを活用することで、協働プロセスがスリム化されたという。世界中にいるインダストリアルデザイナーや製造業者とのコラボレーションが可能になり、アイデアから製造までを3年間という短い期間で実施することができたということだ。
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大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。