ストラタシスは、アメリカのミネソタとイスラエルに本社を構え、ものづくりの現場で使われる「工業プリンタ」のシェアは世界で55%を誇る。
片山氏は講演中、同社の3Dプリンタでつくったマセラティのシフトノブを披露。3時間で、アセンブリなしでつくったというそのシフトノブを筆者も実際に触ってみたが、光沢感や「シボ」(皮革製品の表面のシワ模様)の肌触りまで緻密に再現されていた。
また、積層造形はIoT製品の開発にも向いているという。「積層造形では、製品の中にIoTセンサーを組み込むことができる。たとえば、造形しながらシューズの中にセンサーを組み込めば、アスリートのリアルタイム分析などにも可能になる」(片山氏)
ストラタシスの3Dプリンタは、ボーイング、フォード、シーメンス、Airbus、GE、ロケット製造のULA、NASA、BMW、ダイムラー、マクラーレン、ホンダ、マセラティなど世界のさまざまな企業で既に活用され、製品の開発プロセスを大幅に短縮している。
たとえば、ULAでは従来のアルミ製パーツ140点を3Dプリンタの樹脂製製パーツ16点に置き換え、57%のコスト削減を実現。2016年には3Dプリンタで製造したパーツを搭載したロケットを打ち上げている。
また、これらの企業は、アディティブ マニュファクチャリング(AM)を検証する技術センターの設立も推進。そこでは、従来のパーツをAMに置き換えた際の検証やノウハウの蓄積、デジタル製造熟練者の育成などさまざまな目的があるという。

片山氏によると、欧米ではAM生産によってどれくらいのメリットが出せるのか明確な数値目標を打ち出し、トップダウンで進めるのだという。つまり、世界ではIoTやAIの活用にとどまらず、3Dプリンタも含めた生産方式の抜本的な改革を進めているのだ。こうした動きは、日本企業では殆ど見られないという。
また、ストラタシスでは「GRABCAD」というクラウドソリューションを展開している(上の図)。
GRABCADには約280万件の3DCADのファイルがあり、ユーザーは無料でダウンロードが可能。また、それは一つのエコシステムとなっており、企業などが設計条件を提示し、懸賞金をかけて世界中のエンジニアに設計を依頼するといった活動を行っている。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。