働く現場におけるIoTの課題とは
小泉: IoTが表計算ソフトのように、簡単に使える状態である必要があることはよく分かりました。実際の働く現場で、どういったシーンが考えられるのでしょうか。
北原: 例えば、オフィスビルにおける入館を考えます。朝最初にくる社員は、多くの場合防災センターなどに寄って鍵をもらうなり開けてもらうなりしないといけません。
では、二番目に出社した人はどうでしょう。ドアが開いているかどうかがわからないし、割と早く出勤したので、やはり防災センターに寄ることになるでしょう。しかし、一番目に出勤した人がすでにドアを開けてくれているので、無駄足になります。
ここで、もしドアが開いたら自動的にメッセンジャーなどに通知がくれば、防災センターに寄る必要はないということになります。
こんな、ちょっとしたことを実現しようと思ったとき、わざわざシステム開発会社を呼んで開発しなくても、総務部門が自分でチョコっと作れればいいことだと思いますが、現状はできません。

小泉: 確かにそういった、ちょっとしたことで、IoTで解決しそうなことって多いですよね。
北原: オフィスのIoTというとトイレのIoTなどが有名ですが、あれもちょっとしたことですよね。
小泉: 最近ではいくつかの電鉄や空港でも使われていますものね。
北原: 技術的にも、2つのセンサーがあった場合、それぞれのメーカーがそれぞれでネットワーク対応を実装していて、アカウント認証の方式もそれぞれ異なる場合は、インテグレーターがまとめることも難しいのです。
そこで、ベンダー・ニュートラルに、センサーから簡単にデータを取得することができる仕組みを作ることになるのですが、現在ではデータを取得して可視化するところで留まっている場合が多いのです。
例えば、会議室の二酸化炭素濃度を取得して可視化するのはいいのですが、濃度が高いからどうするのか、ということまで簡単にインスピレーションが湧かないといけないのだと思うのです。
データを取得するにしても、例えば、これまで在室かどうかについては、椅子に着座センサーをつけていましたが、これでは人が座っていても荷物が置かれていても、着座状態と判定してしまいます。
そこで、カメラを使うというアイディアが有用になります。
小泉: なるほど、単純にデータをと取るといっても、どういう取り方が良いかを考え、データを投入したら、次にどういうアクションができるべきかというインスピレーションが湧くことが重要なのですね。
北原: はい。さらに、施設の使い方にも自由度を与えたいなと考えました。
小泉: どういうことでしょうか。
北原: 例えば、朝と夕方では気分が違うので、気分に応じて照明が勝手に変わる。最近のオフィスはフリーアドレスのタイプのものが多いですが、アフターファイブにオフィスのレイアウトである必要はないので、ボタン一つで机のレイアウトも変わる、といったことです。
小泉: なんだかワクワクするオフィスですね。

北原: ショップなどでは当たり前のようにある、季節感なども重要だと思います。今だとショップ内のデコレーションはスタイリストなどの専門分野となっていますが、その環境をソフトウェアでデザインするだけで、変えられるといいなと考えています。
最終的には、プログラミングが必要ない未来を描いているので、イメージをセンシングし、それを数値化することで、誰でも簡単に使えるサービスを作っていきたいと思っています。環境、雰囲気などの、空間全体を作っていくのがソフトウェアの使命です。
「簡単IoT」の歴史を作っていく
小泉: Gravioも今後の展開が考えられていると思いますが、どういう将来を見られていますか。
平野: 大きくいうと、「歴史をつくりたい」と思っています。
表計算の例でもお話した通り、IoTは実用化の可能性が高い一方で、まだまだ利用者にとっては敷居の高いものです。例えば、パソコンが一般に普及したように、オフィスやショップでもIoTの恩恵が受けられるようにしたいと考えています。本当にIoTが普及する起点にしたいのです。
そこで我々は、Gravioの「簡単IoT」という考え方をもっと発展的に考えて、誰でも使えるIoTを目指していくことで、振り返ると「GravioでIoTの一般利用が始まったね」と言われるようになりたいと考えています。
かつて、社内のさまざまなコミュニケーションを統合・連携して簡単に使えるようにするという発想からグループウエアが登場しました。同じように、さまざまなベンダーから提供されるIoTやIoTサービスを統合・連携して簡単に使える状況にしていきたいと考えています。
小泉: 本日はありがとうございました。

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