2019年5月29日~31日に、東京ビッグサイトにて第14回総務・人事・経理ワールドが開催された。「働き方改革EXPO」「HR EXPO」「オフィスセキュリティ EXPO」など、8つの専門展示会から成るこのイベントは、主に企業・官公庁などの管理部門向けに製品・サービスを出展する場となっている。
4月1日から「働き方改革関連法」が順次施行されることに伴い、今回の総務・人事・経理ワールドではどの専門展示会でも「働き方改革」に前面に打ち出した展示が多く、なかにはIoTを「働き方改革」に結びつけた事例も見られた。
スマートロック・スマートオフィスによる時間管理
「働き方改革関連法」の柱の一つに時間外労働の上限規制の導入(月45時間、年360時間が原則)があるが、規制に対応するためにまずは正確な労働時間の把握が必要である。
そのため、今回のイベントではスマートロックを労働時間管理につなげる事例が目立っていた。
特に「オフィスセキュリティ EXPO」ではフォトシンスの「Akerun入退室管理システム」、A.T.WORKSの「iDoors(アイドアーズ)」といったクラウド型入退室管理サービスが展示され、スマートロックを通じて取得できる入退室データの有効活用が説明されていた。
また、「働き方改革 EXPO」のブースで多く見かけたのは会議室およびトイレのスマート化だ。
NTCが展示していたのは空き情報管理サービス「空いているチェッカー」。開閉センサーデバイス「Oshieru」や照度センサーデバイス「Sizuku Lux」などを設置し、会議室やトイレなどの空き状況をリアルタイムで取得するというサービスだ。ブース内の説明員によれば、「防犯カメラが設置できない更衣室ロッカーに犯罪抑止として使用される例もある」という。
(トップ画像が、温湿度センサー「Sizuku Lux」)
KDDIのブースでは「IoTクラウド~トイレ空室管理~」が紹介されていた。小田急電鉄の駅構内で一部導入されているが、オフィスビル内で利用すれば待ち時間の解消による生産性の向上につながる。
こうしたスマートオフィスの事例についても、時間の効率的な使い方という労働時間の問題につながっている。IoT利用という観点から見ると、「働き方改革」の中でも特に時間管理について各企業とも焦点を当てているように感じる。
「健康経営」につながるIoT利用
時間管理に次いで目に付いたのは、従業員の健康管理に対するIoTの活用例だ。
産業医の機能強化、医師による面接指導の強化など、「働き方改革関連法」では労働者の健康管理についても企業側の十分な対策を促す内容を盛り込んでいる。「健康経営」もまた、時間管理と同じく「働き方改革」を推進する上での課題となっている。
「働き方改革 EXPO」内に出展した日立システムズのブースでは、タニタヘルスリンクによる「タニタ健康プログラム」が紹介されていた。
これは体組成計や活動量計を通してデータを収集し、蓄積したデータを会社側は専門家による健康指導・栄養指導に利用、従業員側はパソコンやスマートフォンで自身の健康状態を日々チェックできるというものだ。
また、「省エネ・節電 EXPO」内においても健康とIoTの結びついた事例を見ることができた。AGCのヘルスケアミラー「ミラリア(仮称)」である。
「ミラリア」は鏡面に触れずにモーションでコントロール可能なセンサーを搭載した鏡だ。姿を映した人物の心拍数をセンシングし、顔認識で感情を推測するなど、主に健康管理に用途が見込まれている。
例えばオフィスのトイレや、エレベーター内に設置することで、社員の健康状態を把握することができるようになる。
IoTによる「働き方改革」の余地はまだある
今回の総務・人事・経理ワールドを見る限りでは、IoTを導入する目的が業務の効率化に集中している印象を受けた。
これは法改正で時間外労働の上限について罰則が設けられたために、大多数の企業が時間管理に関心を寄せていることの表れだろう。
今後は時間管理だけでなく、健康管理や安全確保といった分野にもソリューション事例が増えてくれれば、と感じた。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。