経済産業省と厚生労働省は、ロボット技術の活用により高齢者等の自立支援を実現するべく「ロボット技術の介護利用における重点分野」(平成24年11月策定、平成26年2月改訂)を改訂し、その合計6分野13項目を公表した。
「未来投資戦略2017」(平成29年6月9日閣議決定)では、ロボット介護機器の開発において、自立支援等による利用者の生活の質の維持・向上と介護者の負担軽減の実現を掲げている。
また、ロボット介護機器の開発重点分野の再検証を行い、戦略的な開発の方向性を取りまとめ、来年度以降の新たな開発支援対象に反映させることとしている。
平成28年度には、介護現場と開発企業が協議し、介護現場のニーズを反映したロボット介護機器開発の提案内容を取りまとめるニーズ・シーズ連携協調協議会を設置した。
そこで介護分野におけるコミュニケーションロボットの活用に関する大規模実証試験を実施し、新たに開発・実用化を重点的に進めるべきロボット介護機器を明らかにした。
その結果を平成24年に策定した「ロボット技術の介護利用における重点分野」に反映させ、1分野5項目を追加して合計6分野13項目とした。
改訂後の重点6分野13項目は以下のとおりである。なお、太字箇所が新たに追加された分野・項目である。
- 移乗介助
- ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器
- ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器
- 移動支援
- 高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器
- 高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器
- 高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器
- 排泄支援
- 排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能なトイレ
- ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器
- ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器
- 見守り・コミュニケーション
- 介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
- 在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
- 高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器
- 入浴支援
- ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器
- 介護業務支援
- ロボット技術を用いて、見守り、移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする機器
今後、経産省では、日本医療研究開発機構が実施するロボット介護機器開発・導入促進事業において開発支援を行い、同事業の公募を本年度中に開始する予定だ。
厚労省では、開発中の試作器について介護現場での実証、成果の普及啓発などを行い、実用化を促す環境を整備するほか、ロボット介護機器を活用した介護技術の開発を支援していくという。
【関連リンク】
・経済産業省(METI)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。