昨年の深セン視察(https://iotnews.jp/archives/103419/ 参照)では、テンセント本社訪問や無人コンビニなどの体験から、数年で急速に一般化したスマート決済普及の背景などを中心にレポートした。そして、今年の香港の展示会でアリババが杭州で展開する「City Brain」の取り組みを目の当たりにしたことをきっかけに、アリババの街、杭州に興味を持った。
そこで、今年は杭州に訪問し、先進的な店舗やホテルの視察及びアリババ本社にて関係者のインタビューを実施し、世界でも最先端の生活環境が構築されている中国の実態と背景を探った。
アリペイ、WeChatPayという2強によって生活に定着したスマート決済だが、昨年の取材で浮き彫りになったスマート決済普及の3つのポイントをまずは頭に入れておきたい。
- 現金に対する不潔感・不信感が顕在化している中で、現金に変わる決済手段であるQR決済採用による店舗の対応コストが無かったこと。
- 中国ならではの人的リソースを活用することで、スマートフォンでの注文から短時間でデリバリーが実現できること。
- 中国では電話番号が個人IDとして機能している。その電話番号を持つスマホで、店舗でもECでもデリバリーでも利用できるだけでなく、信用スコアとも繋がったこと。
現金やクレジットカード以外にSuicaやEdy、店舗独自の決済手段などが選べる日本と異なり、中国では多様なキャッシュレス手段がまだ広まっていなかった。
日本では、(1)の利便性で普及したことばかりが報じられているが、実際は(2)や(3)がスマート決済の定着には重要な要素だったといえる。
次ページは、「スマートフォンからの短時間デリバリーが実現できる効果」
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。