家庭用ロボット「Temi」の活用
秋葉:そこで、コストの問題を解決するために、私は少し発想を変えてみよう、と考えています。それは、「汎用的に作られている家庭用ロボットを現場で活用する」ということです。
その具体例の1つが「Temi」。家庭用ロボットとして開発されたものですが、実は3Kgくらいの荷物を持てます。元々軍事用のロボットで成功したアメリカの「Roboteam」という会社が製作したのですが、家庭で高齢者がつかまり立ちできるくらいの強度を付けたそうです。
ちなみに「Temi」がそのような設計になったのは、「Roboteam」のCTOが祖母から「あなたたちの作るロボットは、私たちの生活の役には立っていないじゃない」と言われたことがきっかけだと聞いています。
小泉:私も昨年のIFAで取材しましたが、「Temi」にはそういう背景があったのですね。

秋葉:さらに「Temi」には人とロボット間の会話以外に、「Temi」を通じて人同士が会話できる機能も備わっていて、スマートフォンで遠隔操作をすることもできます。
八子:「Temi」を介せば、人と人がやり取りしながら作業している感覚になりますね。
秋葉:そうです。そして大事な点がコストです。「Temi」はさっきのロボットの値段と比べてみると、明らかに安いわけです。(編集部注:現在、temiは株式会社hapi-robo st が総代理店となり国内での正式発売の準備中であり、価格は30万円を切る価格になる模様)これを数台購入して使う方ががコストを抑えられるわけです。
ロジスティクスにおけるRaaSの確立を目指す
小泉:実際、ロジスティクスの現場では「Temi」をどのような用途で使うことが出来るのでしょうか。
秋葉:1つはピッキングです。積載量が3Kgという上限がありますが、普段ネットショッピングなどで我々が購入するアイテムくらいの重さならば、十分に対応することができます。
2つ目は「Temi」を介して、作業者が分からないことを現場の担当者に相談できることです。作業者の中には相談する人が周囲にいないため、分からないことをそのまま放置して作業を進めてしまう人がいるのですが、「Temi」を通じた遠隔コミュニケーションでそうしたミスは防げるようになります。
八子:人の作業を補完する形で「Temi」を活用するのですね。「Temi」同士の通信は可能なのですか。

秋葉:いえ、現時点で「Temi」同士は通信できないので、その場合は群制御のような仕組みを構築する必要があると思います。
八子:それが実現すれば、「Temi」が自律分散的に動き、人の手が足りないところを勝手に補ってくれることもできますね。
秋葉:「Temi」のもう1つ優れている点は、「Temi」内に縦横100m以内の3D地図を持つことができることです。1台でだいたい3000坪の広さをカバーすることができますね。
八子:それだけの広さを1つの倉庫内に設置するだけではなく、隣接する工場ともロボットでつながることができるわけですね。
秋葉:そうです。物流施設から工場、場合によっては小売店舗をつなぐこともできます。ロボットの動き自体は「From to」でしかないわけですが、それを設置する場所や人間によって用途を変えよう、ということです。
そうすれば、繁忙期とそうでない時との使い分けといった多様な場面に対応するサブスクリプションモデルにもしやすいと思います。
八子:今まで同じようなモデルはソフトバンクの「Pepper」などがありましたが、専らコミュニケーションロボットとしてのサービスでした。秋葉さんがおっしゃっているのは、汎用性のあるロボットを完全に産業用ロボットしてサービス化するということで、まさにRaaS(Robot as a Service)ですね。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。