今日のDRAM、SRAM、フラッシュなどの大容量メモリ技術は、発明から数十年を経ており、今ではあらゆるデジタル機器やシステムに広く採用されている。一方で、磁気抵抗メモリ(以下、MRAM)、抵抗変化型メモリ(以下、ReRAM)、相変化メモリ(以下、PCRAM)など、独自の特性を持つ新型メモリにも期待が寄せられているが、その基盤をなす新材料の扱いが難しく、量産には多くの課題があった。
このような中、Applied Materials, Inc.,(以下、アプライド マテリアルズ)は、IoTとクラウドコンピューティングに向けた新メモリ技術の業界導入を加速する、量産ソリューションを発表した。同ソリューションでは、新型メモリの鍵となる新材料の成膜を原子レベルの精度で堆積することができる。
MRAMは、IoTデバイス用のソフトウェアとAIアルゴリズムを保存するメモリとして有力視されており、ハードディスクドライブに広く用いられている繊細な磁性材料を利用する。高速かつ不揮発性で、電源がオフになってもソフトウェアとデータを保持でき、高速性と耐久性の高さから、いずれSRAMを置換するものと期待されている。MRAMはIoTチップの設計に際してBEOLの配線層に組み込めるため、チップサイズの小型化とコスト削減にも貢献する。
アプライド マテリアルズの新プラットフォームEndura Clover MRAM PVDは、最大9つのウェーハ処理チャンバで構成され、各チャンバは独立して高真空状態を維持する。この量産向け300mm MRAM装置は、1チャンバにつき最大5種類の異なる材料を成膜することができる。MRAMでは少なくとも30種の材料層を正確に成膜する必要があり、なかにはヒトの毛髪の50万分の1以下という極薄の成膜が求められるものもある。
Clover MRAM PVDは、成膜されるMRAM層の厚さをオンボード計測する機能によってサブオングストロームレベルの精度でインサイチュ測定・モニターをし、ウェーハを外気にさらすことなく原子レベルの均一性を確保する。
また、データ生成量が爆発的に増加する中で、クラウドデータセンターではサーバーとストレージシステムをつなぐデータパスの速度と消費電力を大幅に改善する必要がある。サーバー用DRAMとストレージの費用対効果の差が広がる中で、高速性、不揮発性、省電力性、高密度を兼ね備えたReRAMとPCRAMが、新たな「ストレージクラスメモリ」として注目を集めている。
ReRAMは、ヒューズのように機能する新しい材料を使用して作られており、データを表すために数十億の記憶セル内にフィラメントを選択的に形成することができる。一方、PCRAMはDVDディスクなどに用いられる相変化材料を利用し、ビットは材料の状態をアモルファスから結晶質に変えることによってプログラムされる。
ReRAMとPCRAMは、3D NANDメモリと同様に3D構造に配列されるため、メモリメーカーは製品世代ごとに積層数を増やしてビットコストを継続的に引き下げることができ、プログラミングや抵抗値の中間状態を利用して、各メモリセルを多値化する事も可能になる。
ReRAMとPCRAMは、いずれもDRAMに比べて大幅な低コスト化が見込まれるほか、NANDやハードディスクドライブよりも読み出し性能が高速になると見られている。ReRAMは将来のインメモリ コンピューティングアーキテクチャに関しても有力な候補の1つだ。インメモリコンピューティングとは、メモリアレイの中にコンピューティング要素を組み込んで、AIコンピューティングにおけるデータ移動のボトルネックを解消する手法である。
同社のPCRAMおよびReRAM用プラットフォームEndura Impulse PVDは、最大9つのプロセスチャンバとオンボード計測機能を真空状態でインテグレートし、新型メモリに欠かせないマルチコンポーネント材料の精密な成膜と制御を実現する。
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