航空機の被雷は、そのほとんどが離発着時に発生する。冬の日本海沿岸では、夏に発生する通常の雷に比べて放電エネルギーが何倍も大きく、世界的に珍しい冬季雷が発生することがある。
これは、気象レーダに映りづらい特徴があり、雷雲の発生している場所の特定が難しいため、パイロットはより繊細な航空機の運航を余儀なくされていた。
国内での航空機への被雷は年間で数百件発生し、機体が損傷することもある。特に複合素材機であるボーイング787型機やエアバスA350型機は修理過程が複雑であり、修復完了までに長い時間を要することから、スケジュール遅延による経済的損失を含めると、国内では年間約数億円規模の損失が発生していた。

こうした中、日本航空株式会社(以下、JAL)と三菱重工業株式会社は、航空機の被雷予測を高精度に行うことができる被雷回避判断支援サービス「Lilac(ライラック)」の使用契約を、2024年4月2日に締結したと発表した。
JALと三菱重工は、2019年より機体を被雷から守るための共同研究を開始している。その結果、航空機が帯電した雲に近づくことで引き起こされる雷により被雷することが分かり、JAXAの被雷危険性予測技術の知見を得て、三菱重工が気象庁の配信する最新の観測データを基にAI予測モデルを開発した。
これにより、飛行中に被雷の可能性が高い位置を高精度に予測できるようになった。
また、離着陸時はパイロットの操縦操作が煩雑な時間帯のため、インターネットを使用したWeb用の雷雲イメージを確認することが難しかったが、「誘発雷の可能性」の判別が容易なJALと、三菱重工が特許技術を取得したアスキーアートレポートを地上運航従事者が機上のインターネット環境に依存しない、既存システムであるACARSを活用した通信を使用し送付することで、パイロットが必要かつ十分な情報を一目で把握できる被雷予測を提供することが可能となった。

これにより、パイロットは飛行中でもコックピットから実際に見える雷雲と機上レーダ、アスキーアートレポートを重ね合わせて、到着経路にある発雷の可能性がある雷雲の有無を考慮した到着経路を選定することや、着陸する時間を見合わせることができるようになった。
なお「Lilac」は、2024年4月から国内の空港を対象に運用が開始される。
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