農林水産省の統計によると、世界の漁業生産量がこの30年間で約2倍になる一方で、日本の漁業生産量は約1/2になっている。
外洋の大型漁業は人工衛星データや海況予測などの情報を利用しているのに対し、小型の沿岸漁業は、過去の経験と勘を頼りにしている。
燃料費の増減に伴う収益の不安定、沿岸地域の過疎化と漁業者の高齢化等、日本の沿岸漁業は長期的に衰退の傾向にある。
スマート漁業とは
スマート漁業とは、漁業における生産活動をデジタルにつなぐことにより、前述の課題を解決しようとする取り組みだ。
例えば、今までは漁場は漁師の勘で決めていたものを、事前に海流や風向き、水温といったようなデータを取得することで、漁場の最新の情報を取得し、信頼性の高い漁場を見つけることができるようになる。
また、養殖においても、生簀の中の状態をモニタリングすることで、こまめに行う生簀のチェックや、足場の不安定な海上での作業を減らすことができる。
海中は陸上と比べ、海水が濁っていてカメラでの撮影が難しかったり、音波では個々の対象をはっきり区別して観察するのが難しかったりするため、水中の状況を正確に把握する技術が重要である。
スマート漁業の事例
水中データ取得による漁業効率化
KDDIとゲイト、スマート漁業の実現に向けて三重県で共同実証実験
KDDI総合研究所とゲイトは、ICTの活用による漁業の効率化を目指したスマート漁業の実現に向けて、共同で検討・実証実験に取り組む。
三重県尾鷲市須賀利町のゲイト漁場(定置網)で、スマートブイによる水温データ測定やカメラブイによる水中撮影等の実験を開始している。
熊野市甫母町のゲイト漁場においても実験を行い、今後、同実証実験を通して漁獲量予測による漁業の効率化を図るとともに、スマートブイに搭載された加速度センサーを利用した波高推定実験など、漁業作業の安全性向上に寄与する検討・検証なども進める。
ベテランのカンコツをデータ化
ユー・エス・イーとオーシャンソリューションテクノロジー、AI活用の漁業者向けサービス「トリトンの矛」開発
株式会社ユー・エス・イーは、オーシャンソリューションテクノロジー株式会社と協業し、AIを活用した漁業者向けのサービス「トリトンの矛」を開発した。
「トリトンの矛」は、ベテラン漁業者の経験や技術、勘をデータ化することで、効率的かつ、生産性の高い漁業の実現と、若手漁師へのスムーズな技術継承を目的としたサービスだ。
漁業者の「過去の経験と勘」と「海洋気象情報」を元にAI解析を実施し、「先代ベテラン漁師であれば行くであろう場所」を情報として提示し、漁場の提案を行う。
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大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。