垣根をこえたデータ連携が、新しいサービスを創る
akippaは、全国の空いている月極や個人の駐車場を一時利用できるサービスだ。ユーザーは、アプリを使って簡単に予約と決済ができる。ユーザーも駐車場のオーナーも、アプリの登録は無料。ユーザーが駐車料金をakippaに払い、akippaはその50%を駐車場オーナーに支払うしくみだ。

akippaを立ち上げた理由について、同社CEOの金谷氏は次のように述べた。「コインパーキングは現地に行って初めて満車だとわかる。これが不便だと社内のメンバーで共感したことが、akippa立ち上げの背景だった。調べると、東京と大阪だけでも1秒間に94,000台の路上駐車台数があり、そのうち半分の人は駐車場がないことが理由だと判明した。一方、コインパーキングは不足しているものの、月極や個人宅のスペースは3,000万台分以上あった。こうしたミスマッチを解消したかった」
現在、akippaの会員数は130万人。2017年の50万人から、ここ1年少しで80万人増加したという。累計の拠点は、日本全国で28,000拠点だ。
なお、akippaとソラコムは2017年から、不正駐車を防止するための実証実験を行っている。たとえば月極の駐車場には、契約をしていないのに勝手に車を駐車する人がいる。そこで、現地に専用のデバイスを設置し、車が近づくとソラコムのプラットフォームにデータが送信されるようにしておく。そのデータとakippaの予約情報を参照し、もし合わなければ不正駐車とわかるというしくみだ。
三社の取り組み内容を聴いたうえで、モデレーターの北島氏は、「IoTによって、モノやクルマがインターネットとつながることはもはやあたりまえになってきていることがわかる。次に問題になるのは、集まってきたデータをどう解釈し、他のデータとかけあわせ、新しいサービスをつくっていけるかだ」と述べた。それについて、JapanTaxiの川鍋氏は次のように語った。
「ドライブレコーダーから、道路周辺の画像が大量に収集できている。本来は、事故の原因を確かめることが目的だ。それを他の用途へ使えないか検討している。たとえば、画像に映った情報からナビ情報の精度を上げることができるはず。また、画像には人も映っているため、警察と連携して防犯などに使うこともできるかもしれない。タクシーは各地を満遍なく、しかも一日中走っている。センサーでもカメラでも、タクシーが走れば走るほど、データは増える。それをどう活用するかが、今後の大きな課題だ」
akippaとトヨタは業務提携を行っている。「ビジネスの協業に加えて、両社が持つデータをかけあわせると、どんな知見が得られるか」という北島氏の問いかけに対し、akippaの金谷氏は、「akippaは利用するために本人確認が必要なので、クルマの位置だけではなく、運転している人(ドライバー)も特定できる。そこにトヨタがもつクルマの位置データなどを合わせれば、大きな価値が生まれる」と話した。
トヨタコネクティッドの藤原氏は、「トヨタではクルマのデータは集まってきている。しかし、人に対してはまだ不十分だ。今のトヨタのビジネス構造では、お客様が車を手放すと、トヨタはその顧客と接点を持ちにくくなる。本来は、その顧客の接点の中から、顧客に合ったクルマやモビリティの手段を提案するべきだ。今後は、お客様一人一人との接点をさらに増やせるようにデータの集め方の構造を変えていく必要があると考えている。その意味で、akippaのようにモビリティの接点を多く持っている企業と協力することで、よりよいサービスをつくることができると考えている」と述べた。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。