XaaS(ザース)という言葉がある。
IT用語辞典バイナリによれば、XaaSとは、「情報処理に用いられる何らかのコンピューティング資源を、あるいはそうした資源の全てを、インターネットを通じたサービスとして提供することである。または、そうしたサービスの総称である」と説明される。
つまりクラウドサービスの総称をXaaSといい、サービスの形態によってSaaS(サース)、PaaS(パース)、IaaS(アイアース・イアース)などに分かれる。
しかし、昨今、XaaSのXに取って代わるアルファベットが氾濫しつつあるように思う。たとえばZaaSという言葉があるようで「Zangyo as a Service(サービス残業)」を意味する。
また、「Gyms as a service」の略であるGaaSは企業が従業員にフィットネスジムを提供するというサービスを指すようだ。
さらに調べてみると、Jを除く全てのアルファベットで「aaS」との掛け合わせが確認できたが、XaaSの定義と照らしたときに、ZaaSやGaaSのようなXaaSのうちの1つとして理解してよいものかどうか不明な言葉も存在する。
そのため、本記事では、増え続けたXaaSを整理する。
Xは貸し借りするモノ
XaaSのXに入る言葉は貸し借りする「モノ」を表すと考えるとわかりやすい。
例えば、SaaS(Software as a service)であれば、サービス提供者側からすると、ソフトウェアを一時的に貸すということであり、ユーザー側からするとソフトウェアを一時的に借りるということだ。
PaaS(Platform as a service)であれば、サービス提供者側は「Microsoft Azure」のようなプラットフォームを一時的に貸すということであり、ユーザー側からするとプラットフォームを一時的に借りるということになる。
IaaS(Infrastructure as a service)の場合は、ハードディスクやファイアウォールといったインフラをサービス提供者とユーザーとの間で一時的に貸し借りする。
注意しておきたいのは、XaaSの定義には「インターネットを通じたサービスとして提供すること」が含まれている点だ。つまり、貸し借りはあくまでも「インターネット」を通じて行わなければならない。言い換えるとクラウドを通じての貸し借りだ。
aaS(アズ・ア・サービス)はビジネスモデル
XaaSのXは貸し借りする「モノ」であると説明したが、aaSは「ビジネスモデル」と理解するとよいのではないかと思う。
aaS(アズ・ア・サービス)はサブスクリプション型のビジネスモデルをいう。つまり、製品そのものをユーザーに売り切るのではなく、製品の機能をユーザーに定期的に提供するビジネスモデルだ。
例えば、複写機業界でよくあるのは、コピー機そのものは売らず、コピー機はリース契約にして、呼べばいつでもメンテンスに来てくれる保守の機能をセットで提供するというものだ。
この場合、サービスの提供者側からすると、リース契約なので初期導入による利益は低くなるが、インクやトナーといった消耗品で稼げる点や継続的な収益が見込めること、さらに、ユーザーが他社へ切り替えるリスクが低減することなどがメリットとして挙げられる。
XaaSはXをレンタルすることのできるクラウドサービス
これまでの情報を整理すると、XaaSはXをレンタルすることのできるクラウドサービスだといえる。
したがって冒頭の「Zangyo as a service(サービス残業)」をZaaSと表現するのは適切でないように思う。残業は貸し借り出来るものではないし、クラウドを通じて提供されるものでもないからだ。
「Gyms as a service(フィットネスジムの提供)」は運動ができる環境を貸し出すという考え方はできる。しかし、インターネットを通じたサービスではないので、これもGaaSと呼ぶのは難しいように思う。
恐らく、必要に応じて何かを定期的に提供する、あるいは必要に応じて何かを定期的に利用するといったニュアンスを伝えるには○aaSと表現することが便利であるため、ここまで用途が拡大したのではないか。
XaaSの基本はSaaS、PaaS、IaaS
基本的にはSaaS、PaaS、IaaSをおさえておけばよい。
これらはソフトウェアサービスを使用するのに必要な構成要素の提供段階で区別することができる。構成要素は大きく分けて、ネットワーク、ハードウェア、オペレーティングシステム(OS)、ミドルウェア、アプリケーションの5つだ。
- SaaS(サース)
- PaaS(パース)
- IaaS(アイアースもしくはイアース)
ネットワークからアプリケーションまでをパッケージとするクラウドサービス。例えば「Microsoft Office 365」や「Gmail」などが該当する。
ネットワークからミドルウェアまでをパッケージとするクラウドサービス。例えば「Microsoft Azure」や「Amazon Web Service」などが該当する。
ネットワークからオペレーティングシステム(OS)をパッケージとするクラウドサービス。例えば「IDCF Cloud」や「さくらのクラウド」などが該当する。
最後にIHS Technologyの「世界のクラウドサービス市場規模の推移及び予測」をもとに総務省が「令和元年版情報通信白書」で作成したグラフを参照したい。
グラフを見ると、SaaS、PaaS、IaaSは堅調に市場を拡大させていく見込みだ。なお、CaaSとはクラウドの上で他のクラウドのサービスを提供するハイブリッド型のサービスを意味しているようだ。
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現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。特にロジスティクスに興味あり。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。