電車やタクシー、商業施設など様々な場所で映像を流す画面を目にすることが増えてきた。
この一見ただの画面のように見えるデジタルサイネージだが、実は様々なセンシングを行い、賢く映像を流してくれている。
車内に最適な映像を
NTTドコモ、埼玉高速鉄道、ビズライト・テクノロジー、LIVE BOARDの4社は、「ダイナミックビークルスクリーン」というカメラとIoT機器を搭載したデジタルサイネージを2019年11月中旬から埼玉高速鉄道車両内に順次設置することを発表している。(トップ画参照)
[参考記事] ドコモやビズライト・テクノロジーなど4社、デジタルサイネージを用いて鉄道車両内でのダイナミックDOOH事業を共同で推進この「ダイナミックビークルスクリーン」では、温湿度を計測し、社内の混雑状況を把握、カメラからの情報をもとに乗客の性別、年代なども把握していく。
その情報をもとにダイナミックビークルスクリーン自体に搭載されたAIにより属性情報化し、状況に応じた広告を配信していくというものだ。
電車内にカメラを設置されることに抵抗がある方もいるかもしれないが、録画は一切しておらず、特定の個人を特定しないAI解析を行うことも可能とのことで、安心して広告を見ることができる。
また、災害などの緊急事態の際には、すぐにサイネージに情報を表示することができる。
このような取り組みは個人情報の懸念でなかなか導入されていない印象があったが、ダイナミックビークルスクリーンでは、個人を特定しない配慮を行っている。
見たい人が見たいものを流してくれれば、広告主も見る側にもメリットがある。
このようなデジタルサイネージが導入され、さらにデータが溜まってくれば、より適正化されたコンテンツが流れるようになると考えられ、広告のあり方が変わっていくことが期待される。
人手不足解消も担う
凸版印刷は、小売店などでの広告やオペレーションを促すためにデジタルサイネージを活用している。
AIカメラを活用したサービスを提供するAWLの協力のもと、店舗内にAIカメラを設置し、性別や年齢などを識別していく。
さらに来店者が店内をどのように回遊したかといった行動特性も分析し、どんな人が何を買おうとしているのかといったことから最適な商品広告をサイネージや音声などによって発信していくという。
このサービスは現在凸版印刷内の売店により実証実験をしており、2020年1月よりサービス提供をしてく予定だ。
店頭で欲しいものが見つからず、スタッフがいないという場合にも、このようなサービスで誘導してくれれば便利だろう。
また、新たな商品提案も自分が興味のあるものから促してくれれば、ついで買いも増えると予想される。
そして凸版印刷は、このサービスが導入され、来店者の行動に変化があったかどうかの検証を自動で行う機能の実装も行っていきたいとしており、よりユーザーエクスペリエンスが良くなっていくことが期待できる。
高齢者や外国人にも優しい
最後に紹介するのは、YE DIGITALと西鉄エム・テックが開発した「スマートバス停」だ。
バス停の表示板をデジタルサイネージにするというもので、電源が取れない場所でも設置できる太陽光発電型だ。
サイネージに表示されている画面は遠隔で変更することができ、土日・祝日運転など、通常と違う時刻表をその都度表示することができる。
バスの接近情報も即座にわかるため、リアルタイムな運行状況や緊急時のお知らせを流すこともできる。
また、多言語対応することで、インバウンドに向けたアクセシビリティ向上も促すことができる。
このサービスは2019年12月2日から2020年11月30日まで、埼玉県さいたま市内の「埼玉大学」バス停にて実証実験を行うとのことだ。
このようにデジタルサイネージはできることの幅を広げており、さらに音声対話機能やタッチ機能を備えているものもある。
一見するとどれも同じ画面のようだが、その背後では様々なサービスを適切な場所で提供しようと考えている提供側の努力が伺えた。
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