FA機器をいじらずIoT化出来る点が、製造業には魅力的
小泉:PUSHLOGを導入するユーザー層について教えてください。
杉村:製品の出荷は2月から始めていますが、そのデータを見る限りでは6割の顧客が製造業です。それ以外の4割は、農業用途など非FA分野で使われています。
小泉:購入先は設備会社が多いのでしょうか、それともエンドユーザーが多いのでしょうか。
杉村:エンドユーザーが3割、設備メーカーが3割、残りの3割は自社の商品と合わせて共同提案されるFA機器メーカー、という割合になっています。
小泉:確かにFA機器メーカーにとっては、自分たちが扱っている機器をいじらずにIoT製品を売ることが出来る、というメリットがあると思います。
杉村:はい。従来、スターターパックで販売するIoT機器にはセンサーの用途を決め打ちしたものが多く、導入するためにはFA側の環境を変える必要がありました。PLCに接続するだけでデータを取得できる仕組みを作ってしまえば、そのような問題は発生しません。
小泉:製造業の側も「FA側に近い製品」という点を評価して、購入を決めているように思います。
杉村:そうですね。PUSHLOGの開発メンバーにはPLCやタッチパネルの開発経験者が多いため、FAエンジニアにとって分かり易い管理画面のUIを作成するなど、製造現場に配慮した製品作りを行っています。
そのため、顧客から「FAでも理解できるIoT製品が出てきた」「IoT化について投資やPoCに失敗した経験があるが、PUSHLOGについては自分たちでもIoT化に取り組めるという気持ちになる」という意見をいただくことがあります。
製造業ではOAに活用、手打ちや手書きのムダを省く
小泉:製造現場では具体的にどのような事例に取り組んでいるのでしょうか。
杉村:人による設備の定期巡回を遠隔監視に変え、省人化を図る、といった事例が多いです。

小泉:取得したデータを利用し、機械学習による予知保全を行う事例はあるのでしょうか。
杉村:BIツールによる可視化やエクセル帳票への出力にデータを利用する事例はありますが、予知保全の事例はまだありません。
小泉:実績報告といったOAサービスにデータを活用し、手打ちや手書きのムダを省く、という用途が多いのでしょうか。
杉村:はい。実は製品のリリース前に、機械学習との連携サービスについても検討しました。しかし、製造現場には未だ手書き作業が多い事に気付き、可視化のレベルでも出来る事はまだ沢山ある、という考えに至りました。
小泉:例えば、ボタン一つで業務日報を作成する仕組みを要望する企業がいるのではないでしょうか。
杉村:おっしゃる通りです。作業終了時間にボタンを押すだけで、すぐに業務実績を集計したレポートが出る、という仕組みについて、現在パートナー企業と取り組んでいます。
ダッシュボード機能を充実させ、製造業におけるデータ活用の幅を広げたい
小泉:今後の展望を教えてください。
杉村:主に2点あります。1点目はシリアル通信だけではなく、イーサネットに対応した型式も開発する事です。
2点目は、現在の簡易的な可視化を行うダッシュボードに、ガントチャートの作成といった更なるデータ分析を行うための機能をパートナー企業と開発し、追加する事です。
小泉:簡単な可視化から、今度はデータ分析による生産状況や稼働監視を行うフェーズに力を入れたい、という事でしょうか。
杉村:はい。その際も、FAエンジニアだけで設定や操作が完結できるような仕組みを提供するつもりです。いま、クラウドの利便性が一層向上していますので、製造業の方々にはその仕組みを上手く使い、データ活用の自由度をさらに広げて欲しいと思っています。
小泉:本日はありがとうございました。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。