モノづくりのDXを加速させ、不確定な時代に対応する ーシーメンスDX記者懇親会レポート

2020年7月21日にシーメンス株式会社のDXに関するWeb記者懇親会が開催された。

この中で、シーメンスは、新型コロナウイルス感染症の流行によって、DXやFAの動きは更に加速するだろうと推測し、顧客と協力しながらDXの推進に取り組むとした。

新型コロナウイルス感染症の流行後に起こるであろうトレンド

シーメンスにおけるデジタル事業
シーメンスは、産業用ソフトウェア、デジタルオートメーション、デジタルサービスに強みを持っている。

まず、代表取締役社長兼CEOである藤田研一氏から、シーメンスの新型コロナウイルス感染症への対応や、DXやFAが加速している状況に対して説明があった。

その中で、シーメンスは、コロナ禍後に2つのトレンドが起こるだろうと推測している。

1つ目は、デジタル化が一層広まり、先進化するというトレンドだ。新型コロナウイルス感染症の流行という状況に対応するのはデジタル技術だとしている。

2つ目は、製造業とそのサプライチェーンに大幅な再調整をもたらすというトレンドだ。これまで人件費の削減を目的に、いくつかの国や地域をまたいでモノづくりを行っていたのに対し、自動化やIoTを適用し高賃金の国でも1つの地域でモノづくりを完結させるということが可能になるだろう。

日本の製造業では、机上で判断するのではなく「現場」「現物」「現実」を重視する三現主義という考え方が広まっていて、この考え方がDXとの軋轢を生んでいた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、強制的に現場作業や集団での業務が停滞してしまっている。この課題を解決するために、IoT環境の整備は加速するだろうと推測している。

いきなりデジタルツインやシミュレーションのような技術の活用が進むわけではなく、ステップ1としてIoT環境が整備されDX基盤が確立してから、ステップ2として、デジタルテクノロジーの高度な活用が進んでいくと考えているとしている。この高度な活用により、DXやFAが加速していくだろう。

シーメンスでは、製品開発や製造設備計画、生産管理やリモートでの監視に至るまで、様々なデジタル技術を提供している。分散化しているCADやCAMMESFAを統合して開発から製造設備計画までを連携して行うことや、現状は現場での対応が中心になっている保全活動も、本社や本部からリモートで管理ができるように変わってきている。

藤田氏は「ニューノーマルは、デジタルへの追い風だ」とした上で、一連のサービスを提供できることがシーメンスの強みであるとした。

装置メーカーがシミュレーションを活用しプロジェクト期間を短縮

デジタル化コンサルティングサービスの対象範囲
デジタル化コンサルティングサービスの対象範囲は、PLMからドライバまで、工場のすべての領域だ。

続いて、濱地康成氏から、顧客と取り組んだDXに関する事例に関しての紹介があった。濱地氏は、DXの定義は、競争力の強化を目的としてデジタルの力を手段に、会社やビジネスを変革することだとした。今回紹介した事例は、このDXの定義に当てはまるものだ。

事例として取り上げられたのは、熊本県の装置メーカーである平田機工株式会社だ。平田機工は、自動車メーカー向けに、ロボットやPLC、タッチパネルなどを組み合わせた生産ラインを稼働させるためのシステムを提供している企業である。

自動車業界は、消費者ニーズの多様化によって様々な車種をニーズに合わせて提供する必要があり、1車種あたりの開発期間が短縮されている。自動車向けの装置メーカーもそのあおりを受けて、装置立ち上げ期間の短縮が必要になっているという状況がある。

こうした状況を解決するために、シーメンスと平田機工が協力し、シミュレーションを使用してフロントローディングを行ったという。フロントローディングとは、製品開発プロセスの初期段階にリソースを投じ、作業を前倒しすることである。

フロントローディングをするために、バーチャルマシンモデルを作成し、ハードウェアが持っている情報を全てPCの中に入れ込んだという。これにより、検証作業をデジタル上でシミュレーションによって行うことが可能になった。例えば、ロボットシミュレーションを行い、ロボットのティーチング作業を行ったという。これにより、立ち上げ時に現場で作業者がティーチングペンダントを使用して、教示するプロセスを削減している。

最終的には、全プロジェクト期間を30〜40%削減したという。デジタル空間上でシミュレーションを行うことで、コスト削減や品質改善の他に、顧客とのコミュニケーション向上の狙いもあるという。

シーメンスは、このような顧客との取り組みでデジタル化を推進させるために、2020年8月から、デジタル化コンサルティングサービスを開始する。このサービスは、スマートファクトリーを作るためのロードマップやグラウンドデザインなどの提供を通じ、デジタル化への地図とコンパスを提供するものだという。

コンサルティングサービスは、PLMからドライバまでの工場のすべての領域が対象範囲になる。

MindSphereを活用し、グローバルでデジタルツインを作る

中国も含めたグローバルなMindSphereアプリケーション連携
中国でMindSphereを使用する場合、クラウドサービスにAlibabaCloudを使用することで、日本から中国の工場の状況を確認できる。

最後に松本洋一氏から、デジタルソリューションの活用事例に関して説明があった。

松本氏は、経済産業省が発行している2020年版のものづくり白書から、2つの状況を説明した。1つ目は新型コロナウイルス感染症の流行によって、サプライチェーンに大きな影響が出たことだ。日系自動車メーカーの多くは、中国に生産拠点を構えているが、今後のニューノーマルを意識するとこうした状況の変化にも対応できるようになる必要がある。

2つ目は、フロントローディングによってダイナミック・ケイパビリティを強化するということだ。競争力の源泉は、エンジニアリングチェーンの上流にあり、設計力を強化することで、手戻りをなくしリードタイムを短縮することができるようになる。

この2つの状況をシーメンスは、MindSphereで解決できるとした。MindSphereはクラウドベースのオープンIoTオペレーションシステムだ。

クラウドサービスは、Microsoft Azure、AWSの他に、AlibabaCloudに対応しているため、中国の工場では、AlibabaCloudを活用することで、中国工場の状況を日本から見ることができるようになる。

また、フロントローディングを実現させるためには、デジタルツインを作成する事が重要だとした。現実世界とバーチャル世界でデータをフィードバックし循環させることで、「Closed-Loopのデジタルツイン」を作成することができ、シミュレーション精度の向上や工場ラインの最適化などが見込めるという。

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