株式会社日立システムズと株式会社日立プラントサービスは、浄水場で利用する電動機や減速機など回転機器の稼働監視や保全業務を効率化する遠隔監視システムを開発した。
同遠隔監視システムは、日立グループのネットワークやクラウド、IoTに関する技術・サービスや設備保全業務に関する技術・ノウハウと無線型センサーを活用して開発したものだ。
日立プラントサービスが包括維持管理業務を受託している浄水場において、約1年間、実証実験として利用された。実証実験の結果、安価な無線型センサーを用いても、従来目視によって評価していた設備機器の状態を定量的に把握できることがわかった。
それにより、設備機器を遠隔監視するシステムを比較的安価に実現できる見通しを得ることができたという。
同システムを活用することで、人手による巡回目視点検を自動化して点検業務を効率化できるほか、設備の稼働状況を確認しながら設備延命化や最適な修繕時期を見極めることなどが可能になり、保全業務に関わるコストの低減に貢献できると日立グループは見込んでいる。
背景
浄水場では、管轄地域の利用者に対し、安定した水質・水量の水を供給することが求められているが、近年、管轄地域の人口減少による減収、各種設備の老朽化に伴う投資、浄水場内の設備機器を保全する技術者の高齢化に伴う人手不足など、さまざまな課題を抱えている。
これらの課題を解決するために、各浄水場が連携し、広域化して浄水場を管理することで、人手不足や設備の維持コストを削減するなど、浄水場の効率的な運営・運用に向けた取り組みが進展している。
取水ポンプ、配水ポンプなどの主要な設備機器に対しては、中央監視システムにより稼働状況を常に管理、計画修繕が実施されている。
しかし、小型・中型の設備機器(攪拌機、ポンプ、フロキュレーターなど)については、技術者による目視点検と定期点検で稼働状況を管理しているため、安全性を保ちつつも、 人手をかけずに低コストで保全を行う仕組みが求められている。
実証実験について
日立システムズと日立プラントサービスは、浄水場内の設備機器の稼働状況を遠隔監視できるシステムを共同で開発し、日立プラントサービスが包括維持管理業務を受託している浄水場内の設備で実証実験を行った。
具体的には、撹拌機などの中に含まれている電動機の高速回転部付近と減速機の低速回転部付近に、後付けや取り外しが可能で配線も不要な無線型センサーを設置。
次にセンサーから取得した機器の振動と温度に関するデータを、IoTゲートウェイ経由で日立製作所の振動や温度に関する時系列データをグラフ化し、従来の点検業務で行ったハンディー計測計による測定結果と比較分析した。
その結果、振動データに相関的な傾向を確認できたことから、無線型センサーを用いた遠隔監視システムについて実現性の見通しを得ることができたという。

同システムを導入することで、これまで定期的に修繕していた小型・中型の設備機器についても、無線型センサーを活用した常時監視により、人手をかけずに設備機器の状態を適正に評価し、設備機器の状況に合わせて適切な時期に修繕を実施することが可能になるとのことだ。
これにより、設備の過剰修繕の削減や、 安全性を保った状態での標準耐用年数を超えた設備利用などが可能になり、設備の導入・保全コスト削減を実現できると同グループでは見込んでいる。
例えば、日立プラントサービスが包括維持管理を行う浄水場内には、施設全体で約50台の回転機器がある。現在、高速回転部と低速回転部の部品交換を2年ごとに実施しているが、同システムを導入した場合、常時監視により状態基準保全(CBM)が可能となり、設備によっては、高速回転部と比較して回転数が少ない低速回転部の部品交換を、最大で2倍の4年の延命化を計画できるという。
【関連リンク】
・日立システムズ(Hitachi Systems)
・日立プラントサービス(Hitachi Plant Services)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。