トーア紡、OTとITの技術をうまく融合し、電力消費量を最適化

電力量の制御が課題

トーア紡コーポレーションは主にウールを中心とした繊維業などに取り組んでいる企業である。同社は四日市に産業資材工場を所有しているが、そこで課題となっていたのは電力デマンドの制御であった。

四日市の工場では電力量の目標値を設定し、それを越えると違約金が発生するという契約を電力会社との間で結んでいた。そのため、トーア紡では工場全体で発生する電力をPLCに集約し、PLC近くに設置された液晶タッチパネルでグラフ化して電力量を確認していた。

そして、目標値を越えた場合はサイレンとパトランプで知らせる、という方法によって電力デマンドの管理を行っていた。

この対応は、無駄な電力を使わないということだけでなく、電力会社との契約もあり、工場全体での供給電力を一定水準以下に収める必要があったからだという。

しかし、上記の方法ではサイレンが鳴ってから初めて超過していることに気づくなど、対応が後手に回ることが多く、電力デマンドの制御になかなか結び付かなった。そこでトーア紡コーポレーションでは工場全体の電力デマンドのデータをクラウドに上げることで、スマートフォンを使って電力を確認し、細かな対応がとれるようにした。

工場全体の電力デマンドを確認


電力デマンドの監視を行うために、まず、工場全体の電力を取得する電力メーターからPLCにデータが集約される。PLCのデータはOpenBlocksを介してクラウド上に送られる。

クラウドに上げられた電力量のデータはIoT.Kyoto(以下、KYOSO)の提供するウェブアプリ「IoT.kyoto VIS」によってグラフ化され、スマートフォンを用いてリアルタイムの電力状況を監視できるようになった。また、目標値を超過した場合はメールでの通知が送信される。

工場全体の電力量をチェックできるようになったことで、工場内の従業員が電力消費の監視に能動的に参加するようになり、エアコンの電気を止めるなど、無駄な電力の消費を抑えることで、目標値の超過を事前に防げるようになったという。

電力使用ピークのタイムシフトを実現


次にトーア紡コーポレーションが取り組んだのは、ラインごとの電力可視化による電力使用ピークのタイムシフトである。

まず各ラインごとの電力メーターから、PLCに各ラインの電力量データが集約される。データは先ほどと同様にOpenBlocksを介してクラウド上に送られ、「IoT.kyoto VIS」によって作成したダッシュボードで各ラインごとの電力量を確認できるようになる。

このダッシュボードでは各ラインの電力量の確認機能以外にも、過去の電力ピーク時のデータ確認や、年間のピーク上位5位を確認できるなどの機能を備えている。

こうした機能によってラインごとの詳細な電力使用状況の分析を行うことで、例えばライン別に休憩の時間帯をずらすなど対策を講じ、電力ピークをタイムシフトさせて電力消費の平準化につなげることが出来た。

さらに安価で敷設容易な電力デマンド制御を実現


上記のような取り組みで四日市工場の電力デマンド制御を実現したトーア紡は、宮崎工場において、産業用の通信プロトコルである「Modbus RTU」を使った更に安価で敷設容易な電力デマンド制御の仕組みを導入した。

四日市工場での取り組みでは、データ収集部分で工場内のPLCのプログラムを変更して制御を行っていた。しかし宮崎工場ではPLCが導入されておらず、古いアナログメーターを目視し、手書きのデータ記録と警報装置で電力を監視していた。

当初は宮崎工場でもPLCを導入して電力デマンド監視を行おうとしていたが、設置に大規模な工事が必要なためコストと時間がかかってしまうことに気づいた。

そこで宮崎工場の取り組みでは、分電盤に取り付けられた電力量モニタからのModbusで取得されたデータをIP通信に変換してクラウドにアップロードするアプローチを実現した。

まず工場内の分電盤に取り付けたオムロンの電力量モニタ「KM-N1-FLK」によって計測した電力量のデータは「Modbus RTU」を使って、KYOSOが提供する「OpenBlocks IoT VX2」というゲートウェイに送られる。

トーア紡、OTとITの技術をうまく融合し、電力消費量を最適化
オムロンの電力量モニタ「KM-N1-FLK」

このゲートウェイには「MORAT GW」というミドルウェアが入っており、これが「Modbus RTU」のプロトコルをrestAPIでラップする。

ゲートウェイにはSORACOMの提供するSIMが入っているので、通信サービス「SORACOM Air」を介して電力量のデータが「AWS」に送られ、「IoT.kyoto VIS」によって各ラインごとの電力量が確認できるようになる。

産業機械のデータ取得には安価で高性能な産業用センサーを、データの可視化や利用には扱いやすいIT通信を

トーア紡コーポレーションの電力デマンド制御に利用された「Modbus RTU」は産業用プロトコルとしてはデファクトスタンダードなものであり、産業用機械の各種センサーの出力としてはなじみが深い。

一方で、産業機械用のセンサーを使うと、そのデータを制御するために、PLC等の改修も必要となり、気軽に「後付け」することができない。

そこで、産業機械から出てきたデータをModbusで伝送しつつも、IP通信にデータ変換する機器を開発することで、既存の工場の製造に影響を与えることなくデータの可視化が実現できたのだ。

この仕組みを使うことで、他の工場・ラインにおいても既存設備を変更することなく、電力管理の施策を横展開することが出来る。

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