柔軟なシステム設計
IoTNEWS、松本(以下、松本): クラウドごとに作法が異なるとのことですが、AWSやPelionと連携する場合、例えばPelionだとmbedOSといったソフトウェアが必須となるのでしょうか。
末武: クラウドサービスベンダーが提供するSDKやOSを、PSoCに組み込むことは必須ではありませんが、SDKを利用することで、クラウドとの接続はスムーズになります。ここでいうSDKは、各クラウドサービスより提供されているものを指します。
ModusToolboxには標準でAWSのSDKに対応していて、AWSとの接続や、クラウド経由でのファームウェアアップデートが容易に構築できます。Pelionも同様に対応しています。
松本: カーネルだけでなく、通信スタックなど含めると、AWSのSDKやmbedOS共に、一定のフットプリント(ソフトウェアの容量)になるとの認識です。搭載するメモリコストとのトレードオフかと思いますが、こういったSDKを利用するメリットについて教えてください。
末武: Time-to-Marketを優先する、つまり出来るだけ簡単に開発して市場に早期投入するには、クラウドが提供するSDKを利用した方が良いでしょう。アプリケーションが使用できるメモリ領域は減りますが、開発工数を考えるとメリットが出ます。
ただ、メモリリッチな環境でしか開発出来ない、というのでは困ります。開発者がスキルを持っていれば、SDKなどの高級なツールを使わずに、サンプルコードをやりくりして、作り込むこともできます。例えば、ModusToolboxでは、ローレベルなMQTTのサンプルコードも用意しているので、こちらをベースに開発してもらうこともできます。
このように、柔軟なシステム設計をお客様に提供しています。
製品開発を支援する様々なサポート
松本: 一般的にIoTデバイスの開発は、クラウドとの通信からOS、ドライバー周りまで、全てわかるエンジニアがいれば開発出来そうですが、なかなか難しい印象もあります。QAサイトなどのコミュニティは用意されているのでしょうか?

末武: はい、専用のコミュニティサイトをオープンしました。例えば、サーモスタットの応用例なども載せているので、そちらを参考に開発を進めていただくこともできます。コミュニティ上でのQAも受け付けています。
小泉: 極端な例ですが、サーモスタットを作りたいけど、ハードウェアなど中身が分からない、という人からの質問もOKなのでしょうか。
末武: Web上にも情報を載せているので、アプリケーションがシンプルであれば、そちらが参考になります。複雑なアプリケーションや、新規性が高いものは、営業経由でご相談いただくことが多いです。
先ほどお話にあった、スタートアップ系の企業だと、ハードウェア周りの知識も持たれていると思うので、コミュニティに投げてもらっても良いですし、もちろん、営業とコンタクトして、というルートもあります。
また、誰でもフリーで統合開発環境(ModusToolbox)がダウンロードでます。ウェブサイトから直接開発キットの購入も可能なので、まずは気軽に触ってみて、ということもできます。
このように様々なアクセスを用意して、お客様の開発を支援していきたいと考えています。
要件に合わせてスケーラブルに選択できる開発キット
小泉: 開発キットも用意されているのですか?

寺島: はい、4つの開発キットを用意しています。
左側2つの違いは、搭載する無線モジュールの違いです。一番左は超低消費電力かつ、2.4GHz/5.0GHzデュアルバンド対応、802.11acフレンドリーな無線モジュールになります。左から二つ目は、2.4GHz、802.11nまで対応しています。マイコンに乗っているMCUは共通ですがメモリサイズが異なります。
中央二つの違いは、セキュリティ機能の有無です。左から二番目は、マイコンにPSoC62が搭載されていますが、こちらには先ほど述べたRoTのようなセキュリティ機能はありません。左から三番目のマイコンにはPSoC64が搭載されていて、RoTに対応しています。無線モジュールは同じです。
一番右のボードは、Azurewaveの認証済みモジュールという位置付けです。
松本: これらのボードはコンパチブルなのでしょうか。例えば、製品開発は左のボードで行って、セキュリティの追加要件などあった場合、開発したソフトウェアをシームレスに右側のボードに持っていけるのでしょうか。
末武: はい、ボードによって、パーツや部品毎に多少の差はありますが、基本的にボード間の互換性を持っています。
ModusToolboxはHAL(ハードウェアアブストラクションレイヤー)という概念を持っています。ModusToolboxのコンフィグレーションから、ボード名を変更し、あるボードで開発済みのソフトウェアイメージをリコンパイルすれば、対象のボード上でソフトウェアが動作します。
例えば、AWS環境と通信するアプリケーションをデバックする際に、通信が暗号化されていると、通信に時間がかかってしまい、効率的ではありません。デバックの段階では、セキュリティ無しのボードを使用して、製品段階でセキュリティありのボードを利用する、といったことも可能です。
IoTビジネスを加速させるIoT-AdvantEdge
小泉: 低消費電力でセキュリティも通信もできて、というのをマイコンレベルで実現しているものはそう多くないと思いますが、特に差別化ポイントがあれば教えてください。
中津浜: はい、スマートウォッチやスマートロックといったIoT製品向けに、HMI、低消費電力、セキュリティ、ワイヤレスといったトータルのソリューションを提供できるのが強みです。また、クラウドとの連携も容易に実装できます。つまり、IoT-AdvantEdgeによって、お客様はエッジにこれらのインテリジェントなシステムを全てコンプリートできる、ということです。
これが、我々の強みと考えています。また、その先の話となりますが、エッジコンピューティングを加速させ、マイコンレベルで、ディープラーニングなどのAIも設計できるようにすることも見据えています。
またさらに、近年では多くの企業がPoC(概念実証)の段階を終え、具体的なビジネス展開を加速しようとしている状況と捉えています。そうした中で、とりあえず簡単に開発出来るマイコンやチップセットを利用する、といった段階から次のステップに進み、しっかりとした品質、セキュリティ、クラウドとの接続が必要、という段階に直面します。
こういったフェーズになると、IoT-AdvantEdgeが検討に上がってくるのではないでしょうか。
今後、ウェビナーも適宜開催していますので、是非、参加してみてください。
小泉: 本日はありがとうございました。
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