近年、IoT技術が加速する中、電子機器が取り扱う情報量が増加していることに加え、データ通信の高速化に伴い、電子機器が発する不要な電磁ノイズが増大する傾向にある。
製品開発の現場では、電子機器を電波暗室内に設置して、発生する電磁ノイズの強度を周波数毎に測定し、EMC(Electromagnetic compatibility)規格で定められた限度値を超えていないかを確認している。
この電磁ノイズ源を特定するためには、さらに近傍で電磁界分析をして要因を特定する必要があったが、操作が煩雑で測定時間が長いという課題があった。また、測定装置が大きくてセットアップに時間がかかり、できあがってもリアルタイムなフィードバックを得るのが困難で、電磁ノイズの特定に1日から数日を要することも少なくないのだという。
こうした中、パナソニック コネクト株式会社と国立大学法人 金沢大学は、共同研究の成果を、2023年8月3日に米国ミシガン州で開催された「EMC+SIPI 2023/2023 IEEE International Symposium on Electromagnetic Compatibility, Signal & Power Integrity」にて、「電磁ノイズの二次元可視化システム開発」を発表した。
また、札幌で開催された電波、電気通信及び電子科学分野の国際学術団体 URSIにおける「第35回国際電波科学連合総会/URSI GASS 2023/35th URSI General Assembly and Scientific Symposium」にて、2023年8月22日、24日に「電界分布の広帯域測定のための積層型メタサーフェスの等価回路解析」「現場における電磁ノイズ可視化に向けた広帯域メタサーフェスの性能評価」を発表した。
今回開発された、2つの共振器を適切に結合させるスタック型メタサーフェス電波吸収体は、パナソニック コネクトの電磁界シミュレーション技術と、金沢大学で開発された、薄板状の電波吸収体に吸収される電波強度から電波の2次元分布を計測する技術が活用されている。
両社共同でプリント基板上に、波長よりも十分に小さい金属パッチの周期構造を2次元平面上に形成し(メタサーフェス)、プリント基板を上下2段にスタックすることで、2つの共振器を適切に結合させるスタック型メタサーフェス電波吸収体を開発した。
また、広い周波数範囲の電磁ノイズを吸収できる性能と、センサの小型化の両立を可能とした電磁ノイズ可視化システムを開発した。
この開発により、A4サイズで幅広い周波数(300 MHz~1.4 GHz)の電磁ノイズをリアルタイムに可視化し、電磁ノイズ発生源を探ることが可能となる。
これにより、製品開発での適用に加え、工場の設備の電磁ノイズによるトラブルや、パワー・エレクトロニクス設備、車載機器、医療機器など、さまざまな現場で発生する課題への分析が容易となる。
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