システムとヒトの協働がテーマとなる時代へ
八子: エッジをインテリジェントにするには、たくさんのデータが必要です。その点はこれまでと同じですが、今後はそのデータからつくったアルゴリズムを、汎用的なモデルとして現場に実装していくことが重要です。毎回、対象のデバイスや設備が変わるたびに使用するモデルが変わるようでは、現場での展開が進みにくくなりますから。
ある程度アルゴリズムとして確立されたものが、インテリジェンスとして動いていく。物流ならば、全体のプロセスから学習した結果を用いて、コンテナを最適化し、ガントリークレーンを最適化し、ヤードクレーンを最適化し、AGVの走行経路を最適化するわけです。
ですから今後は、そうしたエッジインテリジェンスな環境において、では「ヒトは何をするのか」にフォーカスがあたる時代が、数年後にくるのではないかと思いますね。
小泉: 「単純労働から解放される」ということだけではなく、その分、私たちに何ができるのかをもう少し考えていかなければなりませんね。
私たち自身が進化していくというマインドを持たないと、いつまでも古い設備や社会のしくみから脱却できません。1900年代には「馬車から自動車へ」というようなイノベーションはあったものの、ヒトがチェックして、指示して、動かすといったベースのしくみは、実はそこまで変わっていません。そもそも、今のしくみのままでいいのか? もっと考えていかなければなりませんね。

八子: 今後は、やはりどこか1社だけが覇者になるということはなく、インテリジェンスが普及するほど、相互のインテリジェンスがスムースに連携できるかが重要になってきます。そうすると、協創が必要です。1つの会社では完結しません。
小泉: 2018年を見ていると、そうした取り組みは活発になってきていますね。
八子: そうですね。これまで異なるプロトコルで閉じていたようなソリューションにおいても、連携が進んできました。昨年は「(業界別)プラットフォーム元年」と呼んでいましたが、自分たちのプラットフォームで閉じるのではなく、データを外部に開放して新しいアプリケーションをつくるというような取り組みが進んでいます。
小泉: 数年前から八子さんが言われてきたことは着実に進みつつあるような気がします。そして、2019年はついにエッジがかしこくなると。IoTというと「データを吸い上げる」ことだけを指しがちですが、実際にはその逆の方向、「アクチュエート」(現実世界に働きかけること)しないといけません。これは、私も著書などを通して訴えてきたことです。
進展のスピードの問題はあっても、データを取ること自体は当然できるでしょう。問題は、いかにそのデータを使って現実世界にアクチュエートするかです。それが、エッジインテリジェンスによって進んでいくような気がします。
八子: そうですね。2018年の「プラットフォーム元年」など、これまでの予想はどれも外していないはずですから、今回もきっと間違いないでしょう。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。