シェアメディカルのデジタル聴診器
留目:陸上養殖以外では、シェアメディカルさんによる聴診器のデジタル化が面白い取り組みです。
聴診器は医療現場において使用頻度が多く、幅広い診療科で使われているため、非常にデータ化しやすく使い勝手が良いものです。

つまり、聴診器は医療プラットフォームを考える際、「キラーアプリケーション」になりうるものです。医療のデータを活用したプラットフォームを作りたい方を繋げ、医療のデジタル化という産業の発展にも繋げたいと考えております。
小泉:プラットフォーム化をすすめ、産業を発展させるには「目利き」が重要だと思います。その点はどうされるのですか。
留目:「目利き」という点では、みなさんある程度成長分野を理解していると思うので、そこにある、キラーアプリケーションや、プラットフォームがクロスするトリガーを見つけてあげることが大事だと思っています。
小泉:なるほど。個人的な見解ですが、物流業界でのプラットフォーム化がなかなか進まないので、誰か手を出してほしいです。
留目:物流の分野は、なかなか難しそうですね。
まずは小さめのものから始めてプロセスを固めていきたい、と思っています。そして、徐々に大きい分野へスケールアップしていければと考えています。
小泉:そういう意味ではキャビアの陸上養殖などはちょうど良さそうですね。
留目:はい。陸上養殖は世界でも日本が戦うことができる要素をもっているのが面白い点です。
しかも、実際に世界に通用する製品が出てきていることがすごいです。
陸上養殖によって、初めて水質や水温、餌、交配などをコントロール下において改善のサイクルが機能するようになりました。まさにテクノロジーの発展がドライバーになっているのです。
社会にインパクトを与えるサービスを求めて
小泉:シリコンバレー文化もあるのか、スタートアップの話はデジタルありきで動いてしまうことが多いのですが、「何をやりたいか」は重要ですよね。
留目:私もレノボの時から新規事業に携わっていましたが、新産業を作り出したとまでは言えません。またHIZZLEという自分の会社でスタートアップ企業のサポートをしていますが、人材の流動性の課題等を感じています。
その結果、「ビジネスプラットフォーム」と「ビジネスアプリケーション」の双方をもって産業全体を見ていかなければならないという結論に至りました。
小泉:留目さんがこういったことに行き着いた経緯を詳しく伺っても良いですか。
留目:最初の就職先は商社で、海外で発電プラントを建設するという仕事でした。当時から社会にインパクトを与える仕事をしたいとずっと思っていて、その後戦略コンサルティングや事業会社でのマーケティングを経てレノボでは日本の社長やグローバルでM&Aなどやらせてもらいました。
同時にスタートアップが社会へ大きな価値を生み出すのではないかということで、スタートアップ企業へのサポートやエンジェル投資などを始めました。
今も探求中ではありますが、社会へ大きなインパクトや価値を提供できるものがこれなのではということで本サービスに至ります。
必ずしもアメリカ式のスタートアップ・エコシステムがベストなものであるとは思っていません。このエコシステムによって産業が活性化しダイナミックにGDPが成長していますが、一方で一部の投資家と起業家に富が集中し格差社会が生まれてしまっているのも事実です。
一方で日本では多くの人が良いアイデアを持っているのに、企業に戻ると少額の予算と限定されたスコープで新規事業の計画を立てていたりします。せっかく未来を良くする想像力を持っているのであれば、それを実現する仕組みがあっても良いのでは、という思いが、SUNDREDを立ち上げる発端になっています。
一般社団法人Japan Innovation Networkの紺野登さんや西口尚宏さんとも話していますが、実現すべき未来のデザインを共有することからスタートする新しい価値創造の仕組みを実際の取り組みを通じて磨き上げ、グローバルにも展開していきたいと考えています。
今あるアクセラレータの仕組みは大体アメリカから来ていますが、一部の人が独り勝ちするようなものではなく、もっと社会起点で、中小企業や個人も参加できるエコシステムがあると良いと思っています。
小泉:すごく道のりの険しそうな話ですね。
留目:それが自分自身のチャレンジです。ですから、小さくやりやすいところから始めて仲間づくりをして、自分も知見を貯めていきながらやっていきたいと思っています。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。