先週行われたワイヤレスジャパン2015で、「無線モジュールのバッテリーレス化」という気になるメッセージを見つけた。
IoT(モノのインターネット)で、「モノ」の方には低消費電力な無線通信技術が必須となるが、低消費電力とはいえ充電が必要になる。もしくは電池が切れれば交換が必要になるが、このブースでは「無線モジュールのバッテリーレス化」とある。これは一体どういうことなのか、コーンズテクノロジー株式会社の妹尾さんと池田さんにお話を伺った。
ー無線モジュールのバッテリーレス化にすごく興味があるのですが、どういったものなのか教えていただけますか?
妹尾さん(以下、妹尾)「こちらの発電ウェアでご説明させていただきます。」


妹尾「こちらの発電ウェアは圧電素子というものを使っており、ひずみを発生させて発電するものを、靴の中敷きとヒザの裏に仕込んであります。

歩けば曲がりますので、ひずみが発生して発電します。発電した電力を何に使っているかというと、無線のモジュール、IoTでよく使われていると思いますが、BluetoothのLE(Low Energy)に対して電力を与えてあげています。動けば無線モジュールに電力供給できるので、半永久的にBluetooth通信ができ続けるということになります。」
ーどのくらいの電力が発生するものですか?
妹尾「この動きで今、2mW(ミリワット)です」
ー2mWというとどのくらいなのでしょうか?
妹尾「わかりやすく言うと、Bluetooth Low Energyが動くくらいですね。現在は、充電できるような回路を開発中です。2次電池というものになるのですが、それができると軽く走って電力をためてしまえば、あとは多少止まってもBluetoothには送り続けられるようになります。
弊社は商社なのですが、実際にこれを作っているのは福島県にあるムネカタ株式会社さん、さらに拓殖大学の前山研究室と3社で共同研究を行っています。」
ー実用化としてはどのようものを想定していらっしゃるのですか?
妹尾「あくまでもこの発電ウェアはデモなのですが、センサーなどと組み合わせて、この技術をインフラ的なところに使いたいと思っています。それがこちらの社会インフラ・モニタリングシステムになります。」

妹尾「これは、トンネルや地質調査などで、ひずみが起こることで電気が発生したものを、センシングできるものになります。ボルトのゆるみもわかりますので、老朽化している建物などにも適しています。」
ーなるほど。ひずんだ時だけ電気が発生するわけですね。
池田さん(以下、池田)「はい。こちらがゆるくて、こちらがしっかり止まってるボルトなのですが、出力電圧に差が出るようになっています。ゆるんでる方は電圧が出なくなります。」
ー橋などは老朽化してるものも多いですよね。
妹尾「日本で老朽化している橋は多いそうです。社会インフラ・モニタリングシステムも発電ウェア同様、バッテリーがいりません。ムネカタの社スプレーコーティングを塗っていて、そこから電極を取ってモニタリングしています。取ったデータというのが、こちらはBluetoothではなくて、ラピスセミコンダクタ社さんからご提供いただいた920MHzの無線モジュールで飛ばしています。
この技術をわかりやすく見せたものが、先ほどの発電ウェアになりますが、こちらの社会インフラ・モニタリングシステムの方で我々は勝負していきます。」
ー実際にこの技術が導入されている場所はありますか?
妹尾「まだ、ありません。」
ー話が進んでいるところはありますか?
妹尾「かなりあります。詳細は申し上げられないですが…」
ーそうですよね、ありがとうございました。
「無線モジュールのバッテリーレス化」ができる理由は、ひずみを使うことで発電できるから、ということだった。
しかもバッテリーがいらず、スプレーコーティングするだけでモニタリングできるということなので、かなり引き合いがあるというのも頷ける。コーティングについては鉄はもちろん、透明ガラスや布なども可能だが、不導体であればコーティング前に電極が必要になる。
小さな電力の発電ではあるが、インフラや工場の点検などでは大きな需要があり、アイディア次第ではさらに様々な分野へ広がるだろう。
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