クルマを利用する人は、「タイムズ」という駐車場を利用したことがあるのではないか。そこで、カーシェアリングサービスを提供しているのがパーク24グループだ。
タイムズのカーシェアリングサービス「タイムズカープラス」を利用したことがあれば説明するまでもないが、レンタカーのように人がいるカウンターで受付などを行う必要もなく、インターネットで予約すれば簡単にタイムズの駐車場にあるクルマを借りることができるというサービスだ。
そのパーク24グループがこのIoT時代の到来を受け、どのような事を考えサービスを行い、どのような未来を描いているのかについて知りたくインタビューを実施した。
今回は、駐車場運営やカーシェアリングを担う タイムズ24株式会社 タイムズカープラス事業部 企画部グループ グループリーダー 亀田 真隆氏、グループ統括・経営企画/管理を行う持ち株会社 パーク24株式会社 業務推進本部 技術開発部 事業システムグループ 課長代理 木都老 宏亮氏、同社 企画管理本部 グループ企画部 課長代理 小田原 真琴氏の3名に話を伺った。

-タイムズのカーシェアサービスについて教えてください。
亀田氏(以下、亀田): 現状、約7,500カ所に約13,000台の車両があり、会員数はもうすぐ60万人になります。会員は新規で月間2万人ほど増えています。
2020年までに30,000台にすることを目標にしており、現状から倍以上増やすことでより使いやすいサービスを追求していきたいと考えています。カーシェアリングサービスは、お客様の都合のいい場所でリーズナブルに借りられるというのが一番望ましいと思いますので、より借りやすい状態を作るためにステーションの拡大をまずサービスの基本として考えています。
このサービスは、1枚の会員カードがあれば、日本中の10,000台以上のクルマが使える、10,000台以上のクルマがポケットに入っているという考え方なので、自宅、出先、旅行先、などどこでも使えるサービスということで、新幹線などの鉄道の日本中の駅や空港と連携して2次交通としての役割を担いたいと考えています。
マイカーの場合、自分が購入した車しか乗れませんが、「今日何着ていこう?」という、服を選ぶような感覚で車種やカラーを選んで楽しく移動できるというのが、カーシェアリングの魅力だと思います。
また、このサービスは、24時間無人で使えるというのがポイントになります。朝早い時間の出発や、夜遅い時間の返却を希望される場合や、急遽出掛ける用件ができた場合など、カーシェアリングがご利用いただきやすいと思います。お客様は、用途や時間によってレンタカーとカーシェアリングを使い分けられているようです。

-車の中はどのくらいデジタル化が進んでいるのでしょうか。
木都老氏(以下、木都老): 基本的には当社で開発している専用車載器をクルマに積んで、そことセンター間で通信をして情報のやりとりをしています。例えば、クルマのカギを開けるといった命令を送ったり、クルマの状況を通知させるための命令を送ることができる機器と、通信システムを確立しています。
-車載器でできることを教えてください。
木都老: 基本的にはクルマの情報を取ることができます。これ以外にも、独自で開発した給油を管理するシステムを構築していますので、給油していただいたことを感知し、独自のポイントプログラムにおいて、ポイントを付与することなどもできます。
また、すべてのクルマがつながっているので、「貸し出し中」や「待機中」などのステータスも取得できるので、今何台稼働しているのかなどがわかります。

-先のことを考えると、そういう仕組みを応用して、すごいクラウドサービスができそうな気がしますね。
亀田: そうですね、そこから発展するサービスもあると思いますので、常々考えています。
クルマに乗っている間は、色々なコミュニケーションができると思っていますので、最終的にはナイトライダーぐらいのコミュニケーションができるのではないかと考えています。また、移動しなくてもその空間の中で楽しめる可能性もあるかもしれません。
実際、法人様に使っていただいている例で、喫茶店の場合、PC作業や電話がしずらいということがあり、クルマに乗って移動するのではなく、オフィスとして使われるという方もいらっしゃいます。
-クルマの中をセンシングできるというのは以前から言われていますが、実際にセンシングし活用している事例はあまり聞いたことがありません。
亀田: カーシェアリング事業自体、もともと市場がないところでやってきたのですが、事業を継続していくには、サービスの向上とコストを抑えることが大事になります。
先ほどの、給油をセンシングする例の場合、無人サービスですので、以前は給油したら「電話してください」という仕組みだったのです。しかし、利用数が増えるたびにコンタクトセンターの入電が増えるという課題がでてきました。そこで、この仕組みを自動にできないか?という事からシステムを開発したのです。
また、目的地設定というサービスも同様で、15分単位で課金されてしまう中で、慣れないクルマと慣れないカーナビを使うと、設定しているだけで時間がどんどん過ぎてしまうので、事前にWEBで目的地を設定していただくと、エンジンをかけた時には既にカーナビの行先が設定されているという仕組みをつくりました。こうやってお客様のストレスをできるだけ失くすようなサービス改善を日々行っています。
これらの例でみるように、お客様のニーズを見て、インターネットを活用し少しずつ進化している状況です。コンタクトセンターもシステムも全て内製でやっていますので、情報共有含めて、サービス改善のスピードも圧倒的に早いです。

-今後自動運転との絡みはどのように考えていますか。
小田原氏(以下、小田原) :まだそこまでは具体的には考えていません。ZMPさんとの「駐車場内で自動運転による駐車を試す」という取り組みについても、現状では自動運転の場合、どこまでが誰の責任になるのかという点が明確でない、という問題があります。そこで、私有地である駐車場であればリスクが軽減できるということから試してみたのです。クルマとITと駐車場、それぞれが必要な機能をいかに安価に実現できるかを考え、実証実験を行いました。
※参照 ZMPとパーク24、駐車場における自動駐車の共同実証実験
亀田: 駐車する時に事故を起こされる方が多く、駐車が苦手だから運転をしたくないという方も多くいらっしゃいます。より多くの方に「クルマに乗ると豊かだな、便利だな」と感じていただくために、自動駐車などを含めたストレスのない状態を作るというのは非常に意義のあることだと思います。
-実証実験の結果はどうだったのでしょうか。
小田原 :弊社の駐車場でZMPさんのクルマを使って数回実験をした段階ですので、これから業界動向などを鑑みどうしようかと考えています。
亀田: カーシェアリングでいうと、車両をどんどん投入していくにあたり場所が必要になってきます。しかし置ける場所が無尽蔵にあるわけではありませんので、狭小のスペースでも最大限クルマを停められるようにできるというのも、自動駐車のメリットのひとつといえます。
-狭い日本で駐車スペースを増やせるという、現実味のある解決策なりそうですね。
亀田: 私たちはトヨタさんと超小型電気自動車を活用したワンウェイ型のサービスを江東区、中央区、港区エリアを中心に展開しているのですが、一番コストがかかるのがフェリーなのです。フェリーというのは、クルマをA地点からB地点に戻してあげることですが、どうしても駐車場によって台数が偏ってしまうので、ニーズが多い場所にクルマを戻す必要があります。これには裏側で人件費がかかります。そこで、可能性だけの話だけでいうと、人が乘らなくても自動でフェリーができるとなると、ニーズがあるところにクルマを移動させることができるかもしれません。
-トヨタさんとの取り組みの内容を、もう少し詳しく聞かせてください。
亀田: 私たちのスペースと会員、トヨタさんの仕組みとクルマを使って、都内約30カ所60車室、30台のクルマで、乗り捨てサービスを展開しています。去年の4月にはじめました。
我々は、もともと何かを24時間、無人で動かすのが得意な会社です。タイムズ駐車場で培ったシステム、メンテナンス、緊急対応のスタッフ、24時間体制のコンタクトセンターなどのリソースを持っています。土地の上に置くものが駐車機器であれ、自販機であれ、カーシェアリングの車両であれ、裏側でオペレートする仕組みを構築し、運用するのが一番大変なのです。
我々は東京広域にそのような基盤を持っていますので、トヨタさんと一緒にやらせていただいています。

-IoTは24時間モノがインターネットに繋がっていくので、そういう体制必要ですね。
亀田: もとから持っている資産をうまく発展させていますので、それらなしでは難しかったと思います。
パーク24グループのシステムを総称して「TONIC(トニック)」というのですが、カーシェアリングのクルマを配備するときも、駐車場の稼働情報を全て持っていますので、この時間に空いている空いていないということが時間単位でわかります。
もともとは駐車場の満空情報など、駐車場管理のためのものだったのですが、展開するサービスが増えていくにあたってレンタカーなども含め、全体を動かすものに発展しました。
-これから先、未来に向かってどのような事を考えているのでしょうか?
亀田: 個人的な意見になりますが、ナイトライダーのようなコミュニケーションは一台一台のクルマで作ると相当なコストになりますが、我々のように1万台3万台という規模になっていけば実現可能かもしれません。
もっとインタラクティブなコミュニケーションをするために、ゲーム感覚でクルマに乘っていただきたいと思っています。例えば、今ある仕組みであれば、ドライブチェックインといって「その施設に行くと電子クーポンをあげます」というサービスのように楽しく出かけていただけるコミュニケーションを強化していき、サービスレベルを向上させていきたいです。
新しいことをお客様とも一緒に作っていく、一緒に作っていかないとどんどんつまらなくなってしまいます。
木都老: 私はシステム側を見ていますが、よりわかりやすく簡潔に操作ができるシステムを作っていきたいと思います。ストレスなく予約して、楽しんでいただきたいです。

-本日はありがとうございました。
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