機能を限定したことで、短期間で導入可能に
小泉: 詳細について教えてください。
荏原: 『MESOD』は、一定のKPIを出すためのアウトプットから見たフォーマットを定義し、なるべく短期間で導入していただくことをコンセプトとしています。
これまでのMES開発で一番工数がかかっていたのが、それぞれ全然違うフォーマットの機械のデータをとってくることでした。本来のMESですと生産スケジューリングや、製造指示まで手がけますが、今回その機能はバサっと切り、こちらが指定したフォーマットの定義データをいただく仕様にしています。
例えば、設備稼働モニタリングは、ラインと工場全体で俯瞰的に状況が把握できる機能です。設備単体の可視化だけでなく、工程間のつながりを見ることができます。過去の設備の停止状況(時間/回数)やチョコ停理由なども確認でき、4M変化点も一つの画面で確認できます。
小泉: 例えば、ファナックや三菱のデータフォーマットが違うということなのだと思いますが、それは『MESOD』側から定義するのでしょうか。
荏原: そうです。ポイントとしてはデータのフォーマットをCSVと決めています。例として、射出成形機であれば、ショットの時間、圧力数、回数などをCSVに入れてください、というCSVの項目定義を作っています。これはお客さまのご要望からすると、50~60%のレベルでしかないのですが、導入のスピードとコストを優先することに観点をおいています。今いくつかの企業と協業し、『MESOD』のデータ連携先を広げていきます。
小泉: うまくいくものですか?
荏原: 実案件でいうと、SIゼロということはありませんが、アウトプットが明確なので、やる意味を認識してもらいやすいです。あるデータなのか、ないデータなのかがはっきりわかるので、「まずは使えるデータから初めて、次は取れていなかったこのデータを取ろう」となります。本来だと、あるべき論で要件定義からはじまりますよね。今まで私たちもそうしていましたが、それをやめましょう、ということです。
小泉: CSVって新しいですよね。コントローラーも産業機械もCSVではき出す機能があるのでしょうか。
荏原: 割り切りました。三菱やオムロンなどの新しい制御装置にはCSVではき出す機能があります。他には、コントローラーからデータを抜くSCADAメーカーもそういった機能を用意しています。
データ連携アライアンスの第一弾としては、東洋ビジネスエンジニアリングさんの生産管理「mcframe」との連携を準備していますし、それ以外にもスケジューラパッケージのメーカーさんや、SCADAメーカーさんとの連携も準備しています。
小泉: よく交渉できましたね。
荏原: タイミングがよかったと思います。日本の場合、すべてのプロトコルが別ですし、皆さんが思った以上に「設備から取ったデータをどうするか?」といった課題感を持っていらっしゃったのです。
例えば、会計だと国際会計基準があって、その仕組みとなるERPがありますが、生産実行という分野ではそういったものがありません。ISA95という規格を見てみましたが、今あるものを集めてノウハウ集になっているだけので、標準的な制度として「やらなければいけない外部要因」がないと、なかなか難しいと思っています。

中央:ウイングアーク1st株式会社 営業・ソリューション本部 製造ストラテジックビジネスユニット ユニット長 荏原 光誠氏
右:ウイングアークの公式マスコットキャラクター「わっとちゃん」
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