第1章-3節の要点②:30ページにわたる事例集とシステム思考
第3節には、「Connected Industries」の先進事例が、「生み出す、手に入れる」「移動する」「健康を維持する、生涯活動する」「暮らす」という、「生活者の視点」にもとづいて分類され、詳しく紹介されています。その目的について、白書概要の19ページには次のように書かれています。
「Connected Industries」(CI)推進の重要性を経営者に訴えるため、経営者が主導的にビジネスモデル変革を図る取組や企業を超えた連携の取組等を中心に、国内外の先進事例を整理・紹介
ここでも、4つの危機感のメッセージは一貫していることがわかります。事例は本文において30ページにわたって紹介されています(本文p.131-161)。

一方、「Connected Industries」を実現するためには、まず私たち自身のマインドが変わる必要があるといいます。具体的には、「自前主義」を脱却し、「システム思考」を持つ必要があるということです。
製造業におけるシステム思考の例として、「工場の中での狭い最適化の話として捉えるのではなく、バリューチェーン全体に及ぶ全体最適化をデジタル技術等を活用してシステム化」することと白書では説明されています。

ここでの「部分最適」とは何でしょうか。白書では事例を交えて紹介しています。たとえば、次の「資金不足による部分最適」という事例です(白書概要p.23、本文p.170より)。
国内需要増が見込めない中での設備のリプレース投資⇒ 部分最適になりがち
・少子高齢化が進み国内需要増が見込めない中、設備投資は、既存設備を少しずつ最新のものに入れ替える形になりがち。
・多くの場合、継続的に操業も行う中での入れ替えとなり、既存設備との連結も必要な中、抜本的な大幅変更を行うことが難しい。
・結果として、本来目指したい最新技術を存分に活用した全体最適なシステムをつくることが困難で、既存の設備から部分部分を新しくしたものをつなげた部分最適なものとなりがち。
需要増が見込める新興国等⇒ 全体最適なシステム導入が行いやすい
・他方、大幅な需要増が見込める新興国等の方が、大規模投資により最先端の設備を入れることが可能であり、最新技術を活用した本来目指したい全体最適なシステムの構築が行いやすい。
システム思考人材の抜本的な解決に向けては、地道な人材育成の取り組みが重要であり、その議論は白書の第2章へとつながっていきます。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。