「現場力」を再構築する「経営力」の重要性
上のグラフから製造業において、最も重視する人材確保対策は、現在と今後を比べると、ロボットやIoT等のデジタルツールの利活用の増加が最も顕著であることがわかる。
また、人事制度の抜本的見直しや待遇強化、テクノロジーを活用した人材マネジメントの効率化も増加傾向が強い。
ツール活用に際しては、単に人による作業の自動化等を図るのではなく、業務全体のあり方も必要に応じて見直す等、人の潜在能力とツール活用効果の最大化が図られるよう、業務の全体最適化を図ることが重要である。
ツール活用により、例えば人は単純反復作業や身体的高負担業務等から解放され、より高付加価値の業務への重点化などが期待されている。
しかし活用ありきではなく、まず、経営課題から導き出される活用目的や人材の活かし方を明確にした上で、人とデジタルツールとの組み合わせ方をどう設計していくかが対策の鍵なのだ。
デジタル人材については殆どの企業が質・量ともに充足できていない中、最も力を入れている取組としては「中途採用による確保」が最多で、「外部の専門家派遣サービスの活用」「社内人材の再教育等による確保」等が続く。
当面は即戦力である中途採用に重きを置きつつ、中長期的には自社人材の専門性を強化を同時に図る意向である。
課題としては「採用や長期雇用に繋がりにくい」「社員が社内外の研修を受講する時間的余裕がない」「社内に、指導できる知見を持った人材がいない」等である。
大別すると、外部からデジタル人材をいかに確保するか、既存社員にデジタル分野に関するノウハウをいかに教育するかの2つの課題があるといえる。
後者については、教える側の問題(人材確保)及び、教えられる側の問題(日常業務の中で教育のための時間をいかに確保するか)といった課題が存在しているようだ。
(2018年ものづくり白書「概要」より抜粋)
INSIGHT
ものづくり白書では、人材不足を教育で補おうとするも、簡単にはいかないという結論になっている。いまや人材不足は日本以外の国でも起きているが、欧米企業ではどう考えているのか。
欧米企業と日本企業では、製造業におけるデジタルツールの活用方法が、「ツールの使い方」や「狙いどころ」という点で違うと感じている。
例えば、欧米企業では、熟練技術者のノウハウをカメラやセンサーで全てデータ化して、これを「ロボットや代替機械による置き換えで全部自動化を目指したアプローチ」を考える。
一方で、日本企業では熟練技術者のノウハウを、カメラやセンサーでデータ化してこれを「タブレットなどで図表で見える化」します。
(例:アナログからデジタルへの取り組み、匠の技術継承、出典:IVI)
この見える化した図表や数値を目標のモデルとして、育成対象となっている技術者が自己研鑽を積むための客観的な「モノサシ」として利用しているのだ。
つまり、欧米はデジタルツールで、「人からロボットや機械に置き換える」アプローチ。日本はデジタルツールで、人から人へ「ノウハウを継承する育成を促進する」アプローチとなる。
同じデジタルツールを使っていても、「人を置き換える欧米流」と「人と機械が協働するが日本流」の違いがあるようだ。
(IoTNEWS製造領域エバンジェリスト 鍋野)
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。