今年も、AWS Summit Tokyoが6月1日(水)~6月3日(金)の3日間にわたり東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪を会場に開催された。
「AWS Summit」は世界中で開催されており、AWSに関連した様々な事例や最新技術、その活用方法を知ることができるアマゾンウェブサービス主催のカンファレンスだ。特に今回の「AWS Summit Tokyo 2016」は、昨年よりもさらに規模を拡大し3日間で開催され世界最大規模となった。
初日は、抽選制でエンタープライズ企業向けの「Enterprise Day」が開催され、AWSクラウドを利用している企業の事例を通して、エンタープライズ企業が抱える課題である、業務効率化、競争力、成長力、国際展開、開発迅速化、組織改革といった課題解決にAWSクラウドがどのように活用されているかについて、アマゾンからだけでなく、実際にAWSを導入している大手企業を含む9つのセッションが行われた。
2日目、3日目は様々な企業規模に向けた最新のクラウド導入事例や AWS クラウドの最新テクノロジートレンドをご紹介する「General Conference」と、デベロッパーのための様々な技術・ビジネスセッション、アプリケーション開発やデプロイ環境に特化したセッションやハンズオンといった「Developers Conference」が開催された。
そのほかAWSソリューションパートナーによる展示や、AWSを活用した先端事例を紹介した「IoTパビリオンコーナー」が設置され、数十のソリューションやデモンストレーションを会場のあちらこちらで見ることができた。
実際「IoTパビリオンコーナー」で見ることができた、AWS上でソリューションを構築してサービス展開している実例をいくつか紹介する。
IoT安全運転ソリューション
オプテックス社は、電池式であり配線不要なため、簡単に車に設置できるセーフメータを活用したソリューション事例を展示していた。

同社の旧型のセーフメータは本体に画面をもち、その場でのみ安全運転情報が確認ができるものであったが、今回展示されていた新型のセーフメーターは、スマートフォンなどを中継してクラウドでデータ管理をすることできるようになっており、本体には小さな画面のみ付いていて、ゆっくり発進/停止した回数の連続最高記録と、現在の記録のみが見ることができ、この記録を伸ばすことを意識し発進とブレーキに気を使い安全運転になるという。
このスマートメータは加速度センサーだけで急ブレーキや急発進などをセンシングでき、これらの情報をクラウドで一元管理することで、例えば宅配事業者等ではドライバーごとの安全運転度合いがPC画面やスマホ等で比較することができる。
現在、日本宅配事業推進協会が推進する、荷主とドライバーをつなげる「物流マッチングサイト」のドライバー評価をこの仕組みでできるよう進めているという。
さらには、Amazon Prime Nowの宅配カーにもこのセーフメータを設置しドライバーの安全運転度を計測する実証実験をすることが決まっているとのことだ。
インフラ老朽化監視ソリューション
アクロクエストテクノロジー社は、自社の「Torrentio」というノンプログラムでリアルタイムに大量のデータ処理、整形を行えるIoTアプリケーションプラットフォームと、マクニカ社の金属のひずみやその環境の温度や湿度を計測できるセンサーを組み合わせ、おもちゃの鉄道での計測を行うデモンストレーションを行っていた。

デモンストレーションでは測定値をリアルタイムに可視化されているものであったが、実際は、センシングのばらつきによる誤検知をせずに、測定データから大きく外れたり変化率が大きくなっていくことを自動的に学習し、障害発生前の予兆を検知したり、周期性の崩れなどを検知することができるとのことだ。
「Torrentio」では、ビジュアルエディタと呼ばれる設定画面があり、ノンプログラムで直感的にコンポーネントを組み合わせることで簡単かつ自由に設定が行えるようにこだわりUIを実現していると開発者からの紹介があった。

スマートホームIoTソリューション
ピクセラ社は、スマートホームIoTソリューションとして、家庭内に置く「センサー」と「ゲートウェイ機器」、「IoTサーバ」、「スマートフォンアプリ」一式の利用を、月額500円から始めることができる「Conteホームサービス」の展示を行っていた。
「Conteホームサービス」は、AWS Summitの直前の5月31日から始まったばかりだ。このサービスでは、第一弾として、ドアの開閉を検知することができる「開閉センサー」と、温度や湿度、照度、UV、振動、モーションを検知できる「マルチセンサー」の提供を開始した。
今後は、単体の「UVセンサー」や「ネットワークカメラ」、「体組成計」、「血圧計」などのセンサーの追加、赤外線を搭載し家庭機器をコントロールもできる「IR搭載マルチセンサー」、「サイレン」などのアクチュエータもラインナップしていくとのことだ。
本サービスでは「シナリオ」と呼ばれる、センサーごとのアクション(スマホへの通知など)は、専用スマートフォンアプリで簡単に自由に設定ができるとのことだ。今後はセンサー同志の連携によるアクションなども充実させていくという。
作業者のヘルスケアソリューション
グローバルワイズ社は、工場内の作業員のヘルスケアソリューションを紹介していた。
工場で働く作業員には「BLEビーコン」「活動量計」「心拍センサ」を搭載したウェアラブル端末をつけてもらう。
ウェアラブル端末に搭載されたビーコンは、工場内の各地に設置されたビーコン検知機器で作業者がどのあたりで作業をしているかを把握するとともに、活動量計情報を収集し、自社の開発するMCM装置(製造機器メーカーに依存することなく各種信号データの収集が可能)からAWSクラウドで収集する。
クラウドでは作業者の状況が常に管理されており、万が一作業者に異常があった場合は自動的に検知を行い、現場に設置したpepperが異常を周囲に通知するとともに、異常と判断された作業者の場所までpepperが自動的に駆けつけることができるとのことだ。(実際の移動は無人搬送車と連携)
pepperを通じて、カメラで状況を確認したり通話をすることで、異常発生時の迅速な初期動作をおこなうことができるとのことだ。
実際、本ソリューションはプレス工場に導入されているとのことだ。
製造業向け AWS IoT Smart Factory
データクック社は、日本電産の現場で実際に利用されているソリューションを展示していた。
通常このような工場にネットワーク設備を後から構築し情報をクラウドに上げることはほぼ不可能だ。
しかしこの事例ではサーモグラフィの取得するデータをWi-Fi機能付きSDカードを挿入した制御装置で収集し、マルチホップ可能な無線LANルーターを経由してIoTゲートウェイからソラコムの「SORACOM Air」でインターネット回線を使わずにクラウドまでセキュアに送信し、データクックの「GreenForest」でデータの管理及び機械学習・解析を行い、異常値を検出した場合、さらにクラウドからまた工場内のパトランプにフィードバックし、実際の生産性の向上も実現しているとのことだ。
この事例の組み合わせを利用すれば、どんな環境の工場でも比較的簡単、スピーディーに、工場⇒クラウド⇒工場が実現でき、生産性向上への取り組みができる。

工場設備の「つながる化」ソリューション
東洋ビジネスエンジニアリングは、設備管理ソリューション「MCFrame SIGNAL CHAIN」とパトライトの信号状態を外部に送信できる「Airgrid」とそのデータを工場からクラウドに送信するために設置するIoTゲートウェイ「Armadillo-IoT」を組み合わせた事例を展示していた。
パトライトやそのほかのセンサで取得した工場の生産ラインからの稼働状況のデータををクラウドで集積し、異常を感知した場合メールでの通知や現場へのアラートを送る環境をスピーディーに構築できる。
ここでも、ネットワークインフラのない工場に大掛かりな工事の必要がなくても、セキュアにクラウドへデータを送信することができるIoTゲートウェイとソラコムのSORACOM Airの組み合わせが利用されていた。
工場のように後からネットワーク環境を構築することが困難な環境でデータをセキュアに収集する場合SORACOMは欠かせないということだ。そしてその収集・管理先が同じAWSであれば、SORACOM Canelというサービスが利用でき、よりセキュアな閉域網が構築できる。
【関連リンク】
・Amazon Web Service
・AWS Summit Tokyo 2016
・ソラコム
・オプテックス「Optex IoT」
・アクロクエストテクノロジー「torrentio」
・グローバルワイズ
・ピクセラ Conte
・データクック「GreenForest」
・東洋ビジネスエンジニアリング MCFrame
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1975年生まれ。株式会社アールジーン 取締役 / チーフコンサルタント。おサイフケータイの登場より数々のおサイフケータイのサービスの立ち上げに携わる。2005年に株式会社アールジーンを創業後は、AIを活用した医療関連サービス、BtoBtoC向け人工知能エンジン事業、事業会社のDXに関する事業立ち上げ支援やアドバイス、既存事業の業務プロセスを可視化、DXを支援するコンサルテーションを行っている。