アクセンチュアの最新調査によると、金融機関の半数以上が、主に顧客からの期待値の高まり、デジタルがもたらす破壊的な創造、コスト削減圧力や新たな規制に対応するため、今後1年間で変革への投資を拡大する予定であることが明らかとなった。また、日本の金融機関においても欧州、アジア、北米と同様の傾向が見られた。
今回の調査は、欧州、アジア、北米の金融機関(銀行・保険分野)の経営幹部約800名を対象に実施された。同調査結果によると、回答者の53%(日本では43%)が今後1年間における変革への投資を拡大する予定だと答え、37%が現在の投資レベルを維持する予定だと回答した。
アクセンチュアの金融サービス本部で人材・組織領域の変革支援コンサルティングを務めるアンディ・ヤング氏(Andy Young)は次のように述べている。
「大半の金融機関は、破壊的な創造が今後数年で勢いを増すと想定しています。デジタル化された社会において、競争力を維持するためには、迅速かつ継続的に変化する能力(チェンジ・ケイパビリティ)が求められることを、企業は理解しています。だからこそ、多くの企業が、『アジャイル・チェンジ(機動的な組織への変革)』手法を適用して、株主の投資回収への期待に1年以内に応えようとしているのです。」
今回の調査結果によると、金融機関が投資を進めるなかで最も重要視している変革は、より良い顧客サービスと顧客体験の提供、デジタル技術、およびチャネルの適用、効率性とコスト管理、リスクと規制遵守に関するものだという。
金融業界では、ビッグデータやアナリティクス、モバイル、IoT、クラウド コンピューティングなど、幅広いデジタル技術の取り込みを目指しているが、同調査によると、こうした変革への投資によるメリットを得られるかどうかは企業によって異なり、レガシーシステムの運用状況や分散データの存在、組織の複雑さなどが成功を阻む要因となっているようだ。
アクセンチュアの金融サービス本部人材・組織マネジメントコンサルティング部門の責任者を務めるアンドリュー・ウルフ氏(Andrew Woolf)は次のように述べている。
「ほとんどの金融機関は、顧客の期待に応え、新たな競合企業に対抗するため、革新的なデジタル技術を取り入れた新しいビジネスモデルや経営モデルの導入を検討しています。変革に向けた強力なリーダーシップと、機動的に対応する労働力を有する企業は競争力が高まり、そうでない企業はますます苦戦を強いられることになるでしょう。」
また、アンディ・ヤング氏(Andy Young)は次のように付け加えている。
「10年ほど前に始まった金融危機は、長期にわたる業界変化の幕開けとなり、変化の波は勢いを増すばかりです。金融機関は、こうした変化をまず受け入れることが重要です。そして、破壊的な変化に対応するために、企業は機動性を高めるとともに、現在と将来のビジネスを見極めて、変革への投資を賢く判断する必要があります。激しい業界変化は、顧客や社員を変革の中心に据えることになるでしょう。」
なお、今回の調査では日本、英国、アイルランド、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリア、米国、カナダのさまざまな金融機関において、変革プログラムの開発/実施の責任者を務める787名の経営幹部にインタビューを行った。787名のうち302名は大手銀行グループ、292名は保険会社、193名はウェルス&アセットマネージャーである。調査は2016年後半に実施された。
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・アクセンチュア(Accenture)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。