AmazonのAmazon Goやアリババのフーマーなど、EC業界を席巻した企業が実店舗に踏み出し、テクノロジーを活用した小売店を展開しているのはみなさんご存知だろう。
一方小売店の実店舗展開を行ってきたウォルマートが、テクノロジーを活用して新たな小売店を生み出そうとしている。
そこで今回は、ウォルマートが2019年に発表したテクノロジーを活用した施策の一部を紹介したい。
ラストワンマイルを自動運転で担う
2019年12月10日、ウォルマートは自動運転の開発を行なっているNuroと提携し、新たな宅配サービスを打ち出していくことを発表した。
Nuroはすでに2018年12月に米国の大手スーパーKrogerと提携をして、無人車両配送をアリゾナ州で行なっている。また、今年の6月にはドミノ・ピザと提携をし、テキサス州ヒューストンで無人車両によるピザの宅配を行うと発表している。
そうした技術と経験を活かし、ウォルマートが拡大を続けている食料品の集配サービスの一貫に、Nuroの自動運転車を活用していくという試みだ。
ウォルマートも以前より自動運転を配達サービスで活用するべく、Waymoやフォードと提携をし、自動運転の可能性を見出すための様々なプログラムやデータ収集を行ってきた。
その成果を実際に始動させるため、小売店での無人車両運転配送の実績のあるNuroと提携をしたと考えられる。
アプリでOMOを実現
また、ウォルマートは独自のウォルマートアプリを活用して、ホリデーシーズンのイベントを盛り上げる効果と、UI・UXの向上を図っている。
アメリカでは「ブラックフライデー」と呼ばれる、小売店で大規模な安売りが行われる日が11月第4木曜の翌日にある。
国の正式な休日日ではないものの、休暇になることが多く、目的の買い物をするために買い物客が小売店に訪れる。
そこでウォルマートはブラックフライデーで大規模なイベントを打ち出す際に、顧客が探しているアイテムを素早く見つけられるよう、店舗のストアマップ機能を11月にアプリに追加している。
イベント時には店舗内のレイアウトが変更になることが多い。また、旅行中など、行ったことのないウォルマートでも目的の商品を迷うことなく探せるということで、このマップ機能は利用者に重宝されているという。
そしてマップではアイテムの表示だけでなく、カスタマーサービスやピックアップ場所、トイレなどの店舗内の情報を見ることができ、イベント時だけでない利用を狙っていると考えられる。
顧客はスムーズなユーザーエクスペリエンスを体験することができ、働く従業員はアテンドする手間が省ける。そしてマップを利用した顧客のデータは蓄積され、どの顧客がどの店舗でどの商品に興味を持ったかというマーケティングデータを活用して、また顧客に反映させることができるといった良いサイクルが生み出されている。
未来の小売店を作るラボ
そしてウォルマートは今年の4月、「IRL」というインテリジェント小売ラボをニューヨーク州レヴィットタウンにオープンした。
店舗にはAIカメラ、インタラクティブディスプレイ、様々なセンサーなどを活用して、店内で行われることを情報として収集している。
従業員は在庫の管理がリアルタイムに分かり、製品を補充するタイミングをより正確に判断することができる。そのため顧客は商品の鮮度に対して信頼を持つことができるとしている。
IRLをオープンした目的は、実店舗でのデータ収集としており、オペレーションの変更を急いで実装していくためではないという。
今後テクノロジーをさらに活用した未来の店舗のために、在庫管理やショッピングカートの整理といった実用的なソリューションから始め、長期的に良い店舗を作っていくための試験場だ。
またIRLには100人以上の従業員がおり、機械やAIに任せられる部分は任せた店舗の中で、商品ディスプレイの創作や顧客との対話といった、人が行うべき作業を最大限に行える環境を作っているという。
そしてIRLで検討されたソリューションは、将来的には全国の店舗に派生させる意向を持っているとしている。
このようにウォルマートでは、包括的にテクノロジーを活用しながら、顧客の満足度向上、従業員の生産性向上と働き方改善、そしてウォルマート自身が成長していける店舗を作り上げようとしていることが伺えた。
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