エコモット株式会社と日美装建株式会社は、エアコン設備の吸排気温度や通電状態といった稼働状況、異常の有無等をクラウド上で把握できる遠隔管理システム「AIRNOTE」を開発した。
収集データの分析や異常時のアラートから、故障の早期発見や清掃・メンテナンスの最適なタイミングの把握が可能となり、法的な定期点検費用の削減や設備寿命の長期化など管理者側の負担軽減が期待される。
なお日美装建は、今後エコモットが提供するCO2やPM2.5等の計測デバイスも導入して総合的な「空気の見える化」サービスを提供するため、一部事業部門を分離し「株式会社AIRNOTE」を発足させた。
背景
2015年4月のフロン排出抑制法施行に伴い、業務用エアコン(第一種特定製品)は年次の定期点検のほか、3カ月に1回以上の簡易点検が義務化された。
例えば夏の冷房運転で機器内部が結露した場合、カビの発生を誘引し、それを放置したまま冬を迎えると、乾燥したカビが温風とともに飛散し肺炎等の症状を引き起こすこともあるため、点検の最適なタイミングを図ることは、クリーンな環境を維持することが求められる管理者(使用者)の重要な課題となっている。
また、食中毒や院内感染、熱中症といった問題も、空調設備の適切な運用が抑制につながることから、ショッピングモールや介護施設、病院等では特に、エアコンの管理が重視されている。
日美装建は、米国セールスフォース・ドットコム社が提供するビジネスツール「Salesforce」を使用しており、同社が推進する「Salesforce1 IoT ジャンプスタートプログラム」に参画するエコモットの紹介を受け、同じ北海道企業として諸問題の解決に共同で取り組むに至ったという。
「AIRNOTE」の機能・効果
1. 「AIRNOTE」システム(サーバーアプリケーション)の概要
センサーから通信、クラウド、管理アプリケーションに至るエコモットのIoTデータコレクトプラットフォーム「FASTIO」をベースに開発。エアコンの室内外機の給排気温度と通電状態が見える化され、施設ごとの設定値に応じた異常検知を行い、状況がメンテナンス担当者に一斉通知される仕組みだ。
設定温度と給排気温度の差や、直近のメンテナンスからの経過日数を分析することで、エアコンの汚れ具合などを遠隔で定量的に把握することが可能になり、巡回の最適化や点検者のスキルに左右される定性的判断の排除といった業務効率の向上を図ることができる。
業務効率の向上は、顧客の費用負担を軽減し、点検作業を受け入れることによる営業機会の逸失を減らす効果も見込める。また、計測データをメンテナンスのレポートに加えることで、エアコンの状態やメンテナンス前後の違いを顧客に伝えることもできる。
2. 計測デバイス「WMC-700」「WMC-31」の概要
サーミスタセンサー、電流クランプセンサー等の計測データを自動収集するゲートウェイデバイスとして新規開発。子機となるWMC-31はアナログ入力を8ch実装しており、1台で対象エアコンの複数個所のデータ計測が可能。
親機となるWMC-700はKDDIのサポート体制が充実したLTE通信モジュール「KYM12」を搭載しており、親子間の通信には通信距離が長く省電力仕様の920MHz帯を使用しているため、複数台のWMC-31の計測データを集約し、モバイル回線でAIRNOTEへデータを送信することができる。
こうした機能により、複数のエアコンを低ランニングコストで管理できるようになるという。
今後は室内空間のトータルプロデュースサービスに発展
子機となるWMC-31はエコモットのIoTゲートウェイデバイス「WMC-600」とも接続可能だ。そこで同社は、室内の温湿度やCO2、PM2.5等の計測データや人感センサー、開閉スイッチから得られる在室情報などと組み合わせ、AIで分析することで将来的には室内空間のトータルプロデュースサービスに発展させる計画だ。
【関連リンク】
・「Salesforce1 IoT ジャンプスタートプログラム」
・エコモット(Ecomott)
・日美装建
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。