プラットフォームの乱立と集約
小泉:秋葉さんのお話を伺って、物流現場において技術が活用できることはよく分かりました。そして人不足の問題、あるいは業界構造の問題に対してどうメスを入れるのかについて、皆さん総論は一致していることも分かりました。では、何がトリガーになれば問題解決のための技術が社会実装されるようになるのでしょうか。
例えばダイワロジテックがプラットフォームを作ります、といっても、みんながひとつのプラットフォームに乗っかってくれるのかな、という不安があります。何か上手い解決策というものはないでしょうか。
秋葉:仮にプラットフォームを立ち上げる話が業界内で起きたとしても、統合されずに乱立する状況が10年ほど続くと思います。しかし、少数のプラットフォームに誰かが乗っている状態にはなっておきたい、という希望はあります。
乱立する状態はテクノロジーも含めて必要であり、「ダイワロジテックが作ったならば自分たちも」、という形で競争が生まれるのも良い話だと思います。ただし、その中で協業するところが出てきて、最終的には3つ~4つくらい残り、残ったところも競争し続けるわけではなく、データ共有などで協力するという状態が望ましいと感じます。
八子:自ずとそういう風な方向に国も向かっていますし、人口が減っていく中で複数のプラットフォームが乱立すること自体がデメリットだというのは皆さん、頭の中では分かっていることだと思うので、その問題は時間が解決するのではないでしょうか。
建物から物流の情報を得る
小泉:ダイワロジテックの中ではプラットフォームを構築しよう、という動きはあるのですか。
秋葉:そもそもダイワロジテックの立ち位置は良い意味で中途半端、だと思っています。大和ハウスグループは建物を立てることがメインです。
一方、ダイワロジテックというのは建物と建物同士をつなぐ部分を見ていますが、外から見ればダイワロジテックは「建物を立てる大和ハウスグループの企業」であるわけです。ということは、僕らは物流会社そのものではなく、ロジスティクスを支える企業としてプラットフォームを構築するのは間違っていないと思います。
小泉:ソリューション企業として存在する、ということですね。
秋葉:そうですね。トータルでロジスティクスのソリューションを提供していると捉えていただければと思います。あと、ダイワハウスが立てている建物をエッジだと捉えて、そこからどれだけ物流に必要な情報を出せるのか、ということも考えていくつもりです。
大和ハウスグループが立てている建物の数は日本で一番だと思います。ここから受発信できる情報をきちんと整理して提供できる形にすれば、社会の効率化により貢献できるのではないでしょうか。
小泉:家には宅配ボックスがあって、そこに荷物の出入りの情報が手に入るわけですし、そもそも物流センターは情報の塊ですからね。
秋葉:例えば「ここの集合住宅はパーソナルボックスになっているけれど、こちらは入居者に対して宅配ボックスが無くて、荷物もほとんど取っていかないんだよ」ということが分かるなど、いくらでも活用方法はあります。
ダイワハウスが立てた団地に住んでいる方が高齢化し、その団地を再開発する計画が出ると、テクノロジーを活用する話に必ずつながります。住居の環境を再開発するだけでなく、そこから取れる情報をどう活用するか、という話を経営企画などと話しています。
八子:街の情報、そこを通る人や交通といったリソースの話と、お金をどう使うかといった話と、どこのエリアといった話と、さらにそのエリアでどういう消費行動がとられているのかという話を統合して、ある程度シミュレーションできるようになるのが理想ですね。
秋葉:そうです。そうしたデータが全部統合されれば、人も商品の動きも、無駄なものがなくなるのだと思います。
小泉:大和ハウスグループのように垂直統合できているところが一番やりやすいのではないでしょうか。これがソリューション会社だけだと全部提案止まりになってしまうから、統合は難しくなると思います。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。