株式会社ZMPは、今月17日より東京ビッグサイトで開催されている「第1回自動運転EXPO(オートモーティブワールド2018)」に出展し、宅配ロボット「CarriRo Delivery」の量産に向け戦略的パートナーを募集した。
同社は、独自のロボット技術により「自動運転」と「物流ロボット」の2つのアプローチで事業を展開しているロボットベンチャーだ。
自動運転においては、交通量の多いお台場周辺で、「運転席にドライバーがいない状態で公道を走行する」無人自動運転の実証実験を行うなど、注目を集めている。
物流業界の課題を解決する宅配ロボット「CarriRo Delivery」
今回、戦略的パートナーの募集を開始した「CarriRo Delivery」(冒頭写真)は、カメラやレーザセンサで周囲環境を360度認識しながら、最大時速6kmで自動走行し、荷物を目的地へ届ける宅配ロボットだ。
同社は、この製品により、物流業界のドライバー不足や、過疎地域などで問題となっている「買い物弱者」の課題を解決することを目指している。
既に複数社と実証実験を開始している。たとえば、以下のようなプロジェクトが進行しているという。
- 「銀のさら」を展開する株式会社ライドオンエクスプレスと、寿司デリバリーサービスに関する実証実験
- 森ビルと六本木ヒルズを舞台とした実証実験を開始
- 日本郵便株式会社が実施した配送ロボットの物流分野への活用に向けた実証実験
今後、スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストア、クリーニング、飲料メーカー、自動販売機メーカー、飲食店など幅広い分野での協業を検討しているということだ。
このような、ヒトでもクルマでもない物流ロボットが普通に街を走っている様子、あるいはビルのエレベータに乗っている様子をイメージするのは難しいかもしれない。
しかし、先日ラスベガスで開催されたCES2018では、トヨタやフォードから、ヒト・モノ・クルマがすべてつながるスマートシティにおいて、クルマのサービスをどう考えていくかという、「移動の再定義」が提起された。
同じように、スマートシティにおける物流においても、このような宅配ロボットの登場により、物流の手段そのものがさまざまなサービスと連動しながら、大きく変わっていくことが考えられる。
実際、アメリカの宅配ピザチェーン店であるドミノ・ピザなど、欧米の企業も早くから宅配ロボットの実証実験を行っている。昨年7月には、アメリカのバージニア州で宅配ロボットを許可する新しい法律が施行されることになったという。

とはいえ、日本国内において、宅配ロボットがヒトに当たった時にどうするのか(保険はどうするのか)、歩道のどの箇所を走るのか、など前例がないだけに解決しなければならない問題はたくさんある。そもそも、このヒトでもクルマでもない「CarriRo」を定義する道路交通法のルールがまだ存在しない。
同社は現在、経産省、国交省と議論しながら法整備を進めているという。現状では、無人で走行させることはできないため、ヒトが横につき、ロープでつなげておくことでの走行実験ができるということだ。

ロボットタクシーでタクシー業界を成長産業に

ZMPは、自動運転の研究開発と実証実験を進めている。昨年末には、お台場公道での遠隔操作による「無人自動運転」の実証実験を行った。
その自動運転の研究開発用プラットフォームやノウハウを他社に提供し、支援しながら実証実験を行うサービスや、ステレオカメラなど自動運転に必要な各要素技術の製品販売なども行っている。
そして同時に、ZMPは自社でロボットタクシーのサービス実用化を目指している。

具体的には、日の丸交通と共同で、配車アプリを活用したタクシーの配車サービスを検討しているという。自動運転車が従来のタクシーに置き換わるということではなく、タクシー会社で対応できない部分を同社の自動運転車が補完し、アプリで連携しながら、タクシー業界を成長産業にすることが目指されているのだ。
このように、ZMPはロボット技術を軸として、「物流業界」や「タクシー業界」の課題を解決すべく、ビジネスの実用化に向け取り組みを加速させている。
なお、同社には以前にくわしく取材を行っている。自動運転のプラットフォーム「RoboCar」や物流ロボット「CarriRo」シリーズの詳細については、以下の記事を参照されたい。
【関連リンク】
・ゼットエムピー(ZMP)
・ライドオン・エクスプレス(RIDE ON EXPRESS)
・日本郵便(Japan Post)
・森ビル(Mori Building)
・日の丸交通(HINOMARU KOTSU)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。