MaaSは本当に便利な生活をもたらすのか
小泉: でも、MaaSによって人が何をするかの方が大事ですよね。とすると、MaaSに資金を投入する前に、行政区分などの住民の実態をおさえていく必要があるのではないかと思います。
八子: そうすると、「納税単位をどうするのか」という部分まで手を入れる必要がありますね。民間の資金力である程度やりくりできるならいいですが、国費を投じる場合には、納税の問題と一緒に考えてないと難しいでしょう。
小泉: せっかくスマートシティの取り組みに国費を投じるわけですから、一緒に検討できないものでしょうか。
八子: 日本のある地域に「特区」を設けるのが現実的ですね。日本すべての自治体でやろうとすると法律を変えないといけませんから。スマートシティは、確かに資金を投じてそこだけデジタル化を進めればいいという簡単な話ではありません。法制度の改革もあわせて行っていかないといけません。
ただ、一足飛びにはどうしてもできないので、ここは教育の特区、ここはMaaSの特区、ここは農業法人の特区、というように少しずつそれぞれのまちの特色を活かして進めていくのが現実的ですね。

小泉: 各地のさまざまな活動を見ていると、どうしても技術ありきになっている気がするのです。テクノロジーを導入するための補助金ではなく、何らかのテクノロジーが入った結果、行政サービスがどのようにプラスされ、住民の生活がどうよくなるのかという流れを前提に進めていかないと、住民が誰も得しないという最悪の結果になる可能性もあると思います。
八子: 予算を得るには、目新しさが必要になります。国は今までと同じことには予算を使わないからです。そのため、どうしてもテクノロジーありきになるということがあります。
行政にはいたずらにそれぞれの自治体の競争をあおるのではなく、近隣の自治体と共同で何か取り組みを進められないかということも、真剣に模索してほしいですね。そうじゃないと、サイロ化されたしくみばかりがたくさんできてしまうということになりかねません。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。