2019年6月11日都内にて、音を体で感じるユーザーインターフェース「Ontenna(オンテナ)」を活用したイベント支援サービスを、今年7月より開始することが発表された。また、企業向けビジネス展開や、ECサイトを通じた個人の顧客への商業サービスの提供が、同じく7月より実施予定だ。
さらに、ろう学校の教育現場での利活用を目的に、2019年6月11日より30校のろう学校に一部先行し、Ontennaの体験版を無償で提供するという。
Ontennaとは
Ontennaとは、髪の毛や耳たぶ、襟元や袖口などに身につけ、振動と光によって音の特徴を体で感じることができるユーザーインターフェースだ。主にろう者(聴覚障害者)の活用シーンを想定しており、Ontennaを身につけることにより、自身の声や周囲の音の大きさを知覚することができる。
約60〜90dBの音を256段階の振動と光の強さに変換して伝達する。リアルタイムに音源の鳴動パターンを伝達することで、音のリズムやパターン、大きさを知覚することが可能だ。
また、音の取得範囲を拡張する音ズーム機能により、大きな音のみに反応させたり、静かな場所での会話に使うなど、環境によって使い分けることが可能だ。
さらにスマートモードでは、コントローラーやスマートフォンと半径50メートル以内で通信することができる。
コントローラーにマイクをさし、複数のOntennaに音の情報を伝えることが可能だ。スマートフォンと接続すれば、スマートフォンの音の情報を複数のOntennaに伝えることができる。
コントローラーをタップすることでもOntennaを振動させることができる。
充電は充電スタンドを使用し、Ontennaとコントローラーで兼用にすることで、無駄な配線を減らしている。
様々な実証実験
実際に川崎、筑波、大阪のろう学校に導入し、使用後に先生にレポートを書いてもらったり、インタビューを行った結果Ontennaを開発していった。
ろう学校での実証実験では、普段手話を使う生徒も、Ontennaを使うと積極的に音を発するようになったという。
その他にも、太鼓を一定のリズムで叩くことができるようになったり、生まれてから耳が聞こえない生徒にOntennaをつけてもらうことで、打楽器を積極的に使うようになったという結果が出ている。
また、イベントでの活用を想定した実証実験では、映画内のBGMに合わせて振動させたり、ドアの閉じる瞬間に振動させるなど、映画を視覚だけでなく体感する取り組みを行った。
さらにスポーツのスタジアムでOntennaをつけてもらうことにより、盛り上がる瞬間やPKの静まり返る瞬間が感じられたという。

ろう者、健常者の垣根を超えて想定する利用シーン
渋谷のハチ公前でイベントを行った際、ろう者、健常者関係なくOntennaを身につけてもらい、同じ空間でタップダンスのショーを鑑賞し、振動と光でリズムを感じることにより一体感を感じたという。
こういったことから活用シーンをろう学校やろう者のためだけではなく、エンターテイメントの1つとして取り組もうとしている。
今回発表されたイベント支援サービスでは、エンターテイメントの分野で活用するため、機材の貸し出し、会場のセッティング、サポートを行う。Ontennaを30台利用した際、1日あたり20万円での提供を想定しているという。
今後の展望について富士通 執行役員常務の阪井洋之氏は、
「いろんなシーンで試していただきながら、こんなことにも使えるのか、ということをこれから発見していきたい。このデバイスを広く活用していきたいと思っています。」と語った。

また、富士通 スポーツ・文化イベントビジネス推進本部 企画統括部 Ontennaプロジェクトリーダーの本多達也氏は、
「特定の場所で光らせたり、特定の音だけを取得して振動させるということも今後の可能性として考えています。機械学習をさせて、特定の個人の声に反応するOntennaや、インターホンだけに反応するOntenna、職人だけが聞き取れる音を学習させ反応するOntenna、といったことを研究・開発することにより、さらに活用範囲が広がると考えています。」と語った。
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