昨今、日本国内では、高齢者による自動車事故の多発や、クルマのコネクテッド化・自動運転社会の到来など自動車業界を取り巻く環境が変革期を迎えている。
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、テレマティクス技術を活用した事故対応サービス「テレマティクス損害サービスシステム」を株式会社野村総合研究所(以下、NRI)、SCSK株式会社、富士通株式会社、大日本印刷株式会社(以下、DNP)、株式会社インテリジェント ウェイブ(以下、IWI)、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM)、SBI FinTech Incubation株式会社(以下、SBIFI)と共同で開発した。
今回、各社の技術とテレマティクス情報を複合して事故対応で実用化する取組みにより、事故対応サービスを利用者へ提供する。利用者との電話や書類のやりとりを中心とした従来の事故対応から、走行データや運転挙動・位置情報を中心としたデジタルデータの活用による事故対応に変革していく。
同システムではビッグデータ・AI等の技術を採用し、PoC(実証実験)やアジャイル開発手法を用いることで、段階的に実現性を高めながら短期間での開発を実現した。また、今回構築したプラットフォームは、様々なデータ分析や業務利用につなげられる基盤として「新商品開発」「自動運転への応用」等にも活用していく。同システムの詳しい特長は以下の通り。
- 「受信型」から「発信型」へ(テレマティクスデータによる事故受付)
- 「推測」から「視認」へ(事故場所・状況の把握)
- 「主観」から「客観」へ(過失・示談交渉)
事故を起こした際に利用者から事故連絡をする従来の受信型から、各種デジタルデータから車両の大きな衝撃を検知し、保険会社から利用者へ能動的に連絡する発信型への変革により、より適切に事故受付を実現する。
利用者から聞いた事故場所・状況等の情報をもとにした推測から、各種デジタルデータの可視化による視認へと変革し、事故直後の利用者の負担を軽減する。
利用者や事故相手の方から聞いた情報(=主観的な情報)をもとに実施していた過失・示談交渉を、ドライブレコーダー映像等のデジタルデータ(=客観的な情報)をもとに判定した過失割合の情報に基づく過失・示談交渉へ変革し、適切な解決を実現する。
これにより、事故に遭われた利用者の保険請求手続にかかる負担を軽減し、24時間365日事故対応サービス「I’m ZIDAN」と合わせてサービスを提供する。
なお、同システム開発における各社の役割は以下の通り。
- テレマティクスの可視化:NRI
- 事故検知の高度化:SCSK
- 相手車両・周辺環境を含む事故状況の把握:富士通
- 過失割合の判定サポート:DNP、IWI
- API連携基:IBM、SBIFI
テレマティクス自動車保険において車両等から得られるビッグデータや、道路・天候情報等を地図上にビジュアル化し、事故状況を瞬時に把握できるシステムを開発した。実現にあたっては、NRIがシステム全体をコーディネートし、アジャイル開発手法によるPoC(実証実験)を踏まえ、様々な技術を有する企業のサービスを相互連携するシステムアーキテクチャを構築している。
あいおいニッセイ同和損保が保有する国内および海外のテレマティクスデータの走行波形・衝撃波形と、SCSKの独自ソリューションであるSNN(SCSK Neural Network toolkit)を活用し、事故検知アルゴリズムを開発した。SNNはDeep Learningに必要なニューラルネットワークアルゴリズムを標準実装しており、複雑なアルゴリズムを開発することなく、早期に学習モデルの構築が可能となる。
事故検知のためのDeep Learningの学習は、自動車の衝突データに対して、特殊なデータ加工を施すことで、より事故を検知することが可能となった。株式会社あいおいニッセイ同和自動車研究所と実施した衝突実験時における事故検知率は94%を超えるなど、各種検証において事故検知を実現しており、適切な事故受付の実現と利用者へ安心を提供する。
富士通は、ドライブレコーダーの映像を分析するAI画像認識技術とその結果から三次元位置を推定するVisual-SLAM技術を開発し、保有している。同技術により、事故相手の車両速度や運転軌跡を推定するシステムを開発し、運転者でも気付けない事故原因や事故発生時の状況を正確に再現することで、事故解決を実現する。
さらに今後は、大量の車両から集まるデータをリアルタイムに分析し、実世界の交通状況をデジタル世界上でタイムリーに把握(=モビリティデジタルツイン)することも可能となる。
ドライブレコーダーや車両から得られるデジタルデータから再現した事故原因や事故発生時の状況をもとに、DNPおよびIWIの提供する文書検索システム「OpAI」のデータ分析技術を活用し、過去の交通事故判例を自動的に表示し、過失割合を自動判定するシステムを開発した。同システムにより、判例の検索~表示時間を短縮し、基本過失や修正要素を加味した過失割合の判定をサポートすることで、過失・示談交渉を実現する。
複数のサービスや車両から得られるデジタルデータを取り扱う企業との間で、インターネットを介して、サービスやデータを連携するAPI連携基盤をIBMが開発した。その中核となるサービスとしてSBIFIが提供するSaaSを採用し、検討を含めて5ヶ月で導入を実現した。
同サービスは、金融情報システムセンターの安全対策基準に準拠したセキュリティ、アクセス認証・トランザクション量制御、開発支援・運用管理機能を標準装備した共同利用型SaaS形態であり、投資を抑えつつ、初期構築の早期化を実現するとともに、直感的な操作を可能とするグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)によりユーザーの運用管理の負担を軽減する。
今後、同システム導入により対物賠償保険金の支払いまでの日数を約50%短縮を目指す。また、同システム開発にあたり機能毎に4つのステップに分けて順次導入を予定している。
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