昨今、貨物自動車運送事業輸送安全規則に定められた運行管理者の業務は、ドライバーの労務管理、運行スケジュール管理、教育など多岐に渡り、多くの時間・労力を費やしている。
また、車両数が多く、複数の運行管理者の選任が義務付けられている営業所では、個々のドライバーの既往症や健康管理の状況、前日の運行状態、健康状態などの情報の引継ぎが行いにくいなど、点呼精度の観点から多くの課題がある。
そこで日本通運株式会社と株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、日々の点呼業務の省力化および高精度な点呼・点検が実施可能な「点呼・運行前点検システム」の開発について、2021年3月22日に合意し、4月1日から開発を開始すると発表した。
両社は、交通運輸分野の課題解決に向けて国土交通省が行う「平成30年度交通運輸技術開発推進制度」に採択され、「機械化技術の採用による点呼の精度向上の研究(3か年)」について、2018年6月から2021年3月まで共同研究を行ってきた。
この研究では、貨物運送事業者の運行管理者による運行前・運行後のドライバーに対する実施が義務付けられている点呼について、スマートフォンとクラウドサーバーを使用した「点呼システム」により、運転免許証や車検証の有効期限の確認、アルコールチェック、健康状態などをデータ化し、活用することで、日々の点呼精度の向上と効率化を図るというものだ。実際に日本通運の2つの事業所(東京、鹿児島)での実証実験を通じて、その有効性を確認したという。
また、運行前点呼において確認が必要となる運行車両の日常点検に関し、スマートフォンを活用して点検結果をデジタル化する「運行前点検システム」のトライアルを通じて、上記「点呼システム」と連携させることで、一連の点検・点呼業務の精度を高め、効率化する実証を行った。
今回発表された「点呼・運行前点検システム」は、これまでの共同研究をさらに発展させたもので、宿泊を伴う運送業務における遠隔点呼や、2泊以上の業務時に行う中間点呼への対応、プッシュ通知を利用したワークフロー化などにより、営業所で行っている対面での通常点呼を含め、技術的には全ての点呼を非対面で行うことが可能なシステムの実現を目指すという。
システムの開発を通じて、日本通運は、グループ各社や協力会社における点呼・点検の高度化を実現するとし、ドコモは、システムの開発完了後、2022年度以降の商用化を目指す、としている。
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