IDC Japan株式会社は、国内顧客エクスペリエンス(以下、CX)に関する国内ユーザー企業の取り組み動向を発表した。
過去2~3年間で生じたマクロ環境の変化は、顧客を大きく変容させている。従来のように明確な顧客要求に合わせて製品/サービスを提供するだけでは市場の勝者にはなり得ず、変動する顧客の需要を企業自らが探索および理解し、顧客の評価に基づき製品/サービスの改善を行いながら市場に評価を問い続ける体制(顧客フィードバックループ)を構築することがネクストノーマル(The Next Normal:次なる常態)におけるビジネスアジリティを獲得する手段として重要となる、とIDCでは考えている。
IDCでは顧客フィードバックループに基づいた企業の体制を「Future of Customer Experience企業」と定義し、そのための要素として「デジタルファースト時代の基本UX(User Experience)の構築」「顧客データ活用」「オペレーションプロセスの改善」「データエコシステム」「コラボレーション/組織文化の醸成」から成る5つの要素を定義している。
同調査では、上記要素のうち、「デジタルファースト時代の基本UXの構築」と基本UXから得られるデータを顧客フィードバックループに生かす「顧客データ活用」「コラボレーション/組織文化の醸成」における国内企業の取り組みを分析している。
調査の結果、国内企業におけるCXに関する取り組みのうち、「デジタルファースト時代の基本UX(User Experience)の構築」に関して、各カスタマージャーニー地点におけるCRM導入は、ある程度浸透している。また、CRM利用上の課題や業務上の今後の注力分野の回答からは、他システムとの連携や他部署との連携など、カスタマージャーニーを通じた顧客データの統合や社内連携を志向する状況が推察される。
一方で、カスタマージャーニーを通じた顧客理解やCX向上に重要な「顧客データ活用」の状況では、顧客データの収集状況において、いずれのカスタマージャーニー地点においても顧客に関するデータの収集割合は20%台以下であった。また、現状把握以上の顧客データの活用や、顧客データの統合化も低位に留まっている。
「コラボレーション/組織文化の醸成」に関して、CX向上に向けた社内体制では、CXの重要性に関する社内理解は醸成されているが、施策実施のための予算設定や部署ごとのKPI設定など、具体的な取り組みに向けた基本方針の策定には至っていない状況が明らかになった。
CX施策推進における課題では「具体的な施策の決定不足」「CX推進組織の不明瞭さ」など社内の意思決定に関する項目と「データ収集/分析」に関する項目が上位となった。
同調査では更に、CX変革で成果を出している企業におけるCX関連サービスの利用状況に関する調査結果を分析し、Customer Experience企業への転換における課題である「社内の意思決定」と「データ収集/分析」に関する障壁を打破するためのポイントを記載している。
IDC Japan Software & Services シニアマーケットアナリストの太田早紀氏は「国内企業が顧客フィードバックループに基づいたFuture of Customer Experience企業への転換を進めるため、ITサプライヤーは、CX施策のユーザー企業における経営課題への引き上げ、全社的なCX施策の事例提示、Future of Customer Experience企業転換に向けた包括的な支援体制構築を積極的に行うべきである」と分析している。
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