NTT株式会社と株式会社東芝は、約300km離れた拠点から制御周期20ms以内での生産設備の遠隔制御と、業界標準要件である1設備につき4fps(250ms)という短時間でのAI外観検査に成功したと発表した。
この共同実験では、NTT武蔵野開発研究センタに構築した模擬環境において、生産設備から300km離れたクラウド型PLCにより、制御周期20ms以内の生産設備の遠隔設備制御を行なった。
なお、クラウド型PLCとは、制御機能にあたる「制御コア」をクラウド上に実装する仕組みや、クラウド・エッジ間通信を独自開発することで、従来、現地で行われていたPLCによる制御系システムの構築・メンテナンス作業をクラウド上で完結可能な技術のことだ。
通信には、低遅延でゆらぎの少ない通信特性を持つNTTの「APN」を活用することで、クラウド型PLCの制御周期を高速化する。
また、NTTドコモソリューションズの画像認識AIソリューション「Deeptector」と、NTTのRDMAアクセラレーション技術(※)を活用することで、製品の外観検査においてローカル環境と同等の水準で300km離れた地点間でも実現可能であることを確認した。
※RDMAアクセラレーション技術:RDMA通信の転送が成功したかを確認するループバック信号を端末側で擬似生成することで、アプリケーション側のRDMA利用方法を変更することなく長延化する技術。
これにより、PLCの設定情報をクラウド上でメンテナンス可能となり、生産ラインの新設・設定変更が実施できるようになることで、現地派遣工数の削減と、複数の工場を跨る生産性向上が期待されている。

さらに、生産ラインでの外観検査AIのクラウド移行が可能となることで、クラウドの柔軟性を活かした運用が実現し、複数工場における品質の標準化にも寄与する。
今後NTTおよび東芝は、今回実証したAPNを活用したクラウド型PLCサービスの実装に向けて、サービスの内容や体制の具体化を進め、2027年度以降の実用化を目指すとしている。
また、共同実験の成果をベースに、PLCと外観検査AIに加えて、故障予兆AIなどの高度演算処理をクラウドに移行する計画だ。
なお、同共同実験で確認した技術については、2025年11月19日~26日にNTT武蔵野研究開発センタでNTTが開催予定の「R&Dフォーラム2025」の「IOWN×スマートファクトリー」の展示ブース、および2025年11月19日~21日に東京ビッグサイトで開催予定の「IIFES2025」の東芝の展示ブースにて紹介されるとのことだ。
「IIFES2025」の会期中は、東京ビッグサイトとNTT武蔵野研究開発センタを商用APN回線で接続し、遠隔制御のデモンストレーションが実施される。

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