営業スキルを高めるうえで、ロールプレイング(以下、ロープレ)は欠かせないトレーニングのひとつです。
しかし実際には、対面での実施が難しかったり、相手役の確保やフィードバックの質に課題を感じているケースも多いのではないでしょうか。
最近では、こうした課題を解決する手段として「AIを活用したロープレ」が注目されています。
本記事では、従来のロープレが抱える課題から、AIを活用した営業ロープレの仕組み、専門的なプログラミング知識が不要で始められる ChatGPTの「プロジェクト機能」を活用した営業ロープレの方法や実際の事例などをご紹介します。
営業ロープレの基本概念
営業ロープレは、営業担当者が顧客役と営業役に分かれて商談をを模擬することで、実際の営業シーンに近い状況を実践的に再現するトレーニング手法の概要です。
主な目的は、実際の商談で成果を出す力を養うことです。
知識をインプットするだけでなく、顧客の反応に合わせて臨機応変に話し方を変えたり、隠れた課題を引き出すための質問をしたりするなど、現場で求められる多くの要素を、短時間かつ安全な環境で体験できるのがロープレの大きな価値です。
また、成果を出している社員とロープレを行うことができれば、成功例やテクニックを学ぶことができるほか、客観的なフィードバックを受けることで、自分だけでは気づきにくい課題を明確にできます。
特に新人にとって、本番前に場慣れし、自信を持つために大切なプロセスであり、チーム全体の営業力を底上げする効果的な研修です。
従来のロープレが抱える課題
上述した通り、ロープレは非常に有効な研修ですが、参加者が必要となるため、多くの企業で共通の課題を抱えています。
まずは、評価の属人化とばらつきです。顧客役やオブザーバーは経験や主観が異なるため、公平なフィードバックが得られにくいという課題があります。
また、ロープレを実施するには、参加する社員の時間を拘束しなければなりません。特に、成績の良い先輩社員ほど忙しく、定期的なトレーニングの機会提供は難しくなります。
さらに、シナリオの単調さも問題の一つです。常に同じ人物を相手にすることが多く、毎回同じパターンの顧客やシナリオでのロープレだと、多様なケースに応じた実践的なトレーニングになりにくく、現場のリアルな対応力を養うことが難しいというケースもあります。
こうした課題から、AI導入を検討する企業が増えています。
AIを活用した営業ロープレの仕組み
営業のロープレにAIを活用する場合、特に重要となるのが音声認識技術と大規模言語モデル(以下、LLM)です。
音声認識技術は、「声のトーン」「話速」「間の取り方」といった話し方、そして発言内容をリアルタイムでテキストデータに変換し、AIがその内容を理解できるようにします。
そして、LLMが、音声認識技術がテキスト化した言葉を受け取り、内容を分析することで、自然な会話や質問、反論を生成して返答します。
また、業種、役職、予算、抱える課題、性格などを指定することで、AIは顧客のペルソナになりきってくれます。
さらに、LLMに加えて知識統合技術(RAG)やベクトル検索といった技術を活用することで、各業界や企業独自の営業ノウハウ、膨大な商品知識、コンプライアンス情報などを取り込み、自社のビジネスに特化した実践的なトレーニングが可能になります。
ロープレ終了後は、AIが事前に設定された評価基準に基づいて、キーワード使用率、論理構成、共感表現といった発言内容を分析し、数値化された客観的なレポートを提供します。
この評価には、LLMだけでなく、自然言語処理(NLP)技術や、機械学習を用いたスコアリングアルゴリズムなどが活用されており、定量的かつ客観的な分析が可能です。
こうした仕組みにより、時間や場所の制約なく、いつでも質の高いロープレとフィードバックの取得が可能になります。
AIロープレのメリット
AIロープレを導入することで、相手役やオブザーバーの社員のスケジュールを気にすることなくロープレを実施することができます。
これにより、商談前の最終確認や、特定スキルに特化した反復練習が容易になり、学習のサイクルを加速させることができます。
また、客観的で詳細なデータに基づくフィードバックを得ることができます。これにより、何を、どう改善すべきかが明確になります。
さらに、AIであれば、数百種類の顧客ペルソナを再現することもできます。
「予算がないと言う社長」「競合製品の知識が豊富な担当者」「無口で反応の薄い顧客」など、難易度の高い設定や、業界特有の特殊な設定も可能で、実際の商談における予期せぬ状況への対応力が向上します。
ChatGPTを活用したAI営業ロープレの始め方
営業のロープレで活用できるAIは様々ありますが、本記事では、専門的なプログラミング知識を必要としないChatGPTのプロジェクト機能を活用した方法を紹介します。
ChatGPTは、LLMをベースに、自然な会話や質問応答、文書作成、要約、翻訳など多様なタスクをこなすことができる、OpenAIが開発した対話型AIです。人間のように自然な言葉で応答することができ、ビジネスの現場でも幅広く活用が進んでいます。
そのChatGPTに搭載されている「プロジェクト機能」とは、特定テーマの情報や指示を独立したワークスペースで管理できる機能です。
通常のチャットとは異なり、特定のトピックに沿った情報や設定、ファイルなどをひとつの場所に集約し、継続的に活用できるという特徴があります。
この機能を使うことで、たとえば「営業ロープレ専用プロジェクト」を作成し、特定の目的や顧客ペルソナ、自社資料などをまとめて設定できます。これにより、毎回ゼロから状況説明をすることなく、継続的に訓練を重ねられる「専属AIコーチ」として活用できるのが大きな利点です。
このプロジェクト機能を使ってAIコーチを作成する方法は、以下のステップです。
ロープレの目的とペルソナを明確にする
まずは、「何のためにロープレを行うのか」を明確にしましょう。
目的に応じて、AIに設定するシナリオやペルソナも変わるからです。
例えば、「新人営業が提案の流れを習得する」「特定の顧客タイプへの対応力を高める」「クロージング力の強化」「苦手な質問への受け答えを練習する」などが挙げられます。
そして、「どんな顧客と対話するのか」というペルソナ設定をする必要があります。
顧客の「業界」「会社規模」「役職」「抱えている課題」「性格」「商談ステージ」といった情報を設定します。
プロジェクト機能で前提条件を設定する
目的とペルソナが決まったら、前提条件となる自社資料を、ChatGPTのプロジェクト機能にアップロードします。

例えば、「営業トークスクリプト」「製品カタログやサービス概要資料」「想定Q&A」「過去の成功・失敗事例メモ」といった資料をアップロードしておくことで、ChatGPTが適宜会話中に引用して回答してくれます。
これにより、汎用的な会話ではなく、「自社の営業スタイルに合わせたリアルなやり取り」が可能になります。
実践
ここまで設定すれば、あとは実際にChatGPTと会話をしながら営業のロープレを行うことができます。
ペルソナの情報を資料としてアップロードしてもいいですが、複数のペルソナで実践したい場合は、会話をする前に、以下のようなプロンプトを書いてから、音声モードにして会話を始めます。
▼このプロジェクトの設定
– 顧客ペルソナ:中堅製造業・情報システム部門・DXに課題意識あり
– 商談ステージ:初回訪問
– 商材:SaaS型在庫管理サービス
– 使用資料:アップロード済みの提案書ファイル
様々なペルソナとロープレを行いたい場合は、「ここから別のロープレを行います」といったプロンプトで前置きを置き、新たな「顧客ペルソナ」「商談ステージ」「商材」を指定することで実行することができます。
フィードバック
フィードバックをもらう際は、会話終了後に以下のようなプロンプトを入力します。
- 今のロープレについて、上司としてフィードバックをください
- 営業マネージャーの視点で改善点を教えてください
- 以下の観点で5点満点で評価し、改善点を教えてください:①ヒアリング力、②提案のわかりやすさ、③共感、④クロージング力、⑤会話の流れ
なお、評価基準が社内で決まっている場合は、自社で定めた評価基準やチェックシートの資料をアップロードしておきます。
そして、「アップロードした営業評価チェックシートを使って、今のロープレを5段階評価してください。各項目にコメントも添えてください。」とプロンプトを入力することで、より正確なフィードバックを得ることができます。
また、プロジェクトにはすべての会話が履歴として残るため、本人や上司などが過去のロープレのログを読み返すことができ、成長の過程や改善点を把握することができます。
ChatGPTプロジェクト機能の注意点
ChatGPTのプロジェクト機能は、テーマごとに会話やファイル、指示をまとめて管理できる便利なワークスペースですが、注意点もあります。
プロジェクト機能では、商材やペルソナといった前提情報を設定すれば、そのプロジェクト内の会話でAIがそれを参照できます。
ただしこれは長期記憶ではなく、会話の文脈内で理解されている状態です。
一度会話が終了したり、設定から時間が経つと、文脈がリセットされる可能性があるため、必要に応じて改めて指示しなければなりません。
加えて、ファイルの情報量が多かったり、複数のファイルをアップロードしている場合は、「アップロードした〇〇というPDFの3ページ目を見てください」といった明示的な指示が必要な場合があります。
また、ペルソナや商談ステージを変えたい場合、プロンプトで行うことも可能ですが、1つのプロジェクトに複数のペルソナや商談パターンを入れていくと、やり取りの文脈が混ざり、AIの応答がブレることがあります。
そのため、営業ロープレに活用する際には、業種や役職、性格といった「顧客ペルソナ」ごとにプロジェクトを分ける運用が求められる場面が多く、これが大きな手間と感じられることがあります。
さらに、プロジェクト間で資料や設定を共有する機能が現時点ではないため、同じ資料を別のプロジェクトでも使いたい場合には、都度アップロードや説明のし直しが必要です。
このように、ChatGPTのプロジェクト機能は便利な一方で、柔軟性と自由度の高さゆえに、ユーザー側に明確な目的設計や情報整理の工夫が求められます。
効果を最大化するAIロープレの活用法
ChatGPTのプロジェクト機能を使えば、1人でも手軽に営業ロープレを繰り返すことができますが、ただ行うだけでは効果は限定的です。
ここでは、ChatGPTのプロジェクト機能で構築したAIロープレを「学習→実践→改善→定着」の流れにのせていくための、実践的な活用方法をご紹介します。
ロープレ目的ごとのプロジェクトを分けて管理する
プロジェクト機能の注意点でお伝えした通り、目的別・シナリオ別にプロジェクトを分けたほうが、会話の精度と振り返りのしやすさが向上します。
例えば、
- プロジェクトA:新人向け「初回訪問」トレーニング
- プロジェクトB:中堅営業向け「価格交渉」トレーニング
- プロジェクトC:難しい顧客への対応練習(例:懐疑的な経営者)
といったように、それぞれのプロジェクトに顧客ペルソナ、商材、使用する資料を設定することで、強化したいスキルをしぼってロープレを行うことができます。
自分専用のテンプレートをつくる
都度ペルソナや商材を入力するのが手間に感じる場合は、よく使うパターンを「テンプレート化」しておくのがおすすめです。
▼ロープレ設定テンプレート例
– 顧客ペルソナ:中堅製造業の情報システム部門・課長
– 性格:慎重で予算意識が強い
– 商談フェーズ:初回訪問
– 商材:SaaS型在庫管理ツール
テンプレートをコピー&ペーストすることで、毎回の設定がスムーズになるほか、トレーニング内容の一貫性も保ちやすくなります。
自己評価とAIフィードバックを組み合わせる
AIからのフィードバックだけでなく、自分自身でも簡単な自己評価を行うことで、改善点がより明確になります。
- ヒアリングの深さはどうだったか?
- 提案のロジックは一貫していたか?
- クロージングは自然だったか?
こうした「内省」と「外部評価」のサイクルを繰り返すことで、学びが深まりやすくなります。
ロープレの記録と振り返りを残す
プロジェクト内にロープレの履歴は残りますが、定期的に振り返る習慣を持つことが成長を加速させます。
- 印象に残ったやりとりや失敗談をメモアプリに記録
- 改善点や成功パターンをNotionなどに蓄積
- フィードバックの内容を時系列で見直し、変化を可視化
このように、過去の会話ログを活用することで、「どこでつまずきやすいか」「どの表現が刺さったか」といった個人の傾向分析にもつながります。
チームで活用し、ベストプラクティスを共有する
ChatGPTでのロープレは個人学習に最適ですが、チームで使えばナレッジ共有や標準化にも活用できます。
- メンバー間で「良かったロープレ事例」を共有
- マネージャーがロープレにコメントをつける運用
- AIのフィードバックをもとにした教育用トークスクリプトの作成
営業チーム全体でChatGPTを活用することで、属人化を防ぎながら、全体最適の営業力強化につなげることができます。
AIロープレのデメリットと課題
AIを活用した営業ロープレは、ChatGPTのような汎用型AIだけでなく、営業支援に特化した専用AIサービスも多く登場しています。
しかし、どのAIを使う場合でも、「人とのロープレ」とは異なる特性や限界があることを理解しておく必要があります。ここでは、AIロープレ全般に共通するデメリットや課題を紹介します。
実際の営業現場の臨場感は再現しきれない
AIは、論理的な会話や情報ベースの応答には長けていますが、営業現場で重要となる感情の揺れ・沈黙・緊張感・場の空気などは再現が困難です。
例えば、「顧客の微妙な表情や反応に基づいたリアクションがない」「突然の無言や感情的な反発といった予期せぬ展開が起こりにくい」「提案に対する空気の変化などを読み取る経験が積みにくい」といった特徴があります。
そのため、AIロープレはあくまで「思考や表現を鍛える場」であり、「実戦の場慣れ」は別の機会で補う必要があります。
想定どおりのロープレを行うには事前設定が重要
多くのAIロープレツールでは、「顧客像」や「商談ステージ」「課題背景」などの条件を事前に設定する必要があります。
特にChatGPTのような汎用型AIでは、プロンプト(指示文)の質がロープレのリアリティを左右します。
専用サービスであっても、設定が曖昧だとやりとりも抽象的になってしまうため、事前の設定に手間がかかる場合があります。
また、商材の特性や業界知識を再現するにも、情報の追加入力が必要となります。
AIに想定する顧客になりきってもらうには、ユーザー側の設計力が求められるという点は、共通したハードルです。
AIとの会話に慣れすぎることで「本番とのギャップ」が生まれる
AIロープレは、反応が安定していて、実践を積み重ねることである程度予測可能なため、「やりやすい」と感じる反面、実際の顧客とのやりとりで違和感を覚えることもあります。
想定通りにいかないリアルな現場でうまく対応できないといったことや、AIが出さないような理不尽な反論や急な脱線に対応できない可能性があります。
このため、AIロープレの「快適さ」だけに頼りすぎないロープレ設計が必要です。
細やかなニュアンス・感性表現の指導には限界がある
AIは論理構造や言語分析には強い一方で、人間ならではの感覚的な気づきや言外の印象を指摘することは難しい傾向があります。
例えば、「その言い回し、少し偉そうに聞こえるかも」「もう少し柔らかい表現で共感を示した方がいい」「間の取り方が自然じゃない」などの細かいアドバイスを行うのは難しいでしょう。
営業の世界では、ちょっとした言葉の選び方や、トーン、間の取り方も成約率に影響する可能性があります。
こうした感覚的な気づきは、人間の上司や先輩からフィードバックを得る必要があります。
このように、AI営業ロープレを万能な営業トレーナーとしてではなく、トレーニングの1手段として正しく位置づけることが重要です。
企業が取り組むAI営業ロープレの事例
ここまで、AIを活用した営業ロープレの仕組みやメリット、活用法、そしてデメリット・課題について解説してきました。
では、実際に企業がどのようにAIロープレを導入し、どんな成果を出しているのでしょうか。
ここからは、実際の企業の取り組み事例を通して、AIロープレの活用イメージをより具体的に見ていきます。
不動産業界の人材課題をAIロープレで解決
不動産事業を展開するA社は、離職率の高さや採用難といった人材不足に加え、OJTの属人化や教育品質のばらつき、マネージャーの負担増加といった課題を抱えていました。
そこでA社は、独自の営業ノウハウと61年間の知見をAIに学習させ、オリジナルの「AI賃貸営業ロープレ」を開発しました。
AIを顧客役に実際の接客シーンを再現し、賃貸営業ロープレを社内でスタートさせました。
AIは、「結婚を控えた飲食店の店長で、結婚を機に新居を探している」といった具体的な人物像を持つ仮想の顧客を演じ、ロープレを行います。
ロープレでは、あいさつや雑談から入り、趣味や価値観、生活スタイルなどをヒアリングし、「言語化されていない潜在的なニーズ」を引き出すことに重点を置いています。
これにより、単なる物件紹介ではなく、顧客のライフスタイルに合わせた最適な提案を行う練習が可能になりました。
ロープレ後は、AIが事前に設計されたポイントをもとに「総評」「良かった点」「改善点」を評価し、フィードバックします。
これにより営業スタッフは、実際の接客に近い一連の流れを実践することができ、ヒアリングにおいて重要な点や課題に気づくことができるようになりました。
実際にロープレを実施した社員からは、「AI相手とは思えないほどリアルで緊張した。客観的なフィードバックのおかげで、自分の癖や改善点が明確になり、自信につながった。」「マネージャーに遠慮せず、自分のタイミングで繰り返し練習できるのが良い。経験を積み、スキルアップに繋がると感じた。」といった声が挙がっているそうです。
期待される効果としては、社員の自主練習の促進、教育スタッフの負担軽減、接客品質の底上げが挙げられています。
今後は、賃貸営業だけでなく、クレーム対応など様々な分野でのAIトレーニングをテスト中とのことです。
AIロープレで多様な商材知識習得へ
リユース事業を展開するB社は、事業拡大に伴い、社員数の増加と営業担当者のスキルアップが課題となっていました。
特に、多岐にわたるリユース商材を扱うため、社員一人ひとりが幅広い商品知識とコンプライアンスに関する膨大な情報を習得する必要がありました。
しかし、これまでのロープレ研修は、管理者の立ち会いが必須で、時間的な制約や評価のバラつきが発生していました。
そのため同社は、スケジュールや評価者のスキルに左右されない、効率的で公平な研修システムを求めていました。
こうした中、B社は、専門性の高い知識や接客スキルの習得を効率化するため、生成AIとAIアバターを活用したロープレシステムを導入しました。
このAIロープレシステムには、B社が取扱う商材知識をシステムにインプットしているほか、B社独自の営業術が組み込まれており、これらをもとにしたAIアバターが、実際の営業を想定したトレーニングを行います。
さらに、ロープレの音声は自動で文字起こしされるため、いつでも内容を振り返り、学習に活かすことができます。
このシステムを導入した結果、顧客対応力の向上や、管理者が研修にかける時間の30%程度の削減が見込まれています。
営業スタッフ育成にAIロープレを導入
ある保険会社C社は、営業スタッフの育成を目的に、AIを活用したロープレシステムを新人営業スタッフ向けに導入しました。
これまでも、同社では、営業スタッフのスキル向上のためにロープレを実施していましたが、ロープレの時間が限られ、相手となる先輩や上司のスケジュール調整が必要でした。
また、指導者によってアドバイスの内容が異なり、新人によってスキル習得度に差が生じていました。
そこで、これらの課題を解決するため、AIを活用した新システムを開発。新人一人ひとりが、場所や時間を問わず、いつでも質の高いトレーニングを受けられる環境を整備しました。
このAIロープレシステムでは、AIが顧客役となり、営業スタッフの習熟度や苦手分野に応じた商談の練習を行います。
AIは、話すべき内容が適切な順序で話されているか、重要な情報がきちんと伝えられているか、禁止されている語句を使っていないかなどを客観的に評価し、具体的なフィードバックを提供します。
また、ロープレ映像は録画されており、表情や話し方を本人や上司が確認することもできます。
これにより、AIによる客観的な評価に加え、育成担当者による定性的なフィードバックを組み合わせることができ、新入社員の営業力向上をサポートする体制を整えました。
将来的には、生成AI技術を活用した臨機応変な会話トレーニングや、顧客情報管理システムと連携させて、営業活動前の事前シミュレーションができるように計画を進めていくそうです。
まとめ
このように、AIを活用した営業ロープレは、時間や場所にとらわれず、繰り返し実践・改善ができる新しい学習手法です。
一方で、AIはあくまで「パートナー」であり、万能なコーチではありません。設定や指示を工夫しながら、目的に応じたシナリオ設計・ペルソナ設定・フィードバックの活用を通じて、学習効果を最大化することが重要です。
また、AIロープレだけに依存せず、実際の営業現場との接続やチーム内での振り返りの機会と併用することで、より高い実践力の向上が期待できます。
デジタルツールの活用は、営業力強化の新たなスタンダードになりつつあります。まずは小さく始めて、成果を見ながらチーム全体への展開を検討してみてはいかがでしょうか。
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