構成管理で製造の現場がスムーズになる
この構成管理については、PLMが担当する。
PLMは、企画、設計、調達、生産、メンテナンスという製造の一連のプロセス全体を通した、データの管理を行うことができるソフトウェアのことで、PTCでは「Windchill」がこれに当たる。
せっかくCADによって設計データをデジタル化し、シミュレーションによる製品市場投入の短期化が実現できたとしても、あまたある部品の組み合わせについて、きちんとした構成管理ができていないとカスタマイズ品の製造などに、柔軟に対応ができない。
この複雑さは、「生産設備やプロセスの違い、サプライヤーなどで変わってくる。同じ製品構成でも異なる工場で製造すると、PLM上は新しい構成となるのだ。」と言う。
こういった多様性に対する対応を行うためにはPLMが必須となるのだ。
構成変更がきちんと管理されるようになると、設計に対する変更が加わった時も、生産の現場までその変更内容がスムーズに伝わるようになる。

通常、作業指示書を変更し、品質検査の内容が変わり、それに伴う品質検査マニュアルも変更する必要がある。その変更が複雑な場合、その習得に時間がかかる場合もあるだろう。
PLMで構成情報を一元管理していれば、設計データの変更もすぐ現場に伝わり、品質検査内容も反映される。必要なのは、検査時の作業内容の書き換えとなるが、これも熟練者が行えばできることを、ARを活用した手順書に落とすことができるので、すぐに作業者に展開することが可能となるのだ。
ここで、熟練者の行動を簡単に手順に落とすことができるのだろうか、という疑問が湧く。
しかし、PTCでは「VUFORIA EXPERT CAPTURE」というシステムを使うことで、熟練者の作業をデジタル化することに成功している。
マイクロソフトHoloLensのようなMRヘッドセットをつけると、視界に入ってくる産業機械のメンテナンス方法がどんどん視覚化される。そして、手順通りに作業をすれば熟練者と同等の作業を行うことができるのだ。


もちろん、「塩梅」が必要な作業は存在するので、なんでもデジタル化できると言うわけではないと思われる。
既設設備をどう使いこなすのか
ここで、ロックウェルの事例が紹介された。PTCでは既に設備が存在する工場のことを「ブラウンフィールド」と呼んでる。
もともとは、ブラウンフィールドの反対はグリーンフィールドで、用は、「開拓済みの土地」と「未開拓の土地」という意味だ。
このブラウンフィールドの工場で、どのように効率的にデータ収集を行うか、という課題が現場では発生している。
実際、ロックウェルとPTCがフォードの工場でIoTプラットフォームである、ThingWorxを導入しようとした際、この問題が起きたのだと言う。

元々のプロジェクトはアナリティクスのプロジェクトであったと言うことだが、話を進めると「そもそもデータが揃っていない」ということがわかったのだと言う。
データを取得するには、当然セキュリティのことも考慮しなければならないし、プロセスも見ていかなければならないが、何よりも、適切なデータを分析に使うことが重要なのだという。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。