さまざまな産業でDXが進められる中、そのインフラとして5Gがグローバルに展開されている。将来的には、5Gが持つ超低遅延や多数同時接続といった機能を強化したポスト5Gの普及が期待されており、これまで以上に低消費電力化や仮想化への対応が進むことで、基地局装置の置き換えを含めた通信インフラ市場の拡大が続くものと見込まれる。
こうした中、海外の通信事業者(オペレーター)がより高品質な通信サービスを顧客に提供するため、さまざまなベンダーの基地局装置から最適なものを選択して自社のネットワークに導入する動きが活発化している。
そこで世界のオペレーターとメーカーなどが参加する業界団体のO-RAN Allianceは、基地局の複数の装置間の接続における標準化を進め、異なるベンダーの基地局装置を接続する条件を整えてきた。しかし、接続した状態での動作検証はオペレーターが行うために多くの時間を要し、不具合解消のための再検証を含めるとさらに長い検証期間が必要であり、O-RAN仕様に準拠した装置導入の妨げとなっている。
日本電気株式会社(以下、NEC)と富士通株式会社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」で、ポスト5Gに対応した基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性を検証する技術の研究開発に取り組んでいる。
このほど、同技術を両社の英国および米国の拠点において、欧州および北米のオペレーターの実際の商用環境を想定した動作条件と、異なるベンダーの基地局装置の複数の組み合わせでO-RANフロントホール(※1)における相互接続性を2021年8月から2023年6月の期間、検証した。
その結果、最適なテストシナリオの抽出や、パラメーターの生成から検証結果の良否判定までの一連の流れを自動化することにより、オペレーターの商用環境を想定した異なるベンダーの基地局装置(O-RAN仕様準拠)間の相互接続性の検証時間を30%以上短縮するなど、大幅な効率化に成功したと発表した。
今回NECと富士通は、O-RANフロントホールでのさまざまなベンダーの基地局装置間の相互接続性の検証作業を自動化する技術を共同で開発し、各国や地域のオペレーターが実際に使用する接続条件に対応するための機能拡張を行った。同技術には、基地局装置間に接続してフロントホールプロトコルを検証するFHA(※2)、無線子局(RU)の単体試験を行うP-DU(※3)、検証作業の各工程を自動化するテストシナリオ抽出ツール(※4)、テストパラメーター変更ツール(※5)、検証結果判定ツール(※6)などの独自技術が含まれる。
NECと富士通は今後、同技術と同技術を適用した検証環境を継続して国内外のオペレーターや基地局装置ベンダーとの共同検証に活用することで、異なるベンダーの基地局装置(O-RAN仕様準拠)を組み合わせたシステムの導入までの期間をさらに短縮し、オープン化した5Gネットワークのグローバルな普及と発展を後押しすることにより、通信インフラ市場の活性化へ貢献していくとした。
※1 O-RANフロントホール:O-RANに準拠して標準化された、基地局の親局(CU/DU)と無線子局(RU)間のインターフェース。
※2 フロントホールプロトコルを検証するFHA(FrontHaul Analyzer):O-RAN仕様に準拠したフロントホールプロトコル(フロントホール上でM-Plane、CUS-Planeのデータを送受信するために規定された手順)の正常性を検証する技術。
※3 無線子局(RU)の単体試験を行うP-DU(Pseudo-DU):基地局の親局(CU/DU)の代わりに無線子局(RU)に接続し、RU単体でRUの正常性を検証することを可能にする技術。
※4 テストシナリオ抽出ツール:オペレーターによって異なるプロファイルをインプットとして、各5Gネットワークに最適なテストシナリオを自動抽出するツール。
※5 テストパラメーター変更ツール:検証をより効率的に実施するための、各種テストパラメーター自動抽出・変更ツール。
※6 検証結果判定ツール:検証結果の良否を自動判定するツール。
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