[第19回]2016年のスマートホームはどうなるか? CES2016総括編(1)

「IoTをゼロベースで考える」の第19回はCESにみるスマートホームの進化だ。

Intel(インテル)のCEO、BRIAN KRZANICH(ブライアン・クルザニッチ)の基調講演でスタートしたCES2016。Intelが掲げたテーマは、”Experience(体験)”だ。これまで、パソコンにIntelの技術を入れてきたが、IoT社会ではモノに高性能なCPUが入りこむ。”Intel inside”というマークでウィンドウズパソコンの頭脳部分の代名詞となったIntelは、今後、モノの中に入ろうとしている。

思い起こせば、2年前、Intelは同じCES2014の基調講演の場で、小型CPUを搭載した”Edison(エジソン)”を発表した。赤ちゃんの情報を取得するデモンストレーションを実施して話題を誘った。世の中がPCからスマーフォンに移り、PCの頭脳であったIntelからスマホの頭脳であるQualcomm(クアルコム)に移動していく中での出来事だった。

その後CES2015では、IoT的なモノが多く発表され今年に至っている。

当然競合となるQualcommも黙ってはいない。ARM(アーム)を巻き込んで高度な処理をどれだけリアルタイムに処理できるかということを追う一方で、簡単な処理でもよいので安価に実現するという方向性の両面で今後の「モノのコンピューティング」は進んで行く。

IoTを分断する、プラットフォーマー間の争い

スマートホームの分野でも最大規模のAllSeen Aliance(オールシーンアライアンス)は、Qualcommが中心となっていて、AllJoynというIoTのフレームワークを作り、そのネットワークを広げようとしている。

AllSeen

AllSeen Alianceは、Elextrolux, Haier, LG, Microsoft, Panasonic, Qualcomm, SHARP, SONY, TP-LINK, BOSCH, CISCO, fon, htc, lenovo, Symantecと、名だたる家電メーカーが名前を連ねているので、特にスマートホームの分野においてた、おそらく最大派閥とも言える。

ここには、GoogleやAppleといった企業は入っていない。また、このIntelを中心とした、Industrial Internet Consortium(インダストリアル・インターネット・コンソーシアム)という陣営もあるが、こちらはGM, IBM, CISCO, AT&T, PTCといったエスタブリッシュな企業が名を連ねているのだ。

消費者にとって、Qualcomm陣営なのか、Intel陣営なのかなんてどうでもよくて、IoT社会においてはどんどん繋がってくれないとIoTの恩恵は受けられない。

いろんな規格にも対応します、とうたうモノたち

実は、こういった政治的なアライアンスとは別に、スマートホームの分野では通信の方式にも様々なアライアンスが存在する。スマートホームにおいて、電池で動くことを想定されているモノも多く、Wifiのようなリッチな通信が不要な場合に、なるべく省電力な通信が求められるのだ。例えば、人感センサーを家につけるとしても、電池で動くなら壁に貼るだけで済むところが、Wifiだと電源コードが必要になるといった具合だ。

すこし難しいのでここで詳細は割愛するが、省電力ネットワークの必要性から、現在様々な通信仕様が存在する。一方、モノづくりの立場からすると様々な通信仕様が存在するということは、「どれかを選択する」か、「全てに対応していくか」を選択しなければならなくなる。

zigbee

Thread

そういった背景からか、CESでの展示は、「人感センサー」「スマートロック」「サーモスタット」「煙探知機」といった以前からあるモノに関しては、「いろんな通信規格に対応しています」ということを売りにしているモノが多く展示されていた。(そして、基調講演ではスマートホームに関して触れられなかった)

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しかし、消費者の立場からすると、買ったは良いけど、他の商品とのつながりはつなげてみないとわからない、という状態は本格的な普及を妨げるので、通信規格が複数存在していることについては早く解消してほしいところだ。

「家電」を超えて、ベッドまでスマートに Sleep Number

そんなつばぜり合いの中、家ナカの家電は、勝手に進化している。これまでは普段から電気を使っている、空調やテレビ、冷蔵庫、などの「家電」がその対象であった。そんな中、おおよそ「家電」とは呼びがたい、ベッドまでスマートにしようという動きもあった。

Sleep Numberは、ベッド自体がインテリジェントになるというモノだ。インターネットにはつながらないのだが、ベッドにセンサーが設定されていて、一人一人の体の荷重がかかるポイントを自動的に測定し、空気圧でマットレス部分を変形させることで眠りの質を上げていくというものだ。

sleep number

タブレットなどの操作でもベッドの形は変えられるので、例えば本を読みたいというような場合はすこし背中の部分だけ起こすというようなことも可能だ。

今後、こういった「家電」ではなく、「家具」もまき混んで、家ナカのIoT化が進んでいく。

ただつないでも、売れていない家電

様々なスマートホームのあり方を提案する、スタートアップ〜中堅企業のブースが多い中、大手企業が軒を連ねるメイン会場では、「スマート」と名打ち、図ではインターネットに接続した家電を示すモノの新しいと感じるようなモノはほとんどなかった。

現状のスマートホームは、空調やテレビ、冷蔵庫などの「家電」がインターネットにつながる「消費者メリット」の中で、「決定的な欲しくなるコンセプト」が打ち出せていないのだ。

そういう背景もあって、2015年はセキュリティ大手のADTなど既存の顧客がいる企業が、多くの製品と提携して導入を進めるということになった。米国においては中流以上の家庭ではホームセキュリティの企業のサービスを受けているケースが多い。実際、ADTはすでに多機能なスマートフォン・アプリを提供し、Googleのグループ企業であるnestとの連携も声高にうたっている。今後さらなる提携を進めて、一番儲かる、モノを繋げた後にコントロールする「サービスレイヤー」をADTがとっていくのだ。

つまり、スマートホームは、家電製品が「耐用年数切れで買い替え」らえれる中で広がるのではなく、すでに顧客がいて改善を求められている分野から進んでいく、という方向性がでたのだ。

また、もう一方で、家ナカ向けのロボットにも期待がかかる。ロボットはエンタテイメント性が高く、これまでの家電を無理に置き換えるという考え方ではないので、家庭に入る新しい仲間として歓迎される可能性が高い。

スマートホームにおけるロボットは、家ナカをコントロールするハブになるので、ロボットが家ナカに導入されていく中、他の家電とつないで近未来の生活をしてみたいという欲望はわくはずだ。

現状日本ではPepperの知名度が高いが、様々なサイズ、様々な人工知能を持ったロボットが生まれてきている。このロボットが圧倒的な利便性、もしくは、エンタテイメント性を発揮した時、家ナカの環境はガラリとかわる可能性があるのだ。

突拍子もないスタートアップのアイデアに期待

CESは家電ショーなので、テレビや冷蔵庫が中心となった展示になることは当然である。一方、テレビを高精細、薄型、曲げる、という技術は2,3年前から実現できており、冷蔵庫にディスプレイを貼り付けるコンセプトもすでに発表されている。そんな中、日本のセブンドリーマーズは「洗濯物を折りたたむロボット」で注目を集めた。

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「どうやってたたんでるのだろう」「すごく面倒な作業な楽になりそうだ」と矢継ぎ早に質問や感嘆の声があがる。こういう突拍子ものない、スタートアップにアイデアに2016年の期待がかかる。

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