愛のあるロボットLOVOTを生み出す、GrooveX

つづいて、GrooveXの林氏が登壇し、LOVOTという愛らしいロボットを紹介した。
このロボット、テクノロジーとしては自動運転やAIの技術がふんだんに使われていて、非常に高性能なロボットなのだが、実は道具としては何もしない。人と人をつなげる、そんな役割を果たす、犬や猫のような存在がLOVOTなのだ。
以前、Pepperの開発をしていた林氏、ロボットと接していて人が笑顔になるときは、人がロボットがうまく立ち上がらないのを助けた時や、目があった時に感動していることがわかったのだという。
最近のロボット、特に産業向けのロボットは、人を助ける、自動化するという方向に向いているが、人に向き合うロボットは、「人を幸せにすることが役割」なのではないかという。
ドラえもんが四次元ポケットから繰り出す道具は決してのび太くんを幸せにしておらず、毎日家にいるのに家のお手伝はまったくしない。しかし、のび太くんはドラえもんがいることそのもので、友達が増えたり、楽しい人生を送れたりしているのだと、人と向き合うロボットの役割の例を挙げた。

こういった、カテゴリーキラーとなる新しい製品を生み出す過程で、「周りからもいろんなことを言われるが、製品開発の会社だと売り上げが立つまで長くなるため、身内ですら不安になることがある」と話す一方で、「試作を作り続けるしかないが、長期化すると不安になるので、短い期間で動くものを作って、仮説の優位性を証明していくことで自信が持てるようになるのだ」と、長期化しがちなプロダクト開発過程でのプロジェクト推進のコツを述べた。
このプロダクト開発には、スクラムという開発手法をとっていて、100名程度いる社内はかなりフラットなのだと言う。
なぜこれだけ、様々な先端技術があるのに、家庭用ロボット産業が立ち上がらないか、ということについて、素材、機械、電気、デザイン・・と多くのことをロボット作りでは調整しなければならなく、こういった横串のことを実現しようとすると調整コストが高くなりすぎて、うまくいかない場合が多いのだと説明した。
そこで、それぞれの担当者に対して、評価や優先順位を「役割」という形で配分することで、自律的に動こうとしているという。
林氏自身は、「プロダクトオーナー」という、全体の優先順位を決める役割だけになっているのだ。それも、「次の(短い期間での)」仮説を実現するまでの責任であって、長期的にすごいものができる責任を負わないようにしていると言う点も興味深かった。
短い期間で動くものを作り、内部はもちろんのこと、投資家にも具体的なモノを見せていくことで、組織の内外に、実感と安心感が生まれるのだ。
LOVOTのような、家庭生活の仲間として位置づけられるようなロボットが登場すると、これからの子供がロボットを作りたい、ロボット産業に関わりたいと思うのではないかと林氏は予想する。現在、手近なテクノロジーで子供達が楽しむYoutuberのコンテンツがあるが、これを見た子供がYoutuberになりたいと思うようにだ。
これをきっかけにして、新しいロボット産業が生まれて欲しいとも言う。
さらに、肝心のロボットの購入意向に関して、Pepperの時は触りもしないで買う人が多かったが、LOVOTは触ってから買う人が多いのだという。「実際に触ってみると感動して購入する人が出てくる」ということなので、LOVOTのような考え方のロボットは、新しいロボットのあり方として今後定着していくのかもしれない。
参考:LOVOT
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。