株式会社富士通研究所と富士通研究開発中心有限公司(以下、FRDC)は、今後様々な展開が予定されるIoTサービスの運用管理において、多種多様なセンサーやデバイス、ゲートウェイ機器の動作状態や接続するネットワークの状態を一元管理し、安定的な運用を可能とするためのソフトウェアプラットフォームを開発した。
今回開発されたプラットフォームでは、障害の原因分析に必要なIoTデバイスやネットワークの稼働状況などの監視情報を一元管理可能にするための、共通API(Application Programming Interface)を規定し、この共通APIとIoTデバイスとのインターフェースの差異をプラグイン形式で吸収する機能を実現した。
これにより、IoTデバイスやネットワークの遠隔監視や障害分析ツールの開発が容易になるとともに、デバイス選択の自由度が向上し、システムが大規模化した場合の柔軟性も高まるため、安定運用に大きく寄与する。
また、富士通研究所とFRDCは同プラットフォームに実装した監視情報の共通APIについて、国際標準化に向けた活動を進め、IoTサービスの運用管理をより容易にするためのエコシステム構築を目指すという。
開発の背景
現在、道路や橋梁などの社会インフラにセンサーを設置して保守管理を行なったり、室内の温度、湿度、照度などの環境や消費電力をモニターしてエアコンや照明を制御するなど、IoTシステムの実用化に向けた取り組みが進んでいる。
今後、IoTの普及が進み、膨大な量の多種多様なデバイスがネットワークに接続され、常時、あらゆる場所で人々の安心・安全に欠かせないサービスを提供する新たな社会インフラとして広がっていくことが期待されている。
IoTの実用化が進み、膨大な数や種類の機器を接続してサービスが提供されるようになると、これらの機器をクラウド上にある運用管理ダッシュボードなどから遠隔で管理し、機器の故障やネットワークのトラブルを迅速に把握するなどの効率的な対応が求められる。
しかし、IoTデバイスとゲートウェイ機器やこれらを結ぶネットワーク機器などのIoTのフロントエンド部分を構成する機器の運用管理では、それぞれの機器からの収集可能な情報の形式が定まっておらず、公開されていない情報も多いため、障害が発生した場合の状況の把握や、問題の特定、対策に手間がかかるといった課題があった。
開発された技術
今回、IoTデバイスと、ゲートウェイ機器やこれらを結ぶネットワーク機器から構成されるシステムの運用情報を一元管理し、障害分析を可能とするソフトウェアプラットフォームが開発された。
プロトコルの差異を吸収するプラグイン形式のアダプター
開発されたソフトウェアプラットフォームでは、様々なIoTデバイスやネットワーク機器などの監視情報を共通の手順で取得するためのIoTフロントAPIを規定。このIoTフロントAPIと各機器が持つAPIとのプロトコルの差異やデータ形式の差を吸収するアダプター機能を、入れ替えや追加が可能なプログラム(プラグイン)として実現した。なお、ここで収集する情報は、過去のトラブル対応実績などから障害分析に必要な情報を抽出して規定。
障害分析APIの提供
IoTフロントAPIから得られる情報をデータベースに集約し、障害分析APIによりトラブル分析を可能とするIoTフロント情報管理機能を実装。これにより、システムを構成する各機器の種類に関わらない遠隔の運用管理サービスや分析ツールを提供できる。

同ソフトウェアプラットフォームは主にゲートウェイ機器上で動作し、ゲートウェイ機器とIoTデバイスはアダプターを介してWi-FiやBluetoothなどの近距離無線で接続される。
なお収集する情報のうち、無線の障害監視に関するAPIについては、IEEE802.1CFでの標準化を推進している。
同技術により、多種多様な機器を活用したIoTシステム構築に際して、監視ツールや障害分析ツールを容易に開発・提供できるようになるため、遠隔監視によるIoTサービスの迅速な運用管理を実現する。
今後
今後、富士通研究所とFRDCは接続デバイスや無線方式を追加し、規模を拡大した実証実験を進め、2016年度末の製品化を目指す。また、同プラットフォームに実装した運用監視に関する共通APIについて、国際標準化に向けた活動を進め、IoTサービスの運用管理をより容易にするためのエコシステム形成を加速する。
【関連リンク】
・富士通研究所(FUJITSU LABORATORIES)
・富士通研究開発中心(FRDC)
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