昨今、多種多様な無線通信デバイスの普及が進む中、無線通信システムに要求される品質や利用シナリオも、これまで以上に多様化することが予想されている。
今後の無線通信システムは、多様な要件に対応していくため、無線通信デバイスや利用シナリオに応じた膨大な検証データの取得が必要となり、検証時間の削減が重要なファクターになるとされている。
既存の検証方法の一つに、特定の無線空間における無線通信デバイスの性能検証を目的としたOTA試験があるが、OTA試験ではデバイス自体の物理的な動きに対する無線空間の変化の再現や、多様な利用シナリオの再現に課題があるという。
そうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、光・無線伝搬を統合した無線空間再現技術の実証実験を開始した。
NTT研究所では、屋外・屋内といった現在の無線通信の利用環境や、空・宇宙といった未踏領域の環境における到来方向・利得・フェージングの無線特性を把握し、その無線空間を、時間変動も含めて検証環境に再現する無線空間再現技術を新たに提案している。
2022年5月現在、横須賀R&Dセンタ内にこの技術を適用した次世代無線検証設備の基盤構築が完了しており、技術の有効性の検証を開始している。

今後は、屋内環境の無線空間再現を最初の利用シナリオとして位置づけ、技術の実証実験を進める。さらに、無線特性可変装置や制御の高度化により、複数無線システムの同時利用等、複雑な検証が求められる利用シナリオの再現に取り組んでいくという。
なお、この技術の内容は、2022年5月18日~19日に開催する「つくばフォーラム2022」にて展示予定だ。
無線空間再現技術を構成する3つの要素技術

①光伝搬を活用した無線伝搬モデル推定
3Dプリンタ等で利用シナリオのミニチュアモデルを作製するとともに、光を無線と見立てて可視化する技術。免許が必須となる無線による測定を行うことなく、減衰などの伝搬モデルの推定を簡易に行うことができる。
②無線空間再現用シミュレーション
再現する無線空間に配置された、人工媒質(メタマテリアル)の一種「メタサーフェス反射板(RIS)」、無線通信における中継器「スマートリピータ」、分散アンテナなどの電波特性を変化させる装置「無線特性可変装置」の制御を行うため、再現対象の無線空間と、再現する無線空間の2つの空間を結び付ける、新しい概念の伝搬シミュレーションを実施。
③無線特性可変装置の協調制御
NTT研究所で検討しているリアルタイムRIS制御技術を応用し、検証環境に複数設置された電波特性可変装置に対して、無線空間再現用シミュレーションで算出した制御パラメータを反映させることで、到来方向・利得・フェージングなどの無線伝搬特性を制御することが可能。
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