5月27日 金曜日、日本マイクロソフトが事務局を務める「IoTビジネス共創ラボ」の勉強会が開催された。
IoTビジネス共創ラボとは、IoT/ビッグデータ領域のエキスパートが集まり、Microsoft Azure をプラットフォームとするIoTプロジェクトの共同検証を通じてノウハウを共有するコミュニティだ。
このコミュニティは、日本マイクロソフトが事務局となり、
・東京エレクトロンデバイス
・アクセンチュア株式会社
・アバナード株式会社
・テクノスデータサイエンス・マーケティング株式会社
・株式会社電通国際情報サービス
・株式会社ナレッジコミュニケーション
・日本ユニシス株式会社
・ユニアデックス株式会社
・株式会社ブレインパッド
の9社によるコミッティ会社からなっている。
この「IoTビジネス共創ラボ」勉強会は3月に第一回目が開催されており、今回の2回目は前回よりも参加応募も増え盛況とのことだ。
この日、日本マイクロソフト本社のセミナールームには300人近くのIT管理部門、IoT関連業務に携わるマネージャーや担当者が集まり、10件ものMicrosoft Azureを活用した共同実験やIoT活用事例が発表された。
今回はその中のいくつかの発表を紹介する。
スマートトイレ実証実験を通じて見えてきたオフィス事情

ユニアデックス山平氏からは、オフィストイレの利用状況の可視化に関する検証について紹介された。
スマートトイレと称したこの検証では、男女オフィストイレのドアの上部に設置したセンサーでドアの開閉を感知し、トイレの利用状況について測定を行った。
男女のオフィストイレにセンサーをつけるだけあり、ビル管理会社や不動産会社、社内の人事部門、総務部門など多くのステークホルダーへの調整を乗り越え、なんとか自社で利用しているトイレだけで検証は行われた。
個室トイレのデータ利活用ソリューションの検討、社員の生産性向上につながるかの見極めをすることを目的とし実施したところ、個室トイレの数と男女の社員数ののバランスはあるものの、男性の1個室あたり利用時間は7.6時間/日で女性の約2.5倍、男性一人当たりの利用時間は約9分、約7割が満室状態であるという、日常に感じる感覚的なものが数値化されたという。
この実験を行うにあたり、トイレドアの開閉検知はALPS製のセンサーを利用し、IoTゲートウェイ機能はSORACOMのSimを差したタブレットに搭載し、以降はMicrosoft Azureを活用しデータの収集はIoT Hubから、リアルタイム処理をStreamAnalytics、データの解析はMachine learning、解析結果をWebApp でスマートフォン等で表示をさせ、トイレ利用状況の可視化を、既製品とクラウドの設定、比較的簡単なアプリケーション開発だけで実現できるということを実証した。
デバイスがなければ IoT は始まらない!
Azure IoT に最適なデバイスは?

このセッションではまず初めに、日本マイクロソフト 村林氏から、Microsoft Azure Certified for IoTプログラムの紹介から始まった。
このプログラムは、「Azure IoT Hub」と接続できるデバイスであることをマイクロソフトが認証するプログラムである。
IoTサービスや検証をスピーディーに始めるられるようにAzureでは様々なメニューを用意しているが、デバイスとAzureとの接続性についても非常に重要なポイントだという。
接続試験を経てこのプログラムに認定されたデバイスは、IoTデバイスとして「Azureとの接続」「Azureへのデータの送受信」が保証され、このプログラムを通して新規顧客の開拓やIoTリーダー企業との協業などの可能性が広がる。
続いて、このプログラムに認定されたデバイスを組み込んだ農業向けIoTソリューション「みどりクラウド」の事例が紹介された。
「みどりクラウド」は、農場の環境を計測するセンサーを搭載したみどりボックスを設置するだけで、温度や湿度、日射量、CO2濃度、土壌水分、写真などのデータがクラウドに蓄積され、スマートフォンアプリからいつでもモニタリングできるサービスだ。
このみどりボックスには、Raspberry Piが内蔵されており、集めたデータをクラウドに送信するデバイスとして、Microsoft Azure Certified for IoTに認定されているメカトラックス社の3GPIが採用されている。
3GPIはRaspberry Pi専用の3G通信モジュールとなっており、3GPI本体に対応Simを挿入するだけでRaspberryPiをインターネットに接続することができる。
Pepper × Azure で切り開くIoTビジネスの未来

ソフトバンクロボティクスの吉田健一氏からは、「Pepper」と「Microsoft Azure」、さらには「Surface Hub」を組み合わせた利用例について紹介があった。
店頭ではPepperが接客を行い顧客の顔を覚える。さらに年齢や性別などの情報を活用し、「Surface Hub」を通じて画面におすすめ商品が表示されるとともに、その場でPepperが商品を紹介して接客を行う。
そして、店頭のPepperが収集した顧客のことや接客情報、おすすめした商品の顧客の反応などをクラウドに収集し、「Machine Learning」で解析してセールストークや推薦商品を継続的に改善していく。
さらには、バックヤードでは売上げ動向や売れ筋などお店の様々な情報を分析できる。
秋から、このようにPepperがユーザーのニーズに応じた接客をする小売業界向け次世代型店舗ソリューションの販売を開始するとのことで、現在パートナーを募集中とのことだ。
IoT 人材が拓く未来、IoT 技術が創る世界

業界や分野が異なると「IoT」に対するとらえ方は様々であり、IoTに関するビジネス市場規模が急激に成長する中、IoTの共通認識を整えていくことは重要だという。
そして、IoTのプロジェクトを計画・推進するには、産業システム・法律・デバイス開発・無線ネットワーク・データ分析・セキュリティなど非常に幅広い分野に関する知識が必要だ。
今年立ち上がったIoT検討制度委員会では、「IoTの共通認識化」を進めるとともに、「IoT検定」を通じて多岐にわたるIoTに関する「IoT人材」のスキルの可視化と、IoTの普及を行っていくとのことだ。
まずはIoTの企画やコーディネーションに必要な、デバイス・ネットワーク・データ分析・セキュリティなどの包括的な知識について検定する「IoT検定レベル1試験 プロフェッショナル・コーディネータ」の検定を5月から実施している。
「IoT検定レベル2試験 プロフェッショナル・エンジニア」、「IoT検定レベル3試験 プロフェッショナル・アーキテクト」については順次発表していくとのことだ。
【関連リンク】
・IoTビジネス共創ラボ
・日本マイクロソフト
・ユニアデックス
・メカトラックス「3GPI」
・セラク「みどりクラウド」
・ソフトバンク「Pepper」
・IoT検定
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1975年生まれ。株式会社アールジーン 取締役 / チーフコンサルタント。おサイフケータイの登場より数々のおサイフケータイのサービスの立ち上げに携わる。2005年に株式会社アールジーンを創業後は、AIを活用した医療関連サービス、BtoBtoC向け人工知能エンジン事業、事業会社のDXに関する事業立ち上げ支援やアドバイス、既存事業の業務プロセスを可視化、DXを支援するコンサルテーションを行っている。